68 あれから二週間後…
第5章突入です。
クレハ共和国の解放戦から二週間が経過した。
俺達は今まで通り、冒険者活動に勤しんでいた。
後輩達もメキメキと実力を上げており、早い速度でソロのランクがCまで上がったとか。
それと、この二週間で追手とかの気配はなかった。
解放戦中に後輩たちと戦った追手部隊が全滅したことで、部隊の編成ができなくなったものと思われる。
また、北部の討伐部隊壊滅の際にアンというガルタイトの王女が戦死したという情報も入ってきた。
これもまた一つの要因ともなってるようだ。
惜しむらくはアンを俺の手で引導を渡せなかった事だ。
あの女は俺を睡眠系の呪いを掛けてくれたからな…。
今、俺は『解呪の札』を試しに作っているところだ。
と言っても、『マジカルペーパー』に解呪のスキル【ディスペルカース】を付与する形なのだが。
これはかつて、さっき言った睡眠系の呪いを掛けられた俺に対して使用したものであり、Sランクの効力でも解呪完了まで3日掛かるとアイリスが言っていた。
直接【ディスペルカース】を使うなら即解呪できるが、いざという時のために用意された『マジカルペーパー』で解呪のスキルを付与してやってみようという流れに至った。
付与が完了し、【鑑定】を掛けて調べてみる。
「…だめか」
俺はため息を吐いた。
鑑定した結果、やはりSランクになったものの解呪完了には3日掛かるという内容が出た。
呪術師を極めた俺の能力でも、札に付与するとこれが限界なのだろう。
「やっぱり紙の性質上、そうなるんだろうね…」
傍らで見守っていたアイリスも同様に嘆いていた。
「これだとパイツァダストみたいな呪いに対処できないな」
「うん、それ系の呪いの場合は結局お兄ちゃんや他の呪術師を極めた人に直接やってもらうしかないね。 私もそろそろ呪術師を極めないと…」
「そういえば、アイリスも呪術師の素質を持ってたんだったな」
「そうだよ。 でも、今までずっと魔術師で戦ってたから呪術師の素質を鍛えるのを忘れてたんだよ…」
今までアイリスが魔術師の魔法ばかり使ってたのですっかり忘れていたが、アイリスも呪術師の素質を持ってるのだ。
これからの為にも、アイリスにも呪術師を極めてもらわないといけなくなったのだ。
「そういや他のみんなは?」
「ひなたお姉ちゃんと由奈お姉ちゃんはお買い物。 胡桃ちゃんとクリスタちゃんはテイム魔物のお世話だね」
「ほぉ、胡桃が世話を買って出たか」
「と言ってもモチちゃんとメイジフォックスウルフのおチビーズたちの世話なんだけどね」
「いいじゃないか。 胡桃にとっても世話をしやすいだろうし。 クリスタはラムとラビの世話か」
「そういう事になるね。 でもおかげで安心してテイム魔物も育てられるよね」
「だな。 テイム魔物がみんなに好かれているのが幸いしたな」
大人しく人見知りの激しい胡桃だが、テイムした魔物を相手にするには問題はない。
というか、主にフェアリーキャットのモチをモフモフしていたり、おチビーズと遊んであげたりする光景をよく見る。
おかげで負担が和らいでおり、冒険者活動に精を出したり今のような実験も出来るわけだ。
「もうそろそろひなた達が帰ってくるころだな」
「うん。 帰ってきたらすぐにご飯を作るから、胡桃ちゃん達にも伝えておいてね」
「わかった」
というやり取りをしていた矢先に玄関から声が聞こえた。
「ただいまー」
ひなたの声だ。
俺とアイリスが二人を出迎える。
「お帰りー。 結構買って来たね」
「うん、モチちゃん達の専用フードも買ってきたからね。 そろそろ少なくなってきてたから」
「ああ、悪いな…」
「どうって事ないよ。 それより、国王様から通達があったよ」
「通達?」
「お父さんから?」
ひなたが国王からの通達が俺達にあったことを伝えた。
どうも、買い物帰りに国王に会ってある内容を伝えてほしいとの事。
「一度、機械技術国ゼイドラムに寄って欲しいみたい。 多分、暁斗君や胡桃ちゃんの件だと思うよ」
「ああ、『ガンナー』の素質を持ってるからか」
「そうだと思う。 クリストフ国王様からゼイドラムに伝えてあるから向こうも理解はしてくれてるみたいだけどね。 銃は向こうでしか手に入らないから」
「そうだったなぁ…。 それでいつ頃に?」
「明日、私たち全員で来て欲しいみたい。 西地区の門からクロウ中佐が来てくれるから大丈夫だろうけどね」
「了解。 胡桃たちにも伝えておくよ」
ゼイドラムにはいつか行かなきゃいけないだろうとは思っていたが、まさか向こうから声が掛かるとは思わなかった。
多分、クロウ中佐が伝えてくれたんだろうな。
クレハ解放戦の件で俺達の事も伝わってる為に、興味をもったのだろう。
とにかく声が掛かったのなら、行く以外の選択肢は選ばない。
俺自身も『ガンナー』の素質だけはまだ手を付けていないからだ。
これでひとまず銃が手に入ると分かれば、テンションが上がらずにはいられない。
そんな感覚で、俺は胡桃達にこの事を伝えるために部屋に入ったのだった。
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