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悪役令嬢、おばあちゃんの知恵で大聖女に?! 〜『医者の嫁』ライフ満喫計画がまったく進捗しない件〜   作者: 小早川真寛
2章 精油編

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よもぎスプレー~虫対策はコレで決まり!~

「キース様にオリバー様……凄い恰好でございますわね」


 キースさんは防護服のように全身を布で覆っており、オリバーは頭まですっぽりと甲冑を着こんでいる。私が森に『ラベンダー』を探しに行くと言うと、二人がどうしても一緒に行くと言ってきかなかったのだ。


「この森は虫が凄いんだ。グレイスこそ、そんな薄着で大丈夫?」


 森に行くというので両手足が隠れるような服を着用しているが、彼らのように特別防護しているというわけではない。


「一応、虫よけスプレーを作って参りましたので。よかったら使ってくださいませね」


 私はヨモギから作った虫よけスプレーを全身にふりかける。


「凄い色だな……」


 オリバーは甲冑越しに虫よけスプレーのボトルを一瞥する。確かに炭を溶かしたような色をしており、爽やかなビジュアルではない。


「ヨモギの葉を度数が高いアルコールに漬けて作った原液を水で五倍に薄めておりますの」


 分量としては生のヨモギの葉1kgに対して、アルコールは200ml。漬ける期間は一ヶ月ほどだが、半年以上寝かせるとより効果があるといわれている。この診療所に来た時、近くの土手にヨモギが群生していたので、『絶対虫がでる』と思い作っておいたのだ。


「じゃあ、俺は使ってみようかな……」


 おそるおそるキースさんはスプレーを使うが、難しい表情を浮かべる。


「当たり前なんだけど薬ってわけじゃないから、効果があるのかないのか分からないね」


「そうですわね。でもきっと大丈夫ですわ」


 おばあちゃんの家は山の側にあったこともあり、子供の頃はよく山に入って遊んでいたが、その時いつもこの虫よけスプレーを使っていた。体温が高い子供は蚊に狙われやすいが、このスプレーを付けていると寄ってくる蚊が心なしか少ない気がする。


「オリバーも……って、それだけ着込んでいたら大丈夫か」


「でもオリバー様、さすがに虫ごときにその重装備はやりすぎじゃありませんこと?」


「虫だけじゃない」


 そう言って森の奥を睨むオリバーの視線は鋭かった。そんな彼にキースさんは苦笑しながら『森』の事情について説明してくれた。


「この森には一角獣が出るって言われているんだ」


「城壁の中なのに?」


「伝説……って言われているみたいだけどね。で、その一角獣が凄い狂暴らしい。目が合った瞬間蹴り殺されたって人もいるって噂だ」


 一角獣でなくても野生の馬が森で生息していたら、確かに危険に違いない。だから最初に私が「森に行く」と言った時、二人が猛反対したのか……。


「それでリタがよく来ていたんですね」


「そうだね。危険が伴うから、ここに来る人は少なくて、素材や食材が集めやすかったんだろうね」


 少し切ないが逆に考えると、一般的に知られていない『ラベンダー』が見つかる可能性も高そうだ。案の定、そこは『おばあちゃんの知恵』ユーザーとしては宝の山だった。『決して奥には行かないこと』と目を光らせているオリバーを横目に、私はヨモギ、ミント、ドクダミなど様々な植物に夢中になった。


 どれくらい経った頃だろう。顔を上げると空は暗くなっており、周囲にはオリバーもキースさんもいなかった。夢中で採取するうちに彼らからはぐれてしまったのだろう。


「これは怒られますわね……」


 慌てて戻ろうと思ったが、野草を集めるため道なき道を歩いてきたこともあり、どちらから自分が来たのかも分からなくなっていた。


「困りましたわね」


 さすがにアウトドア知識までは、おばあちゃんに教わっていなかったな……とキョロキョロしていると、背後でガサリと草を踏みつける音がした。


「き……」


『キース様』と言いかけた言葉が途中で失われる。振り返ったその視線の先には、目が合った瞬間に蹴り殺される……という一角獣がいたのだ。


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