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悪役令嬢、おばあちゃんの知恵で大聖女に?! 〜『医者の嫁』ライフ満喫計画がまったく進捗しない件〜   作者: 小早川真寛
2章 精油編

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虎穴に入った結果、二つの大収穫!!

 そもそもアルコール除菌スプレーに精油の香りが必要なのだろうか……ということだ。おばあちゃんが精油入りの除菌スプレーを使っていたから、当然精油がいると思っていたが、冷静に考えれば1%未満の精油よりもアルコールの方が『除菌』の役割を果たしているはずだ。


 しかし今更ながら、『工場見学は結構です』とは言い出せず、精油に続きフローラルウォーターの製造過程も見学することになった。


「こちらがフローラルウォーターでございます」


 ラルフに案内された場所は公開されている工房の裏手に存在した。清潔感のある作業場だが、来客の目に触れることはない。


「先ほども説明しましたが、植物を水蒸気にあてて精油成分を気化させ、冷ますことで油部分を採取し『精油』を作成します」


 壁からは一本の管が伸びており、そこに大量の液体が流れ込むのが見えてくる。


「その時、油ではなく水溶性の液体ができるのですが、それをフローラルウォーターと呼びます。精油ほど濃度が高くないのですが一定の効果が期待できますし、香りも豊かですので香水や化粧品などに利用しております」


 大量の植物を使って、わずかな精油を作ることを考えると、非常に多くの液体が一度に生産されているのが分かる。副産物的な存在で、利用価値が高いのも理解できるが、結局精油を作らなければ意味がない。


「これを自宅で作りたい場合は、大きな鍋を使えば簡単にできます」


「鍋?」


 私の難しそうな表情を察してか、ラルフは再び代替案を提案してくれる。


「大きな鍋にハーブと水を入れ、その上にザルのようなものを置き台を作ります。その上に容器を設置し、蓋をします」


「それだけでできるの?」


「一度沸騰させてから鍋を冷やし、蒸気が液体になり鍋のふたを伝って容器の中に集まればフローラルウォーターでございます。精油よりも簡単に作れるかと存じますが」


「色々教えてくださって本当にありがとうございます」


 アルコール除菌スプレーに精油を使わなかったとしても、フローラルウォーターならば今後様々な商品に活用できるに違いない。


「でも、こんな企業秘密教えてしまって本当にいいんですか?」


「とても懐かしい人にグレイス様が似ていたから……つい口が滑ってしまったのですよ」


 なんとも妖艶なリップサービスに、思わず苦笑いがもれてしまう。おそらく数日後、私が不在の公爵邸に情報料を回収せんとばかりに、従業員が商品を売りつけに来るにちがいない。




 大収穫を得てラルフの店を出ると、そこには所在なさげにしているキースさんが待っていた。


「お待たせしてしまい大変申し訳ございません」


「今、来たところだから、大丈夫だよ。で、どうだった?」


「ええ、大収穫がございました。それでキース様はどちらへ行っていらっしゃったの?」


「骨董市があったから見て回っていたんだ」


 広場には週に一度、露店が所せましと並び、週ごとに様々なものが販売されている。日によって、骨董、花、布、本と商品は変わっていく。


「何か掘り出し物でもございましたか?」


「古いもので申し訳ないんだけど、よかったら貰って」


 キースさんはそう言うと、私の手のひらに何かを握らせた。不思議に思いながらゆっくりと手を開くと、そこには小さな赤い石が載った指輪があった。


「キース様、こ、これ?!」


「いや、そんな深い意味じゃなくて、その……あれだ。うん、最近、人の出入りも多いし、ここに居る間だけでも付けていた方がいいかな……って」


 しどろもどろになるキースさんを前に思わず私は涙があふれてくる。長かった……本当に長かった……。


「だから、婚約指輪じゃないからな!!!!」


 指輪を握りながら涙を流す私にキースさんは慌てて弁明するが、時既に遅しだ。


【参考文献】

HerbMagazine:お鍋で作る手作りハーブウォーター(最終閲覧日:2019年5月16日)

http://www.herb-magazine.com/archives/885


【御礼】

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