80 女担任・葛葉の末路
今回は短めで、かつ視点がコロコロと切り替わります。
ご注意ください。
(Side 暁斗)
「ああぁぁぁぁっ!!」
剣を手に持ち、奇声を上げて俺に突進してくる葛葉。
そして無尽蔵に剣を振るうが、ひなたの祖父に叩き込まれた者の視点からしたら基礎が全くなっていない。
スピードも速くなく、簡単に回避できる。
葛葉が剣を振り下ろした直後の隙を狙い、首筋に向けて軽く肘打ちを繰り出す。
「あがっ!?」
肘打ちされた衝撃でバランスが取れず、地面にうつ伏せに倒れる葛葉。
しかし、すぐに立ち上がってくる。
まぁ、今は手加減してるし当然だな。
「く、な、舐めるなあぁぁぁ!!」
だが、相変わらず剣を使って攻撃してくる。
魔法とか使わないのか、あの担任は?
「このっ、このぉっ! な、なんで当たらないのよ!!?」
「そりゃあ、あまりにも分かりやすい攻撃だしな。 俺からしてみれば回避しやすいさ」
「があぁぁぁぁっ!!」
いきり立ってさらに我武者羅になる葛葉。
より精度を欠いた剣の攻撃に呆れを通り越してしまう。
「どうしたよ、魔法を使わないのか?」
「う、うるさぁぁぁい!!」
質問に回答する気もない…か。
本当にどうしようもない担任だな…。
そう考えながら、合間にカウンターの攻撃を繰り出していく。
あれだけ怒り狂ってるんだ。 いずれ思い知らされるさ、力の差にな。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
(Side アイリス)
アキトお兄ちゃんやひなたお姉ちゃん、由奈お姉ちゃんにとっては忌むべき存在のかつての担任だった人。
一度、お兄ちゃんを無能扱いして罵っていたので不快に感じたが、シャルロット女王様の挑発とお兄ちゃんの無双で今はスッキリしている。
そして、現在、その担任はお兄ちゃんに対して我武者羅に剣を振ってきている。
(でも、お兄ちゃんには意味がないもんね。 機敏に動くから)
自慢の剣なのだろうけど、『剣士』をも極めているお兄ちゃんからすればなまくらも同然みたい。
私でも分かる程剣の軌道は、あまりにもお粗末だから。
「さっき暁斗君が言ってたけど、あのクソ担任…魔法使わないね」
「そうだよね。 さっきからずっと剣を振ってばかり。 足止めの意味でも魔法使えばって思うよ」
ひなたお姉ちゃんも由奈お姉ちゃんも同じことを考えていたみたい。
確かに、一度も魔法を使ってないね…。
もしかして…と思って、私はある予測を口にした。
「多分だけど…使わないんじゃなくて、魔法を使えないんじゃないかな?」
「ああ、なんか納得してしまう…」
「どうも魔法の使い方を練習してなかったかもしれないね。 【グレートブースター】くらいじゃないかな、使うのって」
ひなたお姉ちゃん達も私の予測に同意する。
勇者の素質を得ただけで強くなってると錯覚しているタイプなんだろうね、これは。
素質を得たからと言って、冒険者などで実際に経験を積まないと意味がない。
お兄ちゃん、そして勇者の素質を持つひなたお姉ちゃんや由奈お姉ちゃんは冒険者としても色々と経験を積んできた。
だから今の強さがあるんだよね。
そう考えてるうちに、お兄ちゃんが剣を手に取った。
傍らで担任は絶望の顔色をしていた。
そろそろ終わらせるつもりだね、これは…。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
(Side 暁斗)
「あ、あぁ…、なんで…なんで…」
「言ったろ? 経験が違うって」
俺は葛葉にそう吐き捨てながら、剣を手にした。
絶望の表情で震えている奴にそろそろ引導を渡さないといけないからな。
「私は…私は勇者よぉぉぉ!!」
恐怖を押し殺して再び剣で襲い掛かる葛葉。
しかし、俺は回避せずに剣を下から上へと描くように斜め斬りをし、葛葉の片腕を斬り落とした。
「あ、あぁぁぁぁ!! 腕があぁぁぁぁ!!」
腕を斬り落とされ、片手で押さえながらのたうち回る。
俺は、そんな無様な様子を見ながらすぐに剣を奴の心臓部に目掛けて突き刺した。
「が、は…っ!!」
のたうち回ってる最中なので当たるかどうか心配だったが、上手く刺せたようだ。
深く刺した後、すぐに剣を抜いた。
こびりついた奴の血を消毒魔法できれいにする。
数分の間、身体をビクンビクンと震わせたが、しばらくして事切れた。
すぐに【フレイムブラスト】で葛葉の身体を焼いて灰化した。
「これでよし…と」
こうして、偶然な形で出くわした葛葉という担任を倒したのだった。
これでようやくガイアブルクに帰れるな…。
よろしければ、評価(【★★★★★】のところ)か、ブックマークをお願いします。