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悪役令嬢、おばあちゃんの知恵で大聖女に?! 〜『医者の嫁』ライフ満喫計画がまったく進捗しない件〜   作者: 小早川真寛
2章 精霊編

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モフモフハーレム形成中?!

 二十畳ほどある部屋を診療所としてあてがわれたはずだが、常に狭い。原因はいくつかあった。


 一つは意外に診療所を訪れる獣人が多いことだ。気軽に診療所を利用できるという点が大きかったのだろう。さらに商人や冒険者らが利用することもあり、休日明けには診療所前に長蛇の列が出来上がり、早速番号札を導入したほどだ。


 二つ目の理由は鹿神・イスラとフェンリルのせいだ。何故か彼らは診療所に待機している。イスラは


「自分が言い出したことだから」


と受付で患者を簡単に診察し業務を手伝ってくれている。最初は彼女の存在に脅える住民が多かったが、私が丁寧に説明すると誤解だったことが分かり直ぐに打ち解けたようだ。フェンリルは


『グレイスが心配だ』


とワケの分からない理由で居座っている。正直、邪魔だが「邪魔だから」とは言い出せず、追い出すに追い出せない。


 フェンリルの過保護っぷりは凄く、村長の自宅で休ませてもらって以来、どこに行くのにもついて来た。夜になると『寒くないか?』と布団替わりにもなってくれている。モフモフに包まれて嬉しいが、キースさんの視線が少し痛いのが気になるが……。



 コロにフェンリルが過保護な理由について、それとなく聞いてみたが


『酒場の仕事がなければ、俺もグレイスの側にずっといるぞ?』

 

と当たり前だと言わんばかりに言い返された。


『グレイスは抜けているからな。そんないい匂いを漂わせていたら、グレイスのことを知らない獣人に襲われかねない』


 そう言われて改めて自分の体臭をかいでみるが、特にいい匂いがするわけでも臭いわけでもない。


「分からないけどな……」


『まぁ、何にしろフェンリルの旦那がいるんだ。感謝しとけ』


 モフモフが増えることはいいが、自分の預かり知らぬ危険が存在するというのは何とも居心地が悪いものだ。



 そんなコロの予想は最悪の形で実現する。


「ちょっとあんた! 大聖女だかなんだか知らないけど、べリス様だけじゃなく、フィオン様までたぶらかすってどういうことだい!!」


 全身の毛を逆立てるようにして、獣人の少女は私に向かって叫ぶ。年の頃合いは十代後半といったところだろう。茶色いショートカットの髪からのぞく耳の形からするとコロと同じダイアウルフの獣人なのかもしれない。


「フィオン様……?」


 聞きなれない名前に首を傾げると、それが彼女のしゃくに触ったのだろう。さらにキーっとヒステリックな声を上げる。


『私のことだ』


 そう言って私と少女の間にフェンリルが入り込む。ここで初めて打ち明けることだが、正直私は人の名前を覚えるのが苦手だ。貧民街でも住民や患者の名前を覚えるので必死だった。そしてこの森で生活するモフモフ達の名前……となると、あまり大きな違いがなく名前と個体を一致させられないことが多々ある。


 コロを触りたくて、見知らぬダイアウルフに抱きつき怒られたことも何度かある。そのため最近では迂闊にモフモフを楽しめなくなってしまっているというのも現状だ。


「フィオン様はね、あんたなんかが気やすく触っていいお方じゃないんだよ!」


 フェンリルに庇われている私を見て、少女は瞳に薄っすらと涙を浮かべている。どうやらこのフェンリルに対して好意を抱いているのかもしれない。


『私が好きでしていることだ』


 しかしそんな空気は全く読まずフェンリルは少女を睨みつける。そんなフェンリルに反論の言葉を投げかけたのは、少女ではなく少し離れた場所にいたコロだ。


『俺も前から気になっていた。できるなら俺もグレイスと一緒に寝たい』


 一緒に添い寝したいという意味で使っているのだろうが、そのパワーワードに思わずドキリとさせられてしまう。


「コロも一緒に寝たらいいじゃない」


 その場にいる全員の視線が私に集まる。


「だってフィオンさんは、私が夜寒くないように――って一緒にいてくれるわけですわよね?なら、コロも一緒に寝たらいいじゃない」


 個室としてあてがわれた部屋は決して広くないが、巨大なフェンリルが部屋にいる以上、コロが増えても狭いことには変わりない。だがフェンネルは何やら不満そうな表情を浮かべている。


「じゃ……じゃあ、私も一緒じゃダメですか?」


 怒りを露わにしていた少女が、今度は期待に目を輝かせて私に近づく。フェンリルはキッと少女を睨むと


『お前はダメだ』


と短く拒否し、これ以上近づくなというように顔を横に振る。


『べリスは、グレイス様の従魔だから仕方ないが、お前まで来ては他の者に示しがつかん』


「別に部屋に入るなら何匹いてくれてもいいよ?」


『ほら……。抜けているって言っただろ?フェンリルの旦那の言う通りにしておけ』


 いつの間にか近づいてきたコロが私の腰辺りを突っつき小声で注意をしてくれた。どうやら私にはまだまだ分からない獣人ルールが存在するらしい。



【追記】

第14話【キースのメモ】梅干し作り

を追記しました。梅干し作りをまとめたものです。特にエピソードに影響を与えるものではございませんが、6月中旬~7月上旬が梅干しのシーズン。よかったら作ってみてください!


【御礼】

多数のブックマーク、評価をいただき本当にありがとうございます。

次回は例の火竜が再登場?!

「続きが気になる!」「面白かった」と思っていただけるようでしたら↓から評価いただけると嬉しいです。



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