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悪役令嬢、おばあちゃんの知恵で大聖女に?! 〜『医者の嫁』ライフ満喫計画がまったく進捗しない件〜   作者: 小早川真寛
2章 精油編

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意外に無慈悲な森の主

「怒っていらっしゃいますの?」


 先ほどは『おばあちゃんの知恵』で納得したキースさんだったが、自宅に帰っても不機嫌な様子は変わらない。


「あぁ……怒っている」


「おばあ様の話をしなかったからですわね……。申し訳ございませんわ」


「違うよ。なんで分からないんだ。なんで、あんな危ないことをしたんだ。なんで俺から離れた!!」


「野草に夢中になっておりまして……」


 子供のような言い訳しかできない自分が恥ずかしく、俯きながらそう言うとキースさんはそんな私を勢いよく抱きしめる。


「一角獣の鳴き声がした時、君が死んだと思った」


 そういう彼は微かに震えているような気もする。


「もうどこにも行くな」


 キースさんに抱きしめられている――そんな、あまりにも非現実的な状況に私の脳は思考が停止した。あれ……?順調に『医者の婚約者』になっている……ようです?




 しかし幸せとは長く続かないもので、数日後には朝から珍客に怒鳴られることとなった。


「どういうことだ!!!!」


 180cmぐらいありそうなオリバーだが、この男はさらに一回り大きく2m近くありそうだ。医者の嫁として受付に来た人とは、できるだけ目を見て話したかったが、この男と目を合わせようと思うと首が痛くなる。そして、そんな大男が発する声には風圧すらあるような気がした。


「ユアンがここに居るのは分かっている出せ!!!!」


「申し訳ございませんが、ユアン様はいらっしゃいません。薬屋の方へ行かれてはどうでしょうか?」


「あぁ?! お前、隠すつもりか?! 分かった、キースを出せ。キーーーース!!!!」


 私では話にならないと思ったのだろう、診察室の奥へ向かい大声で叫ぶ。健康体な私だが、その声に耳鳴りがしたような錯覚を覚えた程だ。


「他の患者様もいらっしゃりますので、お止めください」


「うるさい!! お前は黙ってろ」


 必死で男を留めようとするが、男は私に向かい手を振りあげる。殴られる…と思った瞬間、キースさんが飛び出し、その手を受け止めた。


「本当に止めてね。それとグレイスに手をあげたら、ただじゃおかないからね」


「いるなら、早く出てこい」


「見たら分かるだろ、仕事中だ」


「俺も仕事中だ。お前らが出した依頼書のせいで、何人死人が出たと思ってんだ!!」


 その言葉にようやく彼の焦りが理解できた。




「こいつはユアンの弟で冒険者のフレデリックだ」


 ゲームには第三王子と第四王子しか出てこないので、直ぐに分からなかったが改めて見てみると銀髪のイケメンだ。ユアンの弟ということは第五王子なのだろう。遺伝子ってスゴイ。こうなると第一王子と第二王子も見てみたくなる。


「死人は出ていませんよ」


 フレデリックの怒りに、ユアンは見当違いも甚だしいといわんばかりに情報を訂正する。重傷者はいたようだが、ユアンが派遣した神官のおかげで一命はとりとめたという。


「俺達も冒険者だ。高い報酬が支払われる依頼には危険がつきものなのは分かっている」


 フレデリックによると、私達に隠れユアンは冒険者ギルドにシャモンドの採集依頼をしていたのだそうだ。


「だがな、存在もしない植物を探せというのはどういうことだ。無理をして森の深淵に踏み入れた結果、パーティーがほぼ壊滅だ」


「王都内の森……ということで、適当な編成で行かれたんじゃありませんか?グレイス様は無傷で採集されてきましたよ」


 呆れた……と言った様子でユアンはフレデリックを睨む。


「嘘を言うな。仲間が一角獣とダイアウルフを引き付けている間に、俺が一人で森の奥へ行ったが何もなかったぞ」


「小さな池の周りに群生しておりましたが……」


 あれだけ広い森だ。おそらく見当違いの場所に行ってしまったに違いない。


「俺がたどり着いたのはそこだ。だが、そんなシャモンドなんか生えていなかったぞ」


「おかしいですわね……」


「グレイス様、もしお時間がいただけるようでしたら、一度連れて行っていただけないでしょうか」


 昨日のようにユアンが熱い視線を私に送ってくる。ディランが言ったように、本当に薬に関しては人が変わってしまうようだ。


「一角獣だけでなく、ダイアウルフも出るような場所にグレイスを連れて行くのか!」


 ユアンの依頼に声を荒げたのはキースだった。珍しく椅子から立ち上がり、抗議の声をあげている。


「キース様、ご心配いただくのはありがたいのですが、このままでは私が冒険者達を使ってシャモンドを採集しようとした……と森の主に勘違いされてしまいます。ご挨拶に伺いたいと思うのですが……」


「だけど――」


「前回みたいにキースやオリバーも同行したらいいのでは?」


「俺も同行してやる」


 ユアンの提案に、フレデリックも名案だといわんばかりに提案する。よほど自分の腕に自信があるのだろう。二人の説得に、ようやくキースさんは私が再び森へ行くことを了承してくれた。

【御礼】

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