119 ダンジョン攻略その2
「ブモオォォォォッ!!」
「まずい! 散開しろっ!!」
俺達が身構える前にミノタウロスは斧を思いっきり振り下ろしてきた。
ドゴォン!! という大きな音が響くほどに石の床を打ち抜いていた。
「うそぉ…! 一振りで床が割れて…!」
「サイクロプスと同様の馬鹿力持ちかよ…! しかもこっちのが斧を使ってる分質が悪い…!」
俺は悪態をつきながら、ミノタウロスに剣で攻撃を仕掛ける。
斬撃の感触からして、ひとまずのダメージは与えられるが、かなりのタフさを持ってるのでサイクロプスと比べたらすんなりとは倒せないだろう。
しかもダンジョンの通路上というおまけつきだ。
左右の壁が邪魔をしてて、戦いづらい。
だが…、チャンスはすぐに訪れた。
『アオォォォォーーーン!!』
「ぶ、ブモォッ!?」
その傍らでアルトがミノタウロスに向けて雄たけびを上げていた。
ミノタウロスの方は、うるさかったのか耳を塞いだまま苦しんでいた。
どうやら、アルトの音波攻撃が効いたのだろう。
「アルトの攻撃で奴が怯んだ! 一気に行くぞ!!」
「うん! 斧の一振りが来る前にやっちゃうよ!!」
「ボク達もやるよ! 【サンダースピア】!!」
「オッケー!! 【ストライクチャージ】!!」
「【アイスアロー】!!」
「【ファイアアロー】!!」
「【ストーンブラスト】…!」
「ブッ、ブモォォォォッ!!?」
俺とひなたの剣による連携攻撃を繰り出して大ダメージを与えた後で、由奈達の一斉攻撃が始まった。
エミリーの【サンダースピア】、アイリスの【アイスアロー】、クレアの【ファイアアロー】、胡桃の【ストーンブラスト】、そして由奈の槍技【ストライクチャージ】がミノタウロスに炸裂した。
その合間にクリスタが密かに【影縫い】を繰り出しており、反撃させないように動きを止めていた。
当然ながら防御態勢も取れないまま、ミノタウロスはそれぞれの攻撃を直撃してしまったのだ。
「ブモ…ブモォ…」
一斉攻撃によって大ダメージを受けたミノタウロスは、あのタフさはどこへやらと言わんばかりの満身創痍の状態になった。
止めを刺すなら今しかないだろう。
「久しぶりに使うか…!」
俺は剣を鞘に収め、居合斬りの構えに転じた。
そして、ミノタウロスに突進し、そのまますれ違った。
その直後にミノタウロスの身体は、上半身がずり落ちるように下半身と分断された。
「久しぶりに見たよ、【虚空】を」
ひなたはその技を知っていたので、同じように久しぶりに見たことに懐かしさを感じていた。
「すごいね、暁斗君。 そんな技を持ってたんだ…」
由奈は初めて見たのだろう。
今回の一閃技を見て、羨ましそうに見ていた。
「よし、さっさと燃やすよ。 【ファイアストーム】」
アイリスがミノタウロスの死体を即座に燃やしにかかった。
通路上なので【フレイムブラスト】では味方にも被害がでるので、一つ下の魔法で死体を燃やしていた。
「いきなりからこんな魔物が出るとはな…」
「なんとか倒したはいいけどね…。 このクラスの魔物が今後も出ると思うとゾッとするよ」
『そうですわね。 なるべく警戒を強めながら進みましょう』
俺の嘆きに、エミリーとサクラも同意する。
誰か一人を気配察知で魔物の気配を察知してもらいながら、ダンジョン内を進んでいく。
『む、あそこに階段があるな』
すると、アルトが階段を見つけたようだ。 下り階段のようだ。
幸いここまで魔物の気配はなかったようだ。
この階段が、次の階層への階段なのだろうか?
「本当だ。 次への下り階段なのかな?」
「行ってみようか?」
「そうだね。 行くしかないよ」
階段がトラップの可能性もありえるのだが、今は進むしかない。
ひなたや由奈、クレアも同意したのでみんなでくっつきながら階段をゆっくり降りる。
すると、次の階層への光が見えてきた。
その光をかいくぐると…驚きの光景が飛び込んだ。
「あれ…、森?」
そう、次の階層は何故か森になっていた。
しかもダンジョンだからだろうか、上は真っ暗。
幸い、光る草が周囲を照らしていたので真っ暗と言うわけではなさそうだが…。
「石作りの階層から森とはな…。 よくわからない構造だな」
『うむ、森だとしたら植物や虫系が出るかも知れん。 十分気を付けて進まねば』
「うぅ、植物と聞くとアレを思い出しちゃうよ…」
由奈が植物と聞いて、何かを思い出したのか震えだす。
まぁ、仕方がない。
何せ、ルサルカのいる湖へ続く森の中で、マンイーターの触手に宙づりされ、一瞬だが下着丸見えにされたからな。
マンイーターはその状態のまま由奈を食べようとしていたのだからたまったもんじゃない。
「ん…? また気配が…?」
ひなたが気配を察知したようだ。
俺達は周囲を見渡しながら、警戒態勢を敷く。
「ん…、なんだこの臭い…?」
突如、悪臭が俺達を襲った。
「まずい、【ステータスロック】!!」
クレアが異変に気付き、【ステータスロック】という魔法を俺達に掛けた。
「これで、悪臭によって体調が崩れることはなくなったよ。 臭いは防げないけど」
「うう、た、確かに…。 クレアさんが気付かなかったら気分が悪くなって倒れてたかも」
由奈が鼻をつまみながら、クレアに感謝をしていた。
俺達は臭いの元へ視線を向けると、マンイーターをより不細工に作られたような花のモンスターだった。
「ローズオチューだ…。 これはBランクの魔物だけど、悪臭を振りまくから厄介なんだよ」
アイリスも同様に鼻をつまみながら、魔物の説明をした。
「なら、悪臭を断つにはまずこいつを倒さないとだめか」
あのローズオチューが放つ悪臭に耐えつつ、俺達は戦闘態勢に切り替えた。
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