71 首都『ゼットリム』にて
誤字報告ありがとうございます。
ゼイドラムの首都『ゼットリム』にバス専用のゲートから入った俺達はさらに驚きを隠せなかった。
それはまさにバスターミナル的な構造をしていたからだ。
外観から世界観が剥離する程にまで近代化しているのに、バス専用ゲートに入ってさらに驚かされるのだから、これから先も驚いてしまうだろうな…。
そうなると懸念は環境なのだが…。
「ご覧の通り近代化した我が国だが、環境には配慮している。 火や電気なども、マナエネルギーから抽出して利用している。 また、『錬金術師』の素質をある程度鍛えることで、サブジョブである『クラフター』や『建築家』の素質が手に入る為、それを得た人物達がスキルの力で建築や車類の製造、改造に関わっている」
クロウ中佐による説明で、全てがマナエネルギーを利用したものが使われいるようだ。
また、『錬金術師』のジョブの素質にサブジョブの素質があることを初めて知った。
特定のジョブの素質をある程度鍛えることで習得するらしい。
『錬金術師』の場合は、クロウ中佐が先に言った通り、『クラフター』と『建築家』のようだ。
この2つのサブジョブを習得している人が、スキルを駆使して、建築やモノの製造に一役を買っているとのことだ。
「一応、騒音対策的な形でそうしている。 離れの場所や地方はショベルカーとかも併用しているがな。 なお、我が国からガイアブルク王国やヘキサ公国等へショベルカー等を提供している」
首都内では騒音対策の一貫で先ほどの事をやっているみたいだ。
地方だと、ショベルカー等と併用しないと厳しい部分もあるみたいだが。
あと、ガイアブルク王国やヘキサ公国にもゼイドラム製のショベルカー等を提供していたらしい。
アイリスに確認したらガイアブルク王城の地下に数台置いてあるそうだ。
ここまで聞いて、ひなたも理解したようで、クロウ中佐にこう言った。
「どうりで、バスターミナルに居ても空気が澄んでいるって思ってました。 あらゆる分野でマナエネルギーを使ったりしてるんですね」
「そうだ。 さて、話もここまでにしてあそこの定期バスに乗ろう」
そう言ってクロウ中佐が指を指した先は、王宮へ向かう定期バスだった。
「あれに乗って我が王宮に向かおうぞ。食事もそこでする予定じゃ」
「分かりました。 おーい、アイリスにクリスタ。 そろそろ行くぞー」
「了解したよ。 さ、クリスタちゃんも」
「は、はいっ!!」
俺とアイリスの一言で、クリスタは我に返った。
どうもバスターミナルの光景だけで驚きのあまり固まっていたようだ。
慌てて俺達の後を付いていき、バスに乗り込む。
今回は、運賃はクロウ中佐が払ってくれるようだ。
なお、運賃は230イェン均一のようだ。 距離によって運賃が上がらないのは助かるかな?
俺達を乗せたバスは、ターミナルを出て商店が並んでいるエリアを経由して進んでいく。
シャルロット女王曰く、そこは『商業区域』と呼ばれるエリアだそうだ。
王宮へは、ここを経由することになるのだとか…。
「流石に首都内は舗装されてるから、そこそこ速いですね」
「今乗ってるバスは基本的に首都内を走るからな。 それでもメンテとかには手は抜かないさ。 車体や内装、車輪とか動力関連は特にな」
「確かに…結構年季が入ってるみたいですけど、内装が未だに新品みたいに綺麗ですし…」
そこが俺達の世界のバスとの違いだろうな。
俺達の世界も整備はしてないわけじゃない。 むしろちゃんとしているはずだけどな。
やはりこっちは使っている金属やスキルで行使している事で整備をしやすくしているのだろうな。
車体からして、雨風にさらされても錆びない感じが見受けられるし。
クロウ中佐はさらに話を続けた。
「ちなみに車体は、ゼイドラム北部で採れる『ゼイドニウム』という鉱石を加工したものが使われている」
「『ゼイドニウム』?」
見慣れない物が出て来たな。
ひなたや由奈も首を傾げている。 それだけ初耳な単語だからだろう。
おそらくこの世界でしか見られない金属や鉱石なのだろうが…。
「マナの力によって生み出された鉱石類の一部として伝わっている。 硬度もベスト3に入る硬さでかつ雨風や海水にさらされても錆びないとされている。 さらに加工や合成がしやすいのも特徴だな」
「へぇ…」
クロウ中佐の話によると、ゼイドニウムはマナの力が生み出した存在らしい。
雨風や海水を浴びても錆びないとか…俺達の世界のどこかの塩害魔王と言われた車体が泣きそうだ。
だったら、ここで作られてる銃もそれを用いた可能性が高くなったな。
「もうそろそろ王宮の門前に着くな。 降りる準備をしようか」
「はい」
クロウ中佐に促され、降りる準備をする。
アイリスやクリスタは流石に冷静になったようで、すぐに降りる準備をしていた。
そして、バスが王宮の門の前に止まり、俺達はそこで降車した。
「ようこそゼイドラム王宮へ。 お待ちしておりました」
降りた先には門番の兵士二人が敬礼をして出迎えてくれた。
二人なのも胡桃の性質に考慮しての事だろう。 伝えてくれたクロウ中佐には感謝しかない。
門番の兵士が王宮の入り口まで案内、そこからはクロウ中佐やシャルロット女王が案内する。
言い忘れてたが、外観はガイアブルクの王城のような造りだった。
「では、先ほど言ったように食事にしようか。 大広間に案内しよう」
俺達は二人に先導される形で、大広間へ向けて進んでいった。
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