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54 閑話~エリス王女と衝撃の報告~

閑話です。

今回は、ガイアブルク王城内の様子です。

「ふぅ…」


ガイアブルク王城の一室で書類作業をしているエリス王女。

クレハ共和国から帰還した諜報部隊を労い、彼らから手に入れた情報を父であるクリストフ国王に渡すために書類として纏めてる所だった。

作業中にふとノックの音が聞こえた。


「開いてるっスよ、ルーク兄さん」


エリス王女がそう言うとドアが開き、金髪蒼瞳のイケメンが入ってきた。

彼がエリス王女、ならびにアイリス王女の兄であるルーク・ガイアブルク第一王子である。

エリス王女が継承権を譲ったため、現在は彼のみ継承権を持っている。


「どうしたんスか? ルーク兄さん」


「いや、エリスが最近食事を摂ってなさそうだってメイドから言われてたからね。 心配で来たんだよ」


「…それだけで来たってわけではないでしょう?」


メイドからよく食事されないとよく言われるために心配で来たのも本当なのだが、エリス王女はそれだけではないのではとカマを掛けた。

伊達に諜報部隊の全てを任されていると言われてる故の勘であろうが…。


「エリスには敵わないか…。 どうもクレハ共和国方向から『真の左派』と言われる人物が我が国を訪れたようなんだ」


「『真の左派』…?」


「うん、つまり保守派とも言われる右派とは違い、本当の意味での穏健派の人物らしいんだ」


「…ああ、なるほど…そういう事なんスね」


「え?」


エリス王女はそれで何かを察し、理解したようだ。

ルーク王子はどういうことかと首を傾げていた。


「言ってしまえば、今の左派政権は現大統領にとっては隠れ蓑ってことだったんスよ。 現大統領の目的を達するために左派政権を踏み台として利用したって事ですよ」


「つまり、左派政権の議員の一部はそれを知らないまま…?」


「その可能性は高いでしょうね。 右派も左派も本来は祖国を良くするためという点で共通しているはずですから。 父上からの回答は?」


「ひとまず父上の命により宿に案内させた。 でも、急な要件らしいから水晶による通信で僕たちに伝えるらしい」


「分かりました、繋ぎましょう」


そう言って、エリス王女は通信用の水晶玉を机の上に置いた。

すると水晶玉が赤く光り、通信が開始された。


『お忙しい所すみません。 クレハ共和国から脱出した者です。 向こうで左派議員として活動していました』


「ガイアブルクの王女エリスです。 大まかな話は兄のルーク王子から聞いております」


『どうも…』


「急な要件と聞きましたが…どんな内容なのです?」


『実は…二度目の勇者召喚によるゴタゴタの中で現大統領のゲスー・オズワルドが、ガルタイト国王のヘイト・ゾア・ガルタイトと会談を行ったと魔族領の諜報部隊経由で知らされました』


「な…!?」


「何ですって!?」


クレハ共和国から脱出した左派議員による報告を聞いた二人は驚きを隠せずにいた。

二度目の勇者召喚のゴタゴタの最中で双方が出会い、会談を行うなど考えられないと思ったからだ。


「まさか、こんなに早いタイミングで…!」


「アイリスちゃんから14人の裏切りがガルタイトで発生していたという報告を貰って、隣の別荘を彼らの住まいとして提供させたばかりなのに…」


『おそらく、そのゴタゴタをゲスーは読んでいてたからこそあえてあのタイミングで仕込んだと思われます』


「あの二人は確か親友でしたが…もしかして!?」


『ええ、残念ながらクレハ共和国はガルタイト国に売られました。 今、そこは実質ガルタイト領の一部になってしまってます』


「…!?」


声に出ない感じでさらに驚きの表情を見せたルーク王子。

エリス王女も、今の報告で怒りを抑えきれずにいる。

何せ、売国主義の大統領のゲスー・オズワルドがガルタイトに国を売ったのだから。


「兄さん、あの子たちの手続きは?」


「ああ、父上のおかげでしっかり終わったと聞いている」


「じゃあ、すぐに今の件を父上に伝えて!」


「分かった!」


父、クリストフ国王への報告のため、ルーク王子は部屋から出て行った。

エリスは赤く光る通信用の水晶玉を見つめ、話を再開する。


「やはりというか、ゲスー・オズワルドは本性は魔族殲滅主義だったという事ですね」


『ええ、情けないながら我々は騙されました。 ゲスーのやり方に不満を持った議員がこっそり我々を隠し通路から脱出させてくれたのです』


「あの悪法もあなた達は関わってなかったと?」


『ええ、我々も知りませんでした。 おそらくゲスーの仲間たちが勝手に決めていったものと思われます』


「そうですか…」


ゲスーが親友のヘイトの為に動いてるのならそのための手段も平然と執り行う。

それを知っていながら何もできなかった…。

そんな悔しさか、エリス王女の拳が震えている。


「今後、ガルタイトとの戦いは激しいものになるでしょうね」


『そうなりますね。 裏切った勇者がいるとしても…残った者もいますからね。 後、ガルタイト領という名の牢獄に囚われたクレハ国民はおそらく恐怖政治の元で兵士として派遣してくるでしょう』


「今回の話、魔族領にも伝える事になりますが、よろしいですか?」


『ええ、構いません。 我々としても由々しき事態であると理解しているので…』


「分かりました。 それから情報ありがとうございました。 無理をなさらないようにしてくださいね」


『はい、それでは…』


そう言った後、通信を終えた。

水晶玉はそのままに改めて手をかざす。

今度は今の件を魔王であるイリアゲートに改めて伝えるためだ。

おそらく諜報部隊からも報告はいってるだろうが、共有するためにもこっちからも伝える必要がある。


「こうなってしまうと…暁斗くん達に頼るしかないのかも知れないっスね…」


エリス王女はそう独り言ちながら、イリアゲートへの通信を始めたのであった…。




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