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46 抹消された第三王女

「おはよー」


「おはようアイリス。 こっちは未だに目覚めずだ」


「そっか…、まだ目覚めないんだね」


日が変わり、俺がしばらく少女を看病しているとアイリスが起きていた。

現状の報告をしたところでアイリスが俺の横に並ぶ。


「ひなたと由奈は?」


「もうすぐ起きるよ。 お兄ちゃんは寝なくて大丈夫なの?」


「無理強いする気はないけど、流石に今は寝られないな」


「後で私が寝かしつけてあげるよ。 なんなら抱き枕にでも…」


「ん、んぅ…」


「!?」


アイリスが抱き枕発言をしかけたタイミングで、少女の震えと共に彼女の瞼が開く。


「ようやく目が覚めるのか!」


「私、お姉ちゃん達を呼んでくる!」


そう言って、アイリスは二人を呼ぶために一旦部屋を出た。

少女の瞼が開き切り、上半身を起こした。


「ここは…?」


「ここはガイアブルク城下町の西地区にある家だ。 北地区の街道から外れた茂みで倒れていたからここまで運んだんだ」


俺が少女に場所と状況を説明する。

少女は驚いた表情をしている。 無理はないか。

すると、複数の足音が聞こえてきた。

アイリスが二人を連れて来たんだろう。


「あの子が目覚めたのは本当かい!?」


「アイリスちゃんから聞いて駆けつけたの!」


「二人とも落ち着け! こうして今目覚めてるから!」


二人を宥め、改めて少女に向ける。

さっきのでさらに驚いていたが、今は落ち着いている。


「とりあえず、ここにいるメンツが今、この家に住んでいる者なんだ」


「私はアイリス・ガイアブルク。 この国の第二王女でこの家の世帯主だよ」


「私は葛野ひなた。 こっちは春日部由奈だよ」


「で、俺は佐々木暁斗。 まぁ、俺とひなたと由奈はガルタイト国に召喚された人間だけど訳あってこの国の住民になってる」


自己紹介が終えた途端、少女がベッドから出たと思いきや速攻で土下座してきた。


「すみません、すみません、すみません! あの愚父たちが迷惑を…!」


「お、落ち着いて! べ、別に君は悪くないんだろ!?」


「いえ! その召喚に別な形で私が関わってたのですから!!」


「え!?」


少女の発言に全員が驚く。

とにかく土下座をやめさせ、落ち着かせてからリビングに案内し説明をさせることにした。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「はい、あったかいココアどうぞ」


「あ、ありがとうございます」


アイリスが淹れたココアを飲んで落ち着きを取り戻した少女。

落ち着いた所で俺は、先ほどの発言の真意を聞くことにしたが…


「あ、そういえば自己紹介していませんでしたね。 私はリタ・ガルタイトと申します。 察しの通りホムンクルスであり、第三王女だった者です」


「第三王女…だった?」


「あ、そういえば王女様らしき人は二人だった気が…。 ずっと二人だと思ってたけど…」


過去形が混じった自己紹介にひなたが首を傾げるも由奈は何かを察していた。

リタと名乗った少女は話を続ける。


「私はある理由で、死んでしまい第三王女ではなくなりました。 私自身はなぜこうして生き返ったのかは知りませんが」


「えっと、それについてなんだけどリタさんは特殊な感じだったと思う。 お兄ちゃん、鑑定を」


「よし、『鑑定(スペクタクルズ)』」


アイリスに頼まれ、リタに鑑定を使う。

するとリタのステータスが表示され、今の所リタにしか表示されないLPというステータスがある。


「これが、私のステータス…ですか? LPって…」


「多分ストックされた生命力なんだと思うよ。 当時、察知した時も幾つかの生命力を抱えている感じがしたから。 それでさっきの発言も理解できたよ。 最大で10のLPが一つ減って9になってた状態だったから」


「その生命力を使って、1ヶ月掛けて自己蘇生が可能になる。 だから君は一度死んでもこうして生き返ることができたんだ」


「私にこんなのが…、だから一度死んでしばらくしてから生き返ったのですね」


「うん、私もびっくりだよ。 こんなステータスは見たことがなかったから」


アイリスの説明と俺の補足を聞きながら、自分のステータスを見てびっくりしているリタ。

ホムンクルスであることを自覚しながらも自分がこんな変わったステータスを持ってるなんて知らなかっただろうし。


「それで話は戻すけど、ある理由というのは?」


「それに関する話ですが…、皆様は勇者召喚を行う術についてどこまで知ってますか?」


「あ、私は知らないかも…」


「俺とひなたは、イリアさん…イリアゲートさんから『異界勇者召喚術』が禁術指定であることと意思を無視しての召喚だったことしか聞いてないな」


「そうだね。 意思を無視することが危険視されたからだって言ってたし…」


由奈は知らなかったらしいが、俺とひなたはイリアさんから語られた内容を話した。

それを聞いて、リタは真剣な表情で話を再開する。


「実は、その『異界勇者召喚術』で一気に多数の人間を召喚するには、生贄が一人必要なんです。 逆に言えば生贄なしでは一人しか召喚できないという事ですが」


「生贄!?」


リタが口にした事実に、驚きを隠せずにいる俺達。

クラスごと召喚するために生贄を選んで召喚を実行したというのか…。


「まさか…、その理由っていうのは…?」


ひなたが何かを察した。

リタも頷きながら、肯定的な答えを口にした。


「はい。 私は愚父や愚姉妹と考え方が違った事で、欠陥品と称され『異界勇者召喚術』の生贄にされたのです」


…と。

つまり、彼女が別の形で関わっていたというのは、生贄として…という事だったのだ。



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追放された剣士の冒険譚』もよろしくお願いします。
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