ノルンとノビムとノブフの花・6
スノーフラワー→ノブフの花に変更しました。
特にストーリーに影響はありません。
混乱させてしまい申し訳ございません。
これからも「ノビムに約束の花園を」をよろしくお願い致します。
チットはここ最近の出来事をエナトと共に、思い返していた。ノビムはノブフの花を見ることを望んだ。喜ばしいことだ。
4歳くらいの頃のことだっただろうか? ノビムが花を愛でなくなったのは。
それ以前は他の女の子と同じように人形遊びやおままごとなど、エナトとよく遊んでいた記憶があった。
最近の話をしていても、過去が蘇ってくる。記憶は不思議なものだ。
「懐かしい事ね? ふふ」
エナトは笑顔で幸せそうだ。それだけでチットは自分も幸せになれるとその時、思った。
「あぁ、あの頃はエナトも元気だったな。体の不調も、そんなに無かった」
そんなに急に、遊びの趣味は変わるものだろうか。そういえば、その日あたりからだったろうか。たまにだが、ノビムが地下を抜け出すようになったのは。
なんてことを、エナトと心配したものだが、それがずっと続くと、少し気になる程度に変わっていった。
そういう性格の子なのだろう、と。
それに、只でさえ地下に閉じこもりきりならば、他の子供との関わりが断たれている状態なのだから。地下をたまに抜け出すくらいどうということは無い。他のものにバレなければ。
その分、城の外の知識を少しでも教えてあげられればと〝本〟を与えたのだ。
しかし、ノビムは女の子が好むような〝本〟を好きになることは無かったのだ。〝冒険〟やそれを読むのに必要な〝知識〟の詰まった本ばかり要求した。
「そのノビムが花をな……」
「あら、不思議でも何でもないわよ。私にはわかるわ? あの子の気持ちが何となくだけれど」
エナトは顎に手を当てて、小首を傾げながら微笑む。ベットの上からしばらく動けていないが、その表情に悲嘆の色はない。
「女同士のわかり合える何かがあるのかな?」
チットは少し不満そうに言葉を漏らしたが、そこに本気の色はない。いや、わからない事が少し残念そうではある。
「わからないのは、あなたが自由だからよ。そして強いから、かしらね」
「強いから? ますます、わからんぞ」
眉根に皺がよるほどチットは悩み始め、腕を組んでそれきり押し黙ってしまった。
「ふふ、当たり前よ。だから、わからないんだもの」
エナトは思う。どうしてこうも、自分は弱くなってしまったのか。ノビムとノルンを産んでからというもの、体調が優れないことが多かった。
それが、去年からさらに悪くなってしまった。治らないほどの病ではないが、体調が芳しくないことが続くと不安にもなってしまう。
「本当に、困ったものだわ?」
エナトにとって、子供たちとの触れ合う機会が減るのは辛いことだった。いや、親の誰もがそう思うことだろう。特に成長が著しい時に立ち合えないのは苦渋の連続だろう。
「しかし、だ。話は変わるが、勇敢と無謀を履き違えないように、ノルンに伝えることが出来たか俺は不安でならないぞ」
「あら、あなたの息子なのよ? きっとわかっているわ。ノルンも、もう5歳なのよ? そろそろ、男の子らしい所もでてきて大人のノーブフへ近づく頃よ。成長はあっという間だわ」
エナトは思い出す。ノルンはいつも、ノビムについて回るお姉ちゃんっ子だったことを。
「ノルンも、成長したのはわかる! しかし、しかしだ! ちと、寂しくもあるな」
「あらあら、親なんですもの。それは、当たり前よ。お義母様も、きっとあなたの事をそうやって見守っていたはずだわ?」
「む、ちょっと恥ずかしいな」
「お母さんっ子ですものね。あなたは」
「それを言われると、ちと辛い。が、事実だからなぁ」
二人はまだまだ、語り足りなかった。時間はどれだけあっても足りないのである。子について語ることに、無駄な時間などない。
そんな二人が語り合っている最中に、ノルンとノビムが部屋からいなくなっていた。しかし、二人がそれを知るのは夜中になってからであった--。