72 渡される二つの銃
国家毎に違いを示すために、ガイアブルクは「王城」
ゼイドラムは「王宮」と敢えて記載しています。
ゼイドラム王宮内にて、たどり着いた先の大広間。
長いテーブルの上にたくさんの料理がすでに置いてあった。
「すごい…。 それにおいしそう…」
胡桃が目を丸くしながら素直に感想を述べていた。
ガイアブルクでもたまに王城内で食事をしたことはあるが、それに匹敵するレベルだ。
「一部の料理はガイアブルクから伝わったものだから、幾つかは見覚えのあるのも存在するぞ。 さぁ、色々あるがまずは冷めないうちに料理を食べてしまおうではないか」
「姉が我慢できないだけだろう?」
「うぐぅっ!!」
あ、シャルロット女王が早く食べたかったのか…。
弟であるクロウ中佐にツッコミを入れられた女王は、オーバーリアクションをした後ですぐに落ち込んだ。
「だが、まぁ先に食べてから本命の要件を伝えた方がいいだろうな」
「そうですね。 私たちもお腹が空きましたし」
「流石に女王様を放置しておくわけにはいかないから、声を掛けてくるよ」
「ああ、済まないアイリス王女殿」
だからと言ってこのまま女王を放置しておくと色々不味いことになりかねない。
アイリスもそれを知っているから先に声を掛けにいったのだ。
女王が立ち直るのを待ってから、俺達は用意された料理を存分に味わうのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「さて、食事も終わり、トイレ休憩も終わった事だし、本題に入ろうか」
シャルロット女王とクロウ中佐が俺達の向かい側に座り、真剣な表情で本題に入る。
「なに、クリストフ国王殿から暁斗くんと胡桃さんが『ガンナー』の素質を持っていると聞いてな。 二人にふさわしい銃をさがしていたのじゃよ。 それが丁度見つかったのでな」
そう言うシャルロット女王が指を鳴らすと、二人のメイドが入ってきた。
そして、テーブルの上にその二つの銃が置かれた。
それぞれ見た目がソリッドフレーム式のリボルバー、もう一つは16インチの長身を誇るバントラインだった。
だが、構造上二つとも本来のそれらとは似て異なる部分が多い。
特に双方とも付いてるはずのシリンダーが付いていない。
「女王様、これは…?」
「これはゼイドラム国南部の遺跡で発掘された『魔導銃』と呼ばれるものじゃ」
「魔導銃…」
ひなたも由奈も前のめりになってテーブルの上に置かれた銃を見る。
見た目が俺達がよく知る銃に似ているからだろうが…。
これが発掘された魔導銃と呼ばれるのには理由があるのだろうか…?
「これは基本的に使用者の魔力を使う事で、魔法の弾丸を撃つことが古代の兵器じゃ」
「魔力で…弾丸を…?」
「そうじゃ。 その証拠に本来の銃なら付いてるはずのシリンダーが無いじゃろう? 魔力を銃に注ぐだけで弾丸が自動でリロードされる仕組みなのじゃ」
「クリストフ国王殿から送られたデータでは、二人はさらに魔力が高いという事が分かっていてな。 君たちならその魔導銃を使いこなせるかもしれないと思ったのだ」
それでか…。
俺はともかくとして、胡桃もバハムートやダイダリアサンを召喚できる位に魔力が高いもんな。
確かに俺達にはうってつけなんだろう。
使い方さえ教えてくれればの話だが…。
「胡桃さんは小さめの方を…そして暁斗くんはやや砲身が長めの銃を使ってもらいたいのじゃ」
「手に取っていいんですか?」
「構わぬ。 というより、それらはそなたたちの為に用意したものだ」
「…ありがとう」
シャルロット女王に促され、俺と胡桃はそれぞれ指定された形式の銃を手に取った。
するとどうだろう。
俺の魔力が手に取った銃と一体化してくるように感じる。
そして、魔力が銃に流れていく。
まるでこの銃が俺を選んだかのようだ…。
「にぃ、どうだった?」
「ああ、不思議なくらいにしっくり来た。 一体化したかのようだったよ」
「くるみも…そんな感じ…」
「今の本当にすごかったね。 銃が淡い光を放ってたのが見えたよ」
「うん、お兄ちゃんと胡桃ちゃんがそれぞれの銃に選ばれたみたいな感じだったよ」
アイリスとひなたからそんな感想が述べられた。
淡い光を放ってたのか…。
全くそこには意識していなかったな。
「よし、早速射撃の練習をしよう。 地下に射撃場があるから、そこに案内…」
「た、大変です!!」
クロウ中佐が俺達の射撃の練習のために、王宮の地下にあるという射撃場に案内しようとした矢先、兵士たちが慌てて部屋に入ってきた。
「どうしたのじゃ!? そんなに慌てて何があったのじゃ!」
女王も兵士に声を掛ける。
だが、兵士の表情からただ事ではない…そんな感じが見受けられた。
「ほ、北部の『ゼイドニウム採掘場』の内部から…、謎の爆発が…!!」
「な、なんじゃとぉぉぉ!!?」
『ゼイドニウム』が採れると言われる採掘場の内部から爆発があったと報告された。
それを聞いたシャルロット女王は大きな声を上げながら驚いていた。
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