101 ガイアブルクへの帰還、そして…
カイゼルさんの解呪の後にすぐにガイアブルクへ向かう予定だったのだが、予定を変更して俺達はそのまま宿に泊まることにした。
流石に三つ同時の解呪は身体に堪えたみたいで、休ませた方がいいというクロウ中佐からのお達しだった。
みんなに心配を掛けさせるわけにはいかないので、そこは素直に従う事にした。
宿のベッドはフカフカだったので、すぐに眠ることができた。
安眠効果があるんだろうか?
なお、目覚めたときには由奈とアイリスが下着姿で俺を抱き枕にして寝ていたことは内緒だ。
そしてその翌日に、エミリーさん達を含めたみんなで軍用バスに乗って『エルオー』を出て一路ガイアブルクへ向かう事に。
なお、エミリーさんや由奈などの乗り物に弱い人には先に酔い止めのクッキーを食べてもらっている。
近道を通ってガイアブルクへ行くには、デコボコ道を通る必要があるのだ。
軍用バスでは揺れてしまうので、酔いやすい人には厳しいのだ。
「エミリーさん、由奈は大丈夫か?」
「うん、ボクは大丈夫だよ」
「私も。 あのクッキーの効果は絶大だよね。 しかも美味しいし」
あの酔い止めクッキーは二人には好評のようだ。
俺は乗り物に強いから、食べる機会はなさそうなんだよな。
「ガイアブルクに残ってる後輩達も頑張ってるだろうか?」
「そうだね、ヘキサ公国の件で気が回らなかったけど、後輩達大丈夫かな…」
「あの子たちの大半は勇者の素質を持ってる上に、経験もしっかり積んでて強くなってるから大丈夫だよ」
「だといいけど…」
確かに後輩達も強くはなっている。
それは俺でも実感している。
それでも不安が拭えないのは、追手の件だ。
俺達のクラスメイトの大半が死んだのだが、ガルタイトには後輩にとっての敵…安川 凶がいるからだ。
あいつが向こうにいる限り、後輩たちが安心して暮らせない。
それにどういう強さを持っているかも出会わないと分からない。
「暁斗君の懸念も分かるよ。 多分、後輩たちにとっても…胡桃ちゃんにとっても壁である存在…安川という存在がいるからね」
「ああ、奴がいつ追手として現れるか…。 それによるのかも知れないからな」
「仕掛けるとしたら、今のタイミングで仕掛けるんじゃないかな? あのザナもアンの死から立ち直ってるかも知れないし」
「その予感はしているさ…」
「暁斗様…」
ひなたと由奈と後輩の事で話しているのを聞いたクリスタが不安そうに俺を見つめる。
彼女も後輩達が心配でたまらないのだ。
「とりあえず、俺達がガイアブルクに着くまで追手が来ないことを祈ろう」
「ん…」
クリスタと同じく不安がる胡桃の頭を撫でながら、こう言った。
実際にこういうのは運ゲー要素が強いものだから…。
「もうすぐガイアブルクに着きますよ。 降りる準備をしてくださいね」
運転手からもうすぐガイアブルクに着くというアナウンスが入った。
俺達は荷物などのチェックをするなど、いつでも下車できるようにしていた…その時。
「ひなた、どうした?」
ひなたが窓の外をジッと見ているようだったので聞いてみた。
「窓の外から見える影…後輩達じゃない?」
「ホントだ…。 【鷹の目】を使ってみたら七絵ちゃんたちが西地区の門の前にいるよ」
「そういえば、由奈が【鷹の目】を使える理由を聞くの忘れてたな」
「そうだったね。 落ち着いたら話してあげるから」
俺も【鷹の目】で見てみたら、確かに七絵達が西地区の門の前にいた。
しかもみんな殺気立っている。
予感が的中してしまったのか?
軍用バスは、西地区の城壁に止めて俺達はそこから後輩たちのいる場所に向かって行く。
「あ、先輩達」
俺達に気が付いた七絵が声を掛けて来た。
「どうしてここにいるんだ? しかもみんなピリピリしているし…」
雰囲気がピリピリしている理由を七絵に聞いてみる。
すると…
「来るんですよ、追手が。 先輩達に教えてもらった気配察知で探ったら、その中にあの安川 凶の気配もあったようでして…」
「奴が来るからか…」
「笑えないレベルで予感が的中したね…」
理由があの安川 凶を含んだ追手部隊がくるという事で、予感が当たる。
それをアイリスが苦笑する。
「来ます…!!」
七絵が身構える。
現れたのは、ホムンクルスの兵士30人とクラスメイト2人と後輩達のクラスメイト4人…。
そしてそのうちの一人の安川 凶という男が今、俺達の前に姿を現した。
よろしければ、評価(【★★★★★】のところ)か、ブックマークをお願いします。