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123 湊の死因と暗殺のカラクリ

「湊ちゃん…」


 変わり果てた湊の遺体を見て呆然とする由奈。


「まさか、こんな事になろうとはね…」


 アイリスから報告を受け、転移でクリストフ国王も来ていた。

 何人かの兵士も同行していた。


「戸締りとかちゃんとしていたのか?」


「はい、結界も張って万全にしてたんです。 なのに…」


 俺は七絵に戸締りとかしていたのかを聞いたが、戸締りをした上で強固な結界を張ったようだ。

 それなのに湊がこうもあっさり死ぬなんて思わなかったようだ。


「どうも死因はこの針による即死効果を持つ毒にやられたようだ」


「毒に即死効果はないのでは…?」


「いえ…、ガルタイトにはそういう特殊な毒を持つ草を栽培していました。 それを利用したんでしょう」


 クリストフ国王が兵士によって解明した湊の死因を報告すると、すかさずひなたがツッコミを入れるが、クリスタからは意外な内容を伝えていた。

 そう言えば、クリスタは元はガルタイトの王女兼ホムンクルスだったな。

 しかし、ガルタイトがまさか即死効果を持つ毒草を栽培していたとは…。

 とりあえず、ここは七絵達を王城へ保護し、湊の遺体もそこで保管されることになり、俺達はというと、家を出て気晴らしに散歩することになったのだが…。


「そうなると、後はどうやって湊ちゃんを殺したか…だね」


「うん、多分安川が絡んでいるとは思うけど、結界を張ってる家にいとも簡単に侵入できるなんて考えられないよ」


「うーむ…」


 話題は湊を殺した犯人についてばかりだった。

 確かに結界を張った家は、許可した相手以外は入れないようになっているはずだが、それを無効化して侵入するとなると…。


「お兄ちゃん、結界は無効化できないよ。 術者が解除しない限り。 だから無効化は考えられないよ」


「いや、安川ならありえるはずだ。 一時的に無効化とか…すり抜けとか」


「そんな事は…」


「流石ですね。 その通りですよ」


「誰だっ!!」


 アイリスと言いあっていると、別の声がしたので、怒気を交えながら振り向くと、そこには仮面を被った黒衣の少年が立っていた。


「お前は…!」


「私はあなた達と戦うつもりはありません。 今回の暗殺のからくりを教えに来たのですが…的中させるとは恐れ入りました」


 黒衣の仮面は戦うつもりはないと言っているが、怪しさは満載だ。

 それに…


「戦うつもりはない? 悪いが騙されるわけにはいかないな。 お前、安川を模したホムンクルスの一体だろ」


「え!?」


 黒衣の仮面から漂う安川の魔力で、俺は安川を模したホムンクルスの一体ではと推測していた。

 それを聞いたアイリス達は驚きの声をあげていた。

 何せ、安川が作ったホムンクルスがこの町にいるのだから。


「肉体的にいえばその通りです」


「肉体的…?」


「もしかして転生者? しかも魂がその肉体に憑依したタイプの…」


 肉体的という事に違和感を感じた由奈、同じく違和感を感じて質問をしたひなた。

 そして返ってきた答えは…


「ええ、そうです。 私は元会社員でした。 事故で死んだあと、神と名乗る者に転生させられたのですが、手違いで今の肉体に乗り移る形となってしまったのです」


 マジか。

 別の魂が安川を模したホムンクルスに乗り移る形での転生なんてありえるのか…?

 アイリスの親戚の家族みたいに赤子からじゃないパターンは初めて聞いたぞ。

 後ろにいるエミリーやクリスタも驚いているみたいだ。

 黒衣の仮面は、さらに話を続ける。


「私が目を覚ましたのはガルタイトのある部屋でした。 そこには同じ顔の存在がかなり多く存在していました。 そこで、ああ自分は人ではない何かに乗り移ったのだなと確信し、動くことにしました」


「それで、動いたのか?」


「ええ、まるで自分の身体のように。 それである部屋のドアが開いてたのでこっそり見たのですが、私が目覚めた際に見た顔の男がある王族の血を使って同じ顔の人間を作ってましたね。 それで更に確信に至りましたよ。 あの男がオリジナルだと」


「やはり本物はガルタイトにいたままか」


「そうです。 何人かを生み出した後、去っていった所にメモとある布が落ちてたので拾いました。 それがこの布です」


 そう言って黒衣の仮面は、布を差し出してきた。


「布っていうよりは…マントみたいだね」


「高い魔力を纏ってるみたいだけど…?」


 その布を見て、クレアとエミリーがそれぞれ感想を述べていた。 高い魔力が纏っている布だという事は…?

 嫌な予感がしてならなかった。

 俺の結界のすり抜けの説を、黒衣の仮面が正解みたいな事を言っていた理由がその布にありそうだったのだ。


「鑑定が使えたので、それを鑑定した結果、オリジナルが作った特殊なマントでした。 効果はステルス効果だけでなく、壁や結界などあらゆる通行不能の存在ですら簡単にすり抜ける事が可能なものです」


「うそ…! じゃあ、さっきの暗殺も…!?」


「その通りです。 オリジナルと同じ顔のホムンクルスの一体にそれを着用させ、結界を張った家をすり抜け、湊さんを暗殺したのです。 トリカブトともう一つの毒草を組み合わせた毒を込めた針で」


「そういう事だったのか。 その布が…可能にさせたのか」


 やはり安川が絡んでたのか。

 しかも結界や壁をすり抜ける効果を持つ布を作るとか…もしかして奴は…。

 

「ユニークスキル持ちかも知れないね。 それが事実だと厄介だよ。 現に結界をすり抜ける布を作るんだから」


 アイリスも不機嫌な表情でそう言い、由奈もひなたも無言だが、相当怒りを抑えられないようだ。


「結界のすり抜けは防ぐ手立ては無いですが、近づかれた際の対処とステルスの対処はあります」


「え!? すり抜け以外は対処できるの!?」


「ええ。 これらのアイテムを使えば可能です」


 そう言いながら、黒衣の仮面は二つの袋を俺達に差し出した。

 しかし、すり抜け以外は穴があるとはな…。

 信じがたいが、今は暗殺を防ぐために利用させてもらおう。



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追放された剣士の冒険譚』もよろしくお願いします。
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