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悪役令嬢、おばあちゃんの知恵で大聖女に?! 〜『医者の嫁』ライフ満喫計画がまったく進捗しない件〜   作者: 小早川真寛
3章 黒竜編

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嵐と共に来る男爵令嬢

「ちょっとディランを出しなさいよ!!」


 その日、診療所が開診するやいなや受付に現れたティアナは鬼のような形相で私にそう叫んだ。相変わらず本性を現すと、ピンクゴールドのフワフワとした髪の毛は逆立っているように見える。


「ディラン様は診療所にはいらっしゃいませんわ」


 温泉宿の経営状況を確認するために度々温泉宿を訪れているディランだが、毎日駐留しているというわけではない。どちらかというとエマやオリヴィアの方が訪れている回数は多い方だろう。


「いる! いない! の問題じゃないの!出して」


 私を魔法の道具か何かと勘違いしているのだろうか……。私は大きくため息をついた。


「何がありましたの?」


「何が……じゃないわよ! 私の城が売られそうなのよ!!」


 ティアナが経営している城ホテルを訪れてどれくらいの日時が経っただろう……。半年もせずに既に自分の物にしかけているディランの手腕に驚かされる。


「売られそう……と仰いますと?」


「まぁ、あんたには分からないかもしれないけど、城をホテルとして改装するためにちょっとばかり借金をしたの」


 見栄や外聞があるのだろう。色々と回りくどくティアナが説明した話をまとめるとこうだ。


 城ホテルの改装資金を金貸しから借りたところ、その借金が筋の悪い所に流れてしまったという。当初、金貸しは「返していただくのはいつでも結構ですよ」と言っていたが、実は期日が決められておりその期日が過ぎてしまったという。

 その借金を『悪い筋』からディランが買い取ったらしく、ティアナ達に城を出て行くように要請しているのだとか。


「最初はディランが現れて、私のために借金問題を解決してくれたかな――無理やりディランルートスタートかしら?なんてビックリしていたのよ。ところが何?借金が返せないならば城を明け渡せっていうじゃない!」


 おそらく『悪い筋に流れた』というのもディランが仕組んだことなのだろう。勿論、それを明かしたらディランだけでなく私の身にも危険が及びそうなので、あえて口にしない。


「私、悔しかったけど『ディラン様と結婚して差し上げますわ』って言ったの。ほら、そしたら全て上手くいくじゃない?それにロマンス小説の王道でもあるでしょ?借金の代わりに結婚するやつ」


 どんなロマンス小説を彼女が転生前に愛読していたのかは疑問だが、ティアナと結婚するためにディランは借金問題を解決したと思ったらしい。


「そしたら、『それは結構です』って言うのよ!! この私が! このキュートで小動物みたいなフワフワのピンクゴールドヘアの私が逆プロポーズしているのによ?!」


 『どきどきプリンセスッ2』のゲーム内では、メインヒロインである彼女。頑張れば大抵の攻略対象とハッピーエンドを迎えられるように設定されている。そして黙っていればピンクゴールドヘアの彼女は確かに小動物のようで庇護欲を刺激されるといっても過言ではない。あくまでも「黙っていれば」だが……。


「お話が長くなりそうですので、温泉宿でお待ちになってくださいませ。午前の診療が終わりましたら、直ぐに伺いますから」


 私は小さくため息をついて、彼女を診療所から追い出すことにした。おそらくディランを出して欲しいというよりも、愚痴や不満を聞いて欲しいのだろう。


「直ぐにだからね! 絶対よ?!」


 診療所を出る最後の瞬間まで、そう念を押してティアナは出て行った。




 最大手の商会で務めているだけあり、ディランの情報の収集力は凄い。午前の診療が終わる前に彼は診療所に姿を現していた。


「ティアナ嬢が来たって聞いたんだが……」


「えぇ、いらっしゃいましたわ」


 私は疲れた笑顔を彼に向けた。城ホテルを取り上げることは彼の商売だから口は出すまいと思っていたが、正直巻き込まれるとは思っていなかった。


「今、温泉宿で待って下さっています」


「すまない。商会にも来たみたいなんだが、たまたま居なくて」


「いいんですのよ。でも……本当にティアナ様の城を手に入れられるつもりですの?」


「こんなに簡単にいくとは思っていなかったけどな。まぁ、あれだけ杜撰な経営をしていたら、時間の問題だったぞ」


 一生懸命に言い訳をするディランに私は小さくため息をつき、ディランと共に温泉宿へ向かうことにした。




 烈火のごとく怒りをぶつけられるだろう……と憂鬱な気持ちで、温泉宿の一室の扉を開くと、そこには思わぬ光景が広がっていた。なんとベッドの上に横たわる女性にティアナがマッサージを施していたのだ。


「あら、ディランも連れてきてくれたの!ありがとう!」


 診療所で見せたヒステリックな態度とは異なり活き活きとした表情を見せながら私達をティアナは出迎えてくれた。

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