昼休み 【月夜譚No.20】
生徒達が廊下を行き来する中、少女は弁当の入った手提げの持ち手を握り締めた。号令の声が聞こえて俯き加減の瞳を僅かに上げると、目の前の教室から丁度出てきた男子二人組が驚いたような表情で戸惑いながら学食に向かっていく。すぐ後に女子生徒が廊下に片足を出し、少女の顔を見ると何かに気づいたように中へ取って返した。
ふと視界に入った自分の毛先を指で摘み、今更ながらトイレで鏡を見てくるのだったと後悔する。すると一人の男子生徒が顔を覗かせたので、少女は髪からぱっと手を放した。
後ろからついてきた野次馬であろう数人のクラスメイトを軽くいなし、少年が少女に歩み寄る。少女が手提げをそっと掲げると、少年は優しげに微笑んでみせた。
本当は教室まで来ようかどうしようか悩んだが、やっぱり来て良かった。少女は教室から手を振る先程の女子生徒に、小さく手を振り返した。