120 ダンジョン攻略その3
「速攻で倒そう。 でないと、別の意味で悪臭に苦しむ」
「うん、そうだね。 火の魔法が手っ取り早いかもね」
アイリスがそう言いながら、無詠唱で【ファイアストーム】を放った。
やはり植物というだけあって、火の魔法には弱いようだ。
俺も火の魔法を剣に纏って、ローズオチューに斬りかかる。
斬撃と同時に火の力が襲い掛かるため、奴にとっては二重の苦しみを味わっている。
奴の触手代わりの蔦攻撃は、由奈やひなたがいなしているようだ。
「そろそろ止めだね! 【フレイムブラスト】!!」
エミリーが後方で【フレイムブラスト】を放ち、あっという間にローズオチューを灰にした。
「これで、ひとまず倒した…か」
「そのようだね。 悪臭も消えたみたい」
ひなたが言うように、倒すと同時に奴から振りまいていた悪臭も消えたのだが…。
「終わったは…いいけど、アルトちゃん達が…気絶してる」
「あー、悪臭に耐えられなかったか…。 回復させるか」
クレアから、アルト達メイジフォックスウルフが悪臭の影響で気絶をしたという話が来た。
流石のSランクの魔物も、奴の臭いには耐えられなかったのだろう。
俺は回復魔法を掛けて、アルト達を回復させた。
『むぅ、かたじけない…』
『私達としたことが…あの悪臭で気を失うなんて…』
「まぁ、仕方がないよ。 臭いに敏感だったのかも知れないし」
「そうだな。 おチビーズが落ち着き次第先へ進もう」
メイジフォックスウルフの子供たちを宥めつつ、俺達はひとまず休憩し、おチビーズが落ち着いたのを見て先へ進んだ。
その後は、虫の魔物や猪の魔物が出現したが、難なく倒した。
虫系がすばしっこいこと以外は、ローズオチュー程苦戦する相手ではなかった。
構造上なのか、この階層も多少長かったものの迷う事はなく次の階層の階段が洞穴の形として見つかった。
俺達はすぐにその中に入り、次の階層へと向かった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「また石造りか…」
「石造り、森、石造りとか…統一性がないなぁ」
「この階層、どんなのだろうね…。 魔物とか」
次の階層…第三階層は、最初の階層と同じく石造り。
だが、見た感じやや複雑そうな構造にはなっている。
気配察知による魔物の反応は、今の所なさそうだが…。
「ひなたちゃん、危ない!」
「え、きゃっ…!?」
突然、エミリーに引っ張られてたひなた。
勢いあまってか、尻餅をついてしまう。
その直後…
「ひゃあっ!!」
ひなたの目の前に突然、槍が飛び出してきた。
目の前だったこともあってか、びっくりして悲鳴をあげていた。
「マジか、突然槍が飛び出してきたのか…」
「普通に歩いてたら、ひなたちゃんが串刺しになってたって事だね…」
「あ、危なかった…。 気付いてくれてありがとうエミリーさん…」
流石に目の前の恐怖に震えたままだったが、ひなたはエミリーにお礼を言っていた。
「…ひなた、立てるか?」
俺は尻餅をついたままのひなたに手を差し伸べた。
「うん、ありがとう」
ひなたがその手を握って、ゆっくり立ち上がる。
「とりあえず、シーフの【罠察知】が必要だな。 クリスタ、頼む」
「分かりましたわ、暁斗様」
ひとまず、俺以外にシーフの素質を持つクリスタに【罠察知】の役割を頼んだ。
やはりというか、この階層は魔物が出てこない代わりに、多くの罠が仕掛けられていた。
クリスタの【罠察知】で事前に罠を回避しつつ、進んでいった。
やはり、飛び出す槍やら落とし穴がメインだったようだが…。
そうして進んでいくうちに、、奥に最後の階層へと繋がる階段が見つかった。
「ようやく見つかったか。 よし、行こう」
俺達は躊躇いもなく、最後の階層へと続く階段を下りて行った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
第四階層…いわば最後の階層にあたるこの場所には、目の前にドアがあるだけだった。
「この奥になにかあるのかな?」
「多分、ボス部屋なんじゃないかな?」
「高確率でそうだと思うよ。 気配察知してみたらかなり禍々しいレベルの存在があったから」
アイリスが気配察知で、ドアの奥に禍々しい気配を察知したことを教えてくれた。
というか、気配察知って便利だな。
「奥がボス部屋なら、このダンジョンを出るにはそいつを倒さないと出れないってことか」
「そうなるね。 とにかく奥へ行こう」
アイリスの言葉で、俺はドアに手を掛ける。
すると自動的に、ゆっくりドアが開いていく。
その中に入ると、禍々しい気配は大きくなっていった。
そこにいたのは…。
「ドラゴン…!?」
「しかも、ブラックドラゴン…! Aランクの竜系の魔物…!!」
そう、ドラゴン。
しかも漆黒に彩られた黒い竜。
それが、このダンジョンのボスとして俺達の前に姿を現したのだ。
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