92 ヘキサ公国へ(後編)
「見えた。 あれが中間拠点か」
「ああ。 あそこからクロウ中佐と共に軍用バスに乗ってヘキサ公国へと向かうそうだ」
「そうか、ゼイドラムの軍用バスならすぐにヘキサ公国へたどり着ける」
「そういう事です。 早く合流しましょう」
「諸君! こっちだ!!」
俺達がザックとシンシアさんを迎え入れてそのままゼイドラムが作った中間拠点へと走っていた。
拠点が見えた所で、クロウ中佐が手を振っているのが見えた。
その傍に軍用バスがあった。
あれに乗って行くようだ。
「クロウ中佐、それにシャルロット女王も!」
「あの二人、相当なご都合主義を望んでおったとはな。 妾も行くぞ!」
クロウ中佐だけでなくシャルロット女王も中間拠点にいた。
彼女も二人を知る人だから、看過できないのだろう。
なんだかんだで心強い。
「早く乗るんだ。 一刻を争うぞ!」
「「「はいっ!!」」」
クロウ中佐の一声に沿って、俺達はバスに乗り込んだ。
そしてクラクションの音と共に軍用バスは中間拠点を出発した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「女王様、それは何でしょうか?」
「それ、バズーカ砲?」
軍用バスでスピードを出してヘキサ公国に向けて走行している最中、シンシアさんはシャルロット女王が持ってる武器が気になった。
ひなたもそれに気づき、形状からバズーカ砲ではないかと推測していた。
だが、現実のバズーカはいわゆる対戦車ロケットランチャーの愛称であり兵器のカテゴリーじゃない。
なので、こんな大口径の手持ち武器ではないはずだ。
「これはな、別の遺跡から発掘し、現代ゼイドラムの技術で改良した魔導バズーカじゃ」
「魔導バズーカ…?」
女王の答えにひなただけでなく由奈も反応していた。
そして、由奈自身がそれを聞いて気になった事を訪ねた。
「じゃあそれも魔力で砲弾を?」
「そうじゃ。 じゃが、今回のクリストフ国王殿からの報告を受けて急ごしらえじゃが対悪魔用の砲弾を仕込んでる最中じゃ」
「対悪魔用の砲弾ですか…」
「そうでした。 あいつら悪魔族を殺して食べましたからね」
そう。
あいつらは悪魔族を殺して食べたために悪魔の力も身に着けた。
その力を解放して、ヘキサ公国を壊滅的打撃を与えたのだ。
自分たちが指名手配犯になってることに腹が立ったから。
エリス王女は対悪魔の砲弾を作っていた事に驚きを隠せないが、クリスタは隠れ里の悪魔族の女性の言葉を思い出していた。
「そうじゃ。 その為、急遽用意したのじゃ。 効果のほどは定かじゃないが、多少は効果は見込めるじゃろう」
「あいつらが悪魔の力でどこまで強くなってるか…ですね」
「うん、あの二人次第だよ。 私たちが勝てる見込みは。 こっちはアキトお兄ちゃんが強くなってるとはいえね」
「そろそろ到着するぞ。 準備はしておいてくれ」
色々話してるうちにヘキサ公国の首都が見えて来たそうだ。
「あれがヘキサ公国首都『アリステラ』だ…。 だが…」
「ひどい…。 城壁までかなり破壊されてる…。 あと、王城も…」
近づけば近づくほど、ヘキサ公国首都『アリステラ』の崩壊具合がよく分かってしまう。
城壁も王城もかなり壊されているようだ。
城下町であろう付近からも火の手があがっていた。
「門の付近に着いたら下車しよう」
そう言ってクロウ中佐は軍用バスを門の前に停車。
全員下車して、ヘキサ公国の城下町内に入っていく。
「死体もそこそこ多いな…。 逃げ遅れた人たちか…」
「酷い…」
「己の欲望の為にここまでやるのは許さぬわ…!」
首都内に入った俺達は、崩壊した街の風景と逃げ遅れた人たちの遺体が転がっていた。
中には子供もいたらしく、由奈とアイリスはショックを受けている。
そして、シャルロット女王もバズーカ引っ提げつつ、怒りを露にしていた。
「早くあいつらを見つけないと…エミリーさんも心配だし…」
「気配察知を使って探すか…」
「その方がいいな」
ひなたもエミリーさんの事が心配らしく、焦りが生じていた。
一方で俺とザックはあの二人を『気配察知』で探してみようとしていた所4だった。
「いやあぁぁぁぁぁっ!!!」
「あ、あの悲鳴は…!!」
「エミリーさんの悲鳴だ!! くっ、どこにいる…!?」
エミリーさんの悲鳴が聞こえたので、すぐに気配察知を行った。
そして、すぐにエミリーさんの気配が察知できた。
「あっちだ!!」
「お兄ちゃん、分かったの!?」
「ああっ、付いてきてくれ!」
俺の先導で、みんながエミリーさんの気配を察知した場所へ走っていく。
あの二人の殺気とエミリーさんの気配が一緒だったのでおそらくあいつらはエミリーさんに何かしていたのかも知れない。
着いた先は、王城。
二階から上は崩壊しているが、一階は無事のようだった。
エミリーさんとあの二人はあの内部にいる。
俺達は、意を決してその中に入る。
「なっ…!?」
「こ、これは…なんて事を…」
「うっ、うぅ、えぐっ…」
ザックとシンシアさんが見た光景は別の意味で悲惨だった。
俺もしっかり見てしまい、冷静でいられなくなっていた。
何せ、悪魔の姿になっていた来栖がエミリーさんの片足を無理やり持ち上げた状態。
如月はおそらく奴の視点ではエミリーさんの下着が見えてるのだろう。
それを見てほくそ笑んでいた。
さらによく見るとエミリーさんの足元に水たまりが出来ていた。
奴らはエミリーさんを…あのような事を…。
そう決めつけていた俺は、自然と体が動き…。
来栖の顔面に向けてコークスクリューを放っていた。
「あわびゅっ!?」
来栖は思いっきり吹き飛んだ。
その際にエミリーさんを手放したので、俺は彼女を介抱した。
「さ、佐々木…!?」
突然の事で驚いた如月が、声を上ずりながら俺の方を見ていた。
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