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悪役令嬢、おばあちゃんの知恵で大聖女に?! 〜『医者の嫁』ライフ満喫計画がまったく進捗しない件〜   作者: 小早川真寛
3章 聖女篇

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牛すじポトフ~ビールで圧力鍋知らず!~

『グレイス、牛の匂いがするぞ!!!!』


 コロはそう言って慣れた様子で台所に入ってくる。最近では夜になると、コロが自宅の台所にやってくることが多くなっていた。おそらくブイヨンスープを作るために使う肉の骨目当てにやってくるのだろう。


我が家が貧乏だったこともあり、おばあちゃんは『コンソメ』などの固形スープの素を使わず、鶏がらなどからブイヨンスープを取っていた。小まめにアクを取り数時間、煮込む……などちょっと手間がかかるが意外に美味しい。


まぁ正直な話、手間暇について考えると『コンソメ』が市販で売っていれば使うのだが、残念ながらこの世界の市場では販売されていない。


「今日は、牛すじを作っているからね~」


『牛すじ?!』


貧乏な我が家の定番食が牛筋だった。といっても私が生まれて少しした頃には牛筋の人気も上がり、おばあちゃん曰く「安くない」らしいが、それでも牛肉というカテゴリーではリーズナブルな部類に入る。


ただ幸運なことに、この世界では牛すじを食べる文化がないらしく、肉屋で注文したところ普通の肉を買うついでにオマケをしてくれた。つまりタダで手に入ったわけだ。


「牛のアキレス腱部分よ」


『俺達は食べるが、人間も食うのか?』


「普通に食べたら固いんだけどね。ビールに十分ほど漬けておくと簡単に柔らかくなるのよ」


おばあちゃんは原理までは教えてくれなかったが、『炭酸』が肉を柔らかくするらしい。そのためアルコールが入っていない炭酸飲料でも柔らかくなる。


『短すぎないか?』


「実は漬けすぎると逆に苦くなっちゃうの」


 一度、長く漬ければ漬ける程、美味しくなると思って漬け続けたことがあるが大失敗した。


「牛すじはその後下茹でして、アクがでてきたら、ゆで汁とアクを捨てるのよ。で残った牛すじを綺麗に洗ってもう一度、新しい水を入れて煮るの」


『スゴイ面倒だな。俺は生でも大丈夫だ』


「そうね。コロみたいな鋭い牙が人間にもあれば、美味しく頂けるんでしょうけどね」


『まぁ、調理してあっても美味しくいただけるぞ』


 台所で伏せて待っていた、コロが嬉しそうに立ち上がる。骨も好きだが勿論肉も好きなのだろう。


「骨はあげるけど、スープはダメ。野菜を入れてポトフにするんだから」


「なんで牛すじなんだい?」


 その声に振り返ると、湯上りのキースさんが不思議そうな顔をして鍋の中を不思議そうに覗いていた。髪が濡れて額に張りついているが、相変わらずイケメンだ。


「牛すじには良質なたんぱく質やビタミンK、コラーゲンなどが含まれていて骨にとってもいいんです」


「コラーゲン…ビタミン……?」


「お、おばあ様が言っておりましたわ。とにかく骨にいいんです」


 最近では前世の記憶を説明する際、なんでも亡き『おばあ様』を登場させている。


「なるほど。それで、二十人分ぐらいありそうなんだけど……」


「工場で皆さまに振るまおうと考えておりますの」


 一食の食事でどれだけ体質が改善できるか分からないが、やらないよりいいだろう。現に工場では昼休みはあるが、彼らは昼食自体を食べていない。


「名案だね。でも、いきなり肉を食べさせられたら、彼らの身体はビックリしちゃうんじゃないかな」


「え?! そうなんですの?」


「みんなは毎日、クズ野菜をすりつぶしたようなスープぐらいしか飲んでないからね。肉を食べさせてあげるにしても、少しずつ増やしていくといいかな」


 店では約一キロ近い肉を貰ってきた。さすがにキースさんと二人で食べても数日はかかるだろう。冷凍庫……いや、せめて冷蔵庫があってくれたらと思わずにいられない。


『やっぱり俺様の出番だな!!』


 コロは待っていたと言わんばかりに尻尾を振りながら私達を見上げた。



【参考文献】

白ごはん.com:牛すじの下処理とゆで方(最終閲覧日:2019年5月21日)

https://www.sirogohan.com/recipe/gsuji/


【御礼】

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