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童貞、父になる。  作者: あきのなすび
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re;start

2016年3月、世間は冬の厳しい寒さから解放されつつある時期に僕はまだ当分この寒さから逃れられそうにない。


高速道路を走る父の隣、最悪だと心の中でひとりごちる。

2時間少しさっさと寝てしまおうと思うがなかなか眠れない。


仕方なくどうしてこうなったか思い返すことにする。


家賃5万円7畳の住み慣れた部屋を引き払わなければならなくなり山梨の実家に帰ることになったのだ。


その理由は僕が仕事を辞めたことに起因している。

詳細を語るのは少しばかり長くなりそうなので簡略に僕のしょっぱい人生を交えながらたかろうと思う。


遡ること4歳、5歳だったかも知れないが、その頃僕は少し早めの初恋を経験した。恋と呼ぶには幼すぎるその感情は驚くことに20年近く経っても薄れることは無かった。


その少女の名前は松野麻衣といい花のようにきれいに笑う誰にでも好かれるようなそんな子だった。実際小さい規模であったが我が小学校の同級生の半分近くの初恋が彼女だったのだ。誰が言ったか、初恋は叶わない。そりゃあそうだろう、そんな子が都合よく自分を好きになることなんてあり得ない。


それでもその思いを捨てることが出来ずに中学、高校と時は流れてしまった。時間が忘れさせてくれるとかどこ情報なんですか、と思わずにはいられない。


大学に入ってもそんな鬱屈とした精神でなんとも地味なキャンパスライフを送ってしまった。友達はいた、ただ彼らのせいでオタクの道へ踏み入れてしまったので感謝の心はあるようでない。彼女も1人だけ出来たがあまり長続きすることはなかった。


就活では有難いことに某アニメ会社から内定を貰い働くことになった周りから散々ブラックだと忠告されたが根拠のない自信があった。


大変な仕事だとは重々覚悟していたし何より好きなアニメに携われることに喜びと高揚感を感じていた。

だが半年後にはそこから身を引くことになった。確かに学生時代より大幅に睡眠時間は短くなり覚えることもやる事も多く大変だが仕事を辞めたのは上司と上手くいかなかったからだ。


それからは学生の頃のバイト先で厄介になりやりくりしてたがそんな状況が両親に伝わらないわけがなく実家に連れ戻されるということになった。


元々アニメ会社に就職することに公務員のお堅い両親はよく思ってなく生き生きと自論を捲し立てられ、なくなく実家に戻ることを受け入れた。


「海斗、もう着くぞ。」


父の言葉に目を覚ますと懐かしの街並みに、戻ってきてしまったかと複雑な気持ちになる。


この先どうするか、どうなるのか、完全にノープランで目の前の道なんて何も見えない真っ暗闇。


自分の人生はとっくの昔に行き止まりの袋小路に入り込んでしまったような感情を抱えたままこの生まれ育った町からやり直すことになる、自分の人生を、自分のために。


ーーre;start



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