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41 春日部由奈に救いの手を

「暁斗君…、何を?」


「大丈夫だ、すぐに終わる」


春日部さんの背中に手を当てて、俺は【カースリサーチ】を掛ける。

ガルタイト国の事だ。

何か仕込みがあるのかも知れない。

そう思って、この行動に移したがやはり引っかかった。


(ちっ、エグい呪いを埋め込んでくれたな…。 だが、今の俺なら解呪できる)


そして、そのまますぐに【カースディスペル】を掛ける。

すると、赤いモヤモヤが春日部さんの身体から噴き出してくる。

赤いモヤモヤが彼女の身体から完全に離れた後、しばらくしたら小さく爆発した。


「きゃっ!」


離れてるとはいえ、小さくても爆発してるので春日部さんは耳を塞いでいた。

確かにびっくりするだろうな。


「お兄ちゃん、さっきのはもしかして【時限(パイツァ)爆弾(ダスト)】の呪いなの?」


後始末を終わらせて、先に駆け寄ってきたアイリスが先ほどの呪いの正体を暴いた。


「ああ、ガルタイトめ…、ホントに救いようがないよ」


俺は悪態をつきながら、アイリスの話を肯定した。


「えっと…どういう…こと?」


春日部さんがオドオドしながら聞いてきた。

自分に仕掛けられた呪いに恐怖しているのだろう。


「有体に言えば、由奈お姉ちゃんに仕掛けられた呪いは対勇者の呪いだね。 これはガルタイトの思想に反する事をしたらスイッチが入り数秒後に爆死してしまうやつなんだよ」


「え、えぇ…、そ、そんなのが…私に?」


「うん。 さっきも言ったけどガルタイトはお兄ちゃんやひなたお姉ちゃんを殺害するという命令を出してる。 言ってしまえば今後の裏切り者は死をって事だろうね」


春日部さんが顔を青ざめて驚いている。

対処が遅れていたら、俺の目の前で彼女が爆死されてた可能性もあった。

彼女を助けるために予防線を張って【カースリサーチ】を掛け、即座に解呪したのは正解だった。


「そっちも、終わったかな?」


「ひなた…ちゃん…」


全てを終わらせたひなたがこっちにようやく来た。

春日部さんは目を丸くして、彼女を…ひなたを見ていた。


「ごめんね、由奈さん。 あの時、暁斗君を助けることばかり集中してて…由奈さんの状況考えてなかった。 君の手を引っ張りながらでも彼を助けるべきだったかも…」


「ううん、私こそ…。 ひなたちゃんがすぐに動けたのがうらやましくて…私も暁斗君を助けてあげたかったのに…何も出来なくて…!」


春日部さんの目に涙が溢れてる。

今までの積もり積もったものが涙として堰を切ったように流れていく。


(お兄ちゃん)


(ああ…)


アイリスが目線で語り掛ける。

春日部さんに寄り添ってあげてというメッセージだ。

俺はそれを了承し、すぐに彼女に寄り添った。


「過ぎたことはしょうがない。 今はこうして君が俺達と一緒にいる。 それでいいじゃないか」


「あ、暁斗君…」


俺の言葉で感極まったのか、溜めた涙が再び流れる。

それを察し、俺は彼女を抱きしめる。


「うわあぁぁぁぁん! ごめんね、ごめんね、ごめんねぇぇ!!」


これでもかという甲高い声で、彼女は思いっきり泣いた。


「いいんだ、もういいんだよ。 君は頑張ったんだ」


「そうだよ由奈さん、私こそ謝らなきゃいけない…。 友達なのに君を置いていったから」


そんな彼女に、俺とひなたは優しく受け止めた。

傍らで見守るアイリス達もよかったという安堵した表情を浮かべていた。

今まで溜め込んでいた分の涙を俺はしっかり受け止めた。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「すっきりしたか?」


「うん、思いっきり泣いちゃって…ごめんね」


「いいって、気にすんな」


落ち着きを取り戻した春日部さんは、わずかながら笑顔を取り戻していた。

ようやくだが、彼女にも新しいスタートが切れるきっかけになるだろう。

なお、エミリーさんとクレアさんはヘキサ公国の用事もあるという事でクリストフ国王に軽く報告をした後に転移で帰っていった。

彼女たちも忙しいだろうし、仕方ないな。

そう思ってると、リリがこっちに走ってくる。


「わうわうわう♪」


「きゃっ、くすぐったい」


「おいおい、びっくりさせるなよリリ」


リリが春日部さんに駆け寄って彼女の顔をペロペロと舐める。

まぁ、リリなりに元気出して欲しいと思ってるんだろう。


「ああ、そうだ。 さっきお父さん…ガイアブルクの国王から提案があったんだけど」


「提案?」


春日部さんは首を傾げる。

何の提案なのだろう…と。


「由奈お姉ちゃんもアキトお兄ちゃんの妻にならないかって…」


「ああ、それいいね。 由奈さんも私たちと一緒に居れば安心だろうしね」


「ほ、ほえぇぇぇぇ~~~~っ!?」


内容を聞いた春日部さんは、顔を真っ赤にしながら叫んでいた。

まぁ、事情をしらない彼女からしたら驚きだろうな。

あと、ひなたもノリノリだな。

まぁ、俺としても異論はないが…、さて、どう説明しようか…。



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追放された剣士の冒険譚』もよろしくお願いします。
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