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悪役令嬢、おばあちゃんの知恵で大聖女に?! 〜『医者の嫁』ライフ満喫計画がまったく進捗しない件〜   作者: 小早川真寛
3章 黒竜編

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大根おろし汁湿布~ニキビにはコレで決まり!~

6月17日51話『【⠀キースのメモ】梅関連商品の作り方』を追記致しました。

「どうしましょう!グレイス様助けてください!!」


 その日の午後、診療所にかけこんできたのはエマだった。週に三度は温泉宿に訪れる程ヘビーユーザーの彼女。健康の悩みもこの診療所に来てくれるのだが……。


「見てください!これ!ニキビ!!」


 そう言って彼女が指さしたのは頬に大きくできた一つのニキビだった。


「あら、痛そうですわね」


「これ魔法で治していただけませんか?」


 私は静かな怒りと共に彼女を睨みつける。


「回復魔法をなんだと思っているんですか!」


 


 診察の受付が終わった数時間後、私は酒場で大根おろしを作っていた。


「大根おろしの汁は脂肪を分解する働きがあるので、化膿してしまったニキビには効果的なんですのよ」


 清潔な布におろし汁を浸し、彼女の頬に当てる。


「あとホウレン草のゆで汁もオススメですわ。肌の油を乳化させてくれる働きがございますの。肌荒れにも効果的でしてよ」


「でも……明日、縁談が持ち上がっている方との顔合わせなんですよ」

 

 確かにこれらの方法は肌荒れやニキビには効果的だが、決して即効性があるというわけではない。


「清潔にして温泉に入ったら、きっと治りますわ」


 私はそう言って彼女の頬にそっと手を当てる。こっそり早く治るよう念じておいたので、明日の朝には綺麗になっているだろう。


「顔合わせの相手ってどんなイケメンなのぉ?」


 興味津々といった表情でそう聞いてきたのはオリヴィアだった。エマ同様あの日から週に二~三回ほど温泉に遊びに来るようになった。問題のフレデリック達だが温泉宿で拘束することは諦めており(何度かチャレンジしたが失敗したらしい)、追跡して居場所を突き止めようとしたらしいが、火竜になって飛んで行かれると跡を付けられずにいるらしい。


 おそらくそれが全て分かっていてオリヴィアは、温泉宿に来るし酒場で殺気立っている冒険者らを無視しているのだろう。


「伯爵なの。イケメンだけど奥様を亡くされていてね」


「え~~超スゴイ!! 玉の輿じゃないの~~」


 豪商の娘であるエマ。その財力から貴族の令嬢とも対等に交際することができているが、結婚となると別だ。結婚歴がある伯爵とはいえ貴族と結婚するのは、本来ならば非常に難しい。


「奥様が亡くなられる直前に出産されたお子様がいらっしゃってね。うちの子と同い年で仲がいいのよ~~。何度か我が家でも遊んでいたことがあるの。一緒に遊ぶうちにお母さんと勘違いされちゃってね――。縁談のお話をいただいたの」


 さも偶然を装っているが、おそらく伯爵の息子ということが分かっていて近づいたのだろう。そしてあたかも自分が母親であるかのように、ふるまいお見合いに漕ぎつけたに違いない。さすがだ。


「え?! エマって子持ちなの?」


 オリヴィアは目玉が飛び出んばかりに驚く。確かに頻繁に温泉を訪れるエマはいつも身軽で、子供の気配などみじんも感じられない。


「そうなのよ――ひどい男に遊ばれてね――」


 色々なエピソードが改変されているエマの波乱万丈の人生を聞き、オリヴィアは素直に涙ぐみながら、うんうん、と聞いている。どういうわけかこの二人は非常に気が合うらしい。


「でも大丈夫!今度の縁談のお相手である伯爵様はちゃんとした方だから」


「えぇ~~羨ましい~~」


「私の憧れだった貴族のお茶会を開く時は、オリヴィアも呼ぶわ!」


「やぁ~~ん行きたい~~」


 貴族の婦女子が集まるお茶会にオリヴィアが参加する姿……を想像して吹き出しそうになるが、もちろん公爵令嬢として鍛えられた腹筋と表情筋でなんとか抑え込む。


「オリヴィアもダメな男は早めに見切りをつけた方がいいわよ。案外愛情じゃなくて、単に執着しているだけってこともあるのよ」


 男に捨てられてもなお、彼の帰りを待ち続けていたエマに言われると、非常に重みがある。


「執着しているだけか――」


「グレイス様もですわ! キース様は確かにイケメンですが、こんな貧乏な生活するぐらいならゴドウィン公爵にもっと裕福な貴族との結婚を勧めていただいた方がいいんじゃありませんか?」


 エマはキースさんが第一王子ということを知らないから、そういうのだろう。だが、もしキースさんがただの平民だったとしても、この選択は変わらなかったに違いない。


「エマ、お見合い前に少しはしゃぎすぎではありませんこと?」


 悪役令嬢時代に鍛え上げられた凄みを効かせながら軽く彼女を睨む。なぜか隣にいたオリヴィアまで一緒になって「ひぃ」と小さく悲鳴を上げた。


「私はここに来て十分、幸せですわ。公爵令嬢時代よりも私自身を必要としてくれる人がいるんですから」


 その私の言葉にエマは決して納得していないという表情だったが、私は気にしない。私の幸せと彼女の幸せは違うのだから。


「でも――」


 何か言いたそうなエマの言葉を


『グレイス!!』


 というコロの言葉が遮った。


『村長がお前に至急、話したいことがあるらしい』


「あら……。なんでしょう」


 村長から直々に呼び出されることは非常に少ない。私は慌てて席を立った。

【御礼】

多数のブックマーク、評価をいただき本当にありがとうございます。

最終章へ向けた『黒竜編』スタートです。


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