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悪役令嬢、おばあちゃんの知恵で大聖女に?! 〜『医者の嫁』ライフ満喫計画がまったく進捗しない件〜   作者: 小早川真寛
2章 精油編

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異世界版ラベンダー、S級ハーブの女王だったもよう

「こ、こ、こ、こ、これどうしたんですか!!!?」


 異世界ラベンダー・シャモンドに一番驚きの声を上げたのはユアンだった。


「森で見つけましたわ」


「見つけるって……。シャモンドを専門に探す冒険者たちがいるぐらいですよ」


「俺の知り合いがそのパーティーにいました」


 ユアンの説明を引き継いだのは元冒険者・工場長だ。


「普通、採集系の依頼の場合、最底辺のFランクに分類されることが多いんですが、シャモンド採集に関しては、魔物の巣窟に取りにいかなければいけないこともあって、Sランクに分類されているんです」


「非常に高い素材だが、万能薬として使えるので薬師達の間でも取り合いになっている程ですよ。それなのに、これだけ沢山の量……」


 グリムゾンにラベンダーの特徴を伝える時、万能薬的なことを説明したかもしれない。


「その場所は……」


「城壁の側にあるも――」


『森の中にあった』と言おうとした私の口をディランが慌ててふさぐ。


「だから……そんなに簡単に情報を垂れ流しにするな。ユアンは基本的に仲間だと思っていいが、薬のことになると人が変わる。おそらく俺達が使えないレベルで乱獲するぞ」


「それなら大丈夫でしてよ。森の主がいる間は満月の度に新しく生えてくるようですわ」


「森の主?!!!」


 今度はディランが驚きの声を上げる番だった。


「森の主の領域に足を踏み入れた人間は、容赦なく殺されるんだぞ。だからあの森の奥には様々な素材があるが、誰も取りに行けないんだ。ただの馬と見間違えたんじゃねぇのか?」


「実は俺もこの目で見たんだ」


 それまで沈黙を守っていたオリバーが、ボソリと呟く。


「絹のような美しい白いたてがみをなびかせたアリコーンがいた」


「あら、ユニコーンでしてよ?」


 私が訂正すると、オリバーは首を横に振り否定する。


「翼が生えていただろ。有翼のユニコーン、アリコーンだ」


 なるほど確かに私が知る『ユニコーン』に翼が生えていたことはない。『ペガサス』なのか……といわれると、ペガサスには角が生えていない。


「オリバーが守ってくれたのか?」


「俺が来た時には既に空高く飛び立っていた。ただグレイスは会話もしたらしい」


「会話?!!!」


「ええ、必要以上に偉そうな馬でしたが、名前も名乗られてましてよ。『民のため』ってお願いしましたら、好きなだけ持っていけって仰ってましたわ」


 私の言葉に、その場にいた全員が驚き、呆れ、恐怖、感動……様々な感情をそれぞれの顔に浮かべ言葉を失っていた。



「そもそも、グレイスは誰に『ラベンダー』の存在を教えてもらったんだい?」


 そんな気まずい空気を打ち破ったのは、キースさんだった。


「シャモンドのことを『ラベンダー』だと思って探していたわけじゃないよね?『ラベンダー』なんて植物はユアンだって知らない。『梅肉エキス』だってそうだ。俺達が全く知らないようなことを次々に思い付いて実現していく」


 珍しく問い詰めるような口調に、私は少し焦る。ラベンダーを最初に教えてくれたのは……そう、おばあちゃんだ。


「祖母ですわ」


 言ってから、あ、それは違うおばあちゃんだと思ったが、意外にもキースさん達は納得しているようだ。


「グレイスさんのおばあちゃんなら知っているの?」


 商品の袋詰めを行っていたリタが不思議そうに首を傾げる。


「グレイスの御父上は前国王の弟君で、そのご両親は前々国王にあたるんだ。その方は大聖女の生まれ変わりと言われる程の偉大な聖女なんだ」


「そうなんですの?」


「今は普通に使っている回復薬だが、その製造工程を見直されたのもグレイスの祖母君なんだ」


 それほど偉大な祖母が生存していたならば、異世界版『おばあちゃんの知恵』を授けてくれたかもしれない。


「ま、何にしろ、シャモンドのことは口外するな。大事件になるからな。これの使い道はおいおい考えて行こう」


 ディランのその一言で、短い会議が終了した。それを見計らって、静かにユアンが私の側に近寄り手を取る。


「グレイス様。ほんの少しでいいんです。これを分けていただけないでしょうか?」


 かつてない程、熱いまなざしで私を見ながら、ユアンはそう言う。


「ユアン様には、いつも本当にお世話になっておりますから、当然ですわ。定価の半値でお譲りいたしますわよ」


 軽い冗談のつもりで言ったのだが、ユアンの表情はパッと明るくなる。


「ありがとうございます!! 現在、金貨五枚ほどしか持ち合わせがございませんので、五本……いや、今から直ぐに帰ってお金を用意すれば……二十……いや、三十はいける……三十本ほどお譲りください」


 その時になりようやく目の前の大きなカゴに無造作に採集された花の価値を知ることになった。


【御礼】

多数のブックマーク&評価、本当にありがとうございます。

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