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85 魔族領での結婚式(中編)

「え…?」


自分を呼ぶ女の子の声に、七絵が振り向く。

するとそこには、ウェディングドレスを身に纏った少女が目に涙を浮かべていた。


「春菜っ!? 春菜なのね!?」


「そうだよっ、七絵ちゃん…!!」


「春菜っ…!!」


安川によって分断された三人娘の一人だろうか?

七絵が春菜という子に抱きついていた。


「無事で…無事でよかったよ…!」


「ごめんね、七絵ちゃん…。 安川の監視もあって七絵ちゃん達と話せなくて…」


「悪いのは安川だよ…! 自分の好みでクラスを分断させたんだから…!」


安川っていう奴…クラスを分断させただけでなく、別のグループとの話すら禁止にしていたのかよ。

よっぽど自分だけの世界を作りたかったのか…?

あいつらよりはるかにクズっぷりだな。

よく見ると、他の娘もウェディングドレス姿で他の後輩達と再会を喜んでいる。

だが、胡桃の方は俺の服の裾を強く握りしめているみたいだ。


「胡桃…行かないのか?」


「くるみ…元々…ひとりぼっち。 七絵くらいだから…友達が」


「胡桃ちゃん…」


そう言って胡桃は俺の後ろに引っ込んだ。

それを見た由奈も心配そうに見ていた。

気を掛けてくれた人はいただろうけど…友達と呼べる人は七絵のみ…。

それだけ、彼女が今まで辛い人生を送っていたんだろう。


「由奈、一応七絵に一声かけてくれ。 俺は胡桃を慰めてくる」


「うん、分かった。 お願いね」


俺は俯く胡桃を抱きかかえ、空き部屋の使用許可をイリアさん経由で貰い、そこで胡桃を落ち着かせようとした。


「にぃ…」


空き部屋の椅子に腰かけて、泣きそうになる胡桃の背中を撫でる。


「ごめんな…、空気読めてなかったな…」


「ん…」


俺の胸に顔を埋める胡桃。

さっきの出来事が相当堪えたんだろうか…。

全くといってもいい程に友達のいない彼女にとって、先程の光景は苦痛だったのかも知れない。

そんな中で…。


「ん? まだ落ち着いてないのか?」


青年の声が聞こえた。

その声に反応すると、獣耳の青年がドア越しに見ていたようだ。


「あなたは…?」


初めて見る顔なので、誰だかは分からない。

なので、尋ねることにした。


「ああ、悪い。 俺はザッケローニ・ギラン。 虎の獣人で第7防衛部隊の隊長をしているんだ」


「そうでしたか…。 俺は()()() 暁斗(あきと)といいます。 で、今抱きかかえてるのが来宮(きのみや) 胡桃(くるみ)です」


「よろしくな。 で、どうも君達がこの部屋に入っていくのを見てな…近くの子に聞いた所、君が抱きかかえている子が憂鬱になったって言ってたからな」


「まぁ、この子も色々あって友達もほとんどいないみたいで…」


「あー…、成程ね」


ザッケローニさんは理解してくれたようだ。


「もし、厳しかったらフォローする人をここに派遣して、その人とここで式の内容を生中継として見ることにしておくことも可能だけど」


「だってさ。 胡桃、どうする?」


反応がない。

嫌なのだろうか…?


「流石に反応なさそうなので…、ここで見ます」


「分かった。 フォローする人を呼んでおくよ」


「すみません、お願いします」


ザッケローニさんは一旦部屋を出て行った。

胡桃が再会の光景を見たことでトラウマが蘇ったのだろうか、未だに反応がない。

まぁ、大人数が苦手なのは俺も一緒だが、胡桃の場合はこの世界に来てからは信頼できる人が俺達しかいない。

何らかの形で胡桃の過去を知ればいいのだが。


「失礼します」


そんな事を考えていたら、今度は獣耳の女性がこの部屋に来た。


「暁斗さんですね? 兄から話を聞いて、フォローと映像の準備をしに来ました、シンシア・ギランと申します」


「兄? それにギランって…」


「先ほどあなたが会いましたザッケローニは私の兄です。 同じく虎の獣人で第7防衛部隊において副隊長を務めております」


「そうでしたか。 よろしくお願いします」


「こちらこそ。 抱きかかえてる子…胡桃さんでしたか? 彼女の過去に相当の闇を抱えているみたいですが…」


「ええ、ですが今の彼女は一切の反応をしないように振舞ってまして…」


「式が終わりましたら、私の能力を応用して見ていきましょうか」


「お願いします」


シンシアさんは映像の準備を行いながら、胡桃について話をした。

抱えてる闇の正体を知れば、何とか助けてやれるかも知れない。

今はこれから始まる式を映像を通して見ておくとしようか。



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追放された剣士の冒険譚』もよろしくお願いします。
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