01 プロローグ
「知らない天井だ…」
俺、佐々木 暁斗が目を覚ました直後、テンプレ的な発言をした。
それもそのはず。
今までいた場所と違い、木造住宅のような造りの場所にいたからだ。
「あ、気が付いた?」
そして、今俺の側には三角帽子を被った魔女っ子がいた。
「えっと、俺は…」
「あ、無理に思い出す必要はないよ。 お兄ちゃんはあのガルタイト国王によって召喚された人でしょ?」
「なんでそれを?」
「今、もうひとつのベッドで休んでるあそこのお姉ちゃんから教えてもらったの」
魔女っ子が指を指した先に、俺の知る女子生徒が眠っていた。
「ひなた…」
そう、彼女は葛野 ひなた。
俺のクラスメイトの一人だ。
「ひなたお姉ちゃんは、1週間ずっとお兄ちゃんの看病をしてたんだよ。 その傍らで私が忌み嫌うガルタイト国の勇者召喚の話を聞いたの」
事情をひなたから聞いていたからこそ、魔女っ子は今回の件を知ったんだろう。
「しかし、あの国は本当に呆れるよ。 ほとんどの国は、魔族とは友好関係を結んでるのに、ガルタイト国だけはそれに不快感を持ってるからって…」
「じゃあ、魔王を倒す為というのは…」
「あの国は根っからの魔族嫌いだからね。 魔族を滅ぼして、自分中心の世界に統一するつもりなんだよ」
聞けば聞くほど呆れてくる。
つまり、魔族は基本的に友好なのに、あの国王は敵視してると…。
「加えて勇者至上主義だからね。お兄ちゃんが勇者じゃないからってあんな呪いを掛けるなんてね」
かなり、怒気を感じる。
ていうか、呪いをかけられていたのか。 どうりで、急に意識が飛んだと思ったら…。
「お兄ちゃんにかけられたのは、睡眠系の呪いだよ。 私でも3日かかるレベルの強い呪いがかけられていたの。 放っておいたら死んじゃう可能性もあったんだから」
そこまでヤバかったのか。
魔女っ子には感謝しきれないな。
「とにかく、ありがとう」
「どういたしまして。 一応、お姉ちゃんにもお礼言ってあげてね」
「そうだな」
「あ、まだ名乗ってなかったね。 私はアイリス・ガイアブルクだよ」
「俺は、佐々木 暁斗。よろしくな」
「うん、こちらこそよろしくね、アキトお兄ちゃん」
満面の笑みを浮かべる魔女っ子こと、アイリスちゃん。
とにかく、ひなたが目を覚ますまで養生しよう。