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129 追憶その3~ひなたとザナ~

いつもアクセスありがとうございます。

(Side アイリス)


 ひなたお姉ちゃんとザナ王女の決闘直前、私は暁斗お兄ちゃんから、ひなたお姉ちゃんとザナ王女の関連性について聞かれている最中だった。

 一応、報告は聞いているみたいだけど、改めての確認という事なのだろう。 その時は私と由奈お姉ちゃんが同行していたけどね。


「で、トイレの時にひなたを襲った襲撃者の正体がザナ王女なのか?」


「正確にはトイレを済ませて出た後にだけどね。 概ねその通りだよ」


「結婚式から悪魔族の隠れ里関連の依頼が入るまでの一週間の間にそれがあったとは聞いたが…信じられねぇな」


「私もね。 まるで人が変わったかのようだったよ」


 そう、お兄ちゃんが無能扱いされてからここまでの間に私達…正確にはひなたお姉ちゃんとザナ王女は1回出会っているのだった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 時間的にはザックさんと三人娘の結婚式から3日経った時だった。

 暁斗お兄ちゃんが一時的に体調を崩してお休みすることになったので、私と由奈お姉ちゃん、ひなたお姉ちゃんとで依頼の遂行をしていた。

 その拠点としていた『マルル』の町で、ガイアブルクの城下町に帰る前にトイレに行った時にそれは起こったのだ。


「はー、すっきりした」


「今回の討伐対象の魔物…意外と手ごわかったね。 おかげでトイレに行きたくなる羽目になっちゃったし」


「まぁ、三人で挑んだからしょうがないよ。 何せBランクのモンスターだし」


 トイレを済ませて私達は今回の討伐依頼の内容の事を話していた。 その最中だった。


「ひなたちゃん! 危ない!!」


「くっ…!」


 突然、建物の影から誰かが襲撃してきた。 由奈お姉ちゃんがそれに気付き、ひなたお姉ちゃんに声を掛ける。 狙いはひなたお姉ちゃんか。

 槍による攻撃だったが、ひなたお姉ちゃんはなんとかそれを打ち払う。


「いい加減に…しなよっ!!」


 剣で防がれたことを知って距離を取ろうとした襲撃者だったが、ひなたお姉ちゃんは逃さないとして槍を掴んでそのまますぐに襲撃者ごと投げ飛ばした。


「あぐっ…!!」


 槍を手放すことができずに投げ飛ばされた襲撃者は、そのまま木に激突した。


「え…?」


「な…!?」


「うそ…、まさかのザナ王女…?」


 そして、襲撃者の素顔を見た私達は、驚きを隠せずにいた。

 何せ、襲撃者はあのザナ王女だったのだ。


「まさか、私を殺しに来たの…?」


 心当たりのあるひなたお姉ちゃんは、ザナ王女の脚を深く突き刺して格闘家として戦えなくした事を思い出していた。


「…そのつもりだったけどね…。 今の対処をされたら流石に無理よ」


 背中をさすって立ち上がるザナ王女。 それを見て剣を構えるひなたお姉ちゃん。


「もう流石にそのつもりはないわ。 町中で戦うなんてね…」


「え…?」


 戦う意思がない事を示したザナ王女に、私達は信じられないような感情で一杯だった。

 いや、それ以前にヒステリック的な感じが見受けられない。 本当にザナ王女なのだろうか? 私はそれが一番信じられないような事だった。


「ひなた…だったよね? あれから私は槍を持つスタイルに変えてあなたに挑もうとした。 でも結果がアレではね…」


「ザナ…、あんたは…」


「ひなたでその強さだから、かつて私が無能と罵ったあの男子も今では最強格なのでしょう?」


「まぁね…。 でもどうしてそれを?」


 ザナ王女とひなたお姉ちゃんの会話の中で、暁斗お兄ちゃんが今では最強格になってるのではという事を彼女が知っていた。 ひなたお姉ちゃんと同じく私もなんでそれを知っているのかと疑問を感じた。


「アンが戦死して、私が独自に失踪した勇者の動向をステルスの魔法で追手いた時、ゼイドラムで勇者の一人とあの男子が戦っていたよね?」


「あの時に、あんた見てたの…? ステルスの魔法を使って…」


 ゼイドラムで暁斗お兄ちゃんが葛葉というかつての女担任教師と戦っていた時にザナ王女は見ていたらしい。 それを知った由奈お姉ちゃんも驚いていた。


「ホムンクルス兵士を格闘だけで全滅させて、あの女を煽るだけ煽ってから死なせる余裕もあったからね。 それを見た私は彼を相手するには無理だと分かったのよ」


「そこまで見ていたとはね…」


 あの時のお兄ちゃんの無双シーンも、ザナ王女はしっかり見ていたようで、それを見てザナ王女はお兄ちゃんと戦うのは無理と判断したようだ。


「ひとまず、私はここで撤退するわ。 父を傀儡化している安川に何をされるか分かったもんじゃないしね」


「ザナ…。 私達の決着はいつ付けられる?」


「当分先…になるかもね」


「そっか…」


 そう話し終えたザナ王女が、私達から去っていった。

 私達は彼女が去る様子を見届けるしかなかったのだ。


 その後、ガイアブルク城下町に戻った私達は、依頼の報酬を受け取ってから帰宅して、体調が良くなったお兄ちゃんに今回の事を報告したのだった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「しかし、あのザナ王女が人が変わる程、ガルタイトも変わり果てたとはな」


「安川という男が狡猾すぎて、次の手が見えないからね。 私達はあえて後手に回るしかないのが現状なんだよ」


「だろうな…。 暗殺の件もクロのおかげだしな」


「そうだね…。 あ、始まったみたい」


 私がお兄ちゃんと話をしている間に、ひなたお姉ちゃんとザナ王女の一騎討ちが今、始まったようだ。

 ひなたお姉ちゃんの勝利を…私達は信じて見届ける事にした。



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