【急募】前衛職の方!
わたくしは魔女フローリア。
大切な、大切な、花嫁修行の途中なの。
わたくしはもうすぐ愛しい旦那様と婚姻を結ぶの。
魔女ならば皆、一度は指に嵌めてみたい婚約指輪。
わたくしとあの人の薬指に輝く稀少な指輪。
愛と幸福と夢と希望をあしらった、魔女の彫金する指輪。
ああ、ああ、ありがとう、旅の人!
これがないと奇跡の婚姻ははじまらない。
『愛の欠片』は炎の吐息。
『幸福の欠片』は水を切り裂く。
『夢の欠片』は踊る角。
『希望の欠片』は微風に拐われる。
欠片を沢山集めてくれたのね。
これで魔女の婚約指輪ができるわ。
さぁ、この錬金の壺に入れてくださいな。
魔女の錬金をご覧に入れましょう。
偉大なる魔女クロワーゼの加護があなたにありますように……
【クエストを達成しました。】
【達成報酬:花嫁魔女のエンゲージリング×1】
◇
ついに……!
ついに手に入れました……!
「花嫁魔女のエンゲージリングー!」
「良かったねぇ、ナノちゃん!」
「うん!」
引き継げて良かった旧サーバーのアバター!
集めて良かった花嫁魔女装備!
これで念願の花嫁魔女装備がこれでフルコンプとなりました……!
うきうきしながら、私は装備一覧を眺める。
花嫁魔女シリーズの名前が輝いて見えるよ〜!
「ねぇ、ナノちゃん。せっかくだから花嫁魔女の装備見せてくれるかしら」
「いいね! 俺も見てみたい!」
「俺も興味あるな」
ソルティにクエスト達成報告をしたあと。
パーティのみんなもイベント素材を集め終わっていたみたいなので、みんなで引き換えに来た教会。
私が達成感を噛み締めていたら、乙さんを筆頭に花嫁魔女装備コールが!
まぁ……ね?
私もまんざらじゃないのでしてね?
こうまで苦労したイベントですから!
装備したくてしたくてたまらないわけでして!
「ではご覧ください! これが花嫁魔女装備です!」
――――――――――
Name:ナノ
HP4350:ST1400:MP4125
アイテム重量1.375/1.400(kg)
称号ランク
白魔導師SS
装備
頭・花嫁魔女のヘッドドレス(生命力+14、調合+6、恒常スキル:花嫁魔女の花冠:調合成功率が+5%)
胴・花嫁魔女のブローチ(回復+14、恒常スキル:花嫁魔女の心臓:自然HP回復量×1.2倍)
腕・花嫁魔女のエンゲージリング(治癒力+7、精神力+2、恒常スキル:花嫁魔女の祝福:生活スキルを使用すると成功率が+10%)
腰・花嫁魔女のドレス(神聖+13、恒常スキル:花嫁魔女の刺繍:魔法耐性×1.2)
足・花嫁魔女のミュール(筋力+12、恒常スキル:花嫁魔女の道標:移動速度×1.4倍)
アクセサリ1・花嫁魔女のヴワル(破壊+9、暗黒+10、恒常スキル:花嫁魔女のはな唄:歌スキルによるデバフ耐性×1.2)
アクセサリ2・花嫁魔女のフラワーシャワー(召喚+9、暗黒+10、恒常スキル:花嫁魔女の聖地:魔法詠唱中最大10秒の無敵状態付与)
武器1・花嫁魔女のブーケ(魔技+5、暗黒魔法スキル:花嫁魔女の愛:低確率で対象を即死させる)
――――――――――
うーん、可愛い!
ウェディングドレスってやっぱり女の子の憧れなのです。
自分のリアルの顔じゃドレス負けしちゃうけど、ゲームの「ナノ」ならこんなにも可愛く着こなせるなんて!
「どうかな、乙さん!」
「やだっ、すっごく似合ってるわナノちゃん!」
「えへへ、ありがとうございます」
念願かなってうきうきしちゃうのは仕方ないよね。
乙さんと二人、きゃあきゃあいいながら花嫁魔女装備のどこが可愛いとか、あそこが可愛いとかを言い合う。
「ナノちゃん、きれー……」
「しーさん、告白するなら今じゃね?」
「ふぁ!? なっ、やっ、告白……っ!?」
「撫子、無理強いはよせ」
なんか男子もわーきゃーしてるみたい?
あ、そういえば。
「花嫁魔女装備って、男の人が着るとどうなるんですか?」
「ん? ちょっと待っていろ」
パーティの中で唯一の男性アバターのスイさんが、装備を身につけてくれる。
うわぁ、これは……!
「やっだ〜! スイさんったら男前じゃない!」
「わぁ、かっこいいですスイさん!」
「そう……だろうか?」
男性用の花嫁魔女装備は花婿さんだ!
白いタキシードがかっこいい! ブーケの先に剣がついててかっこいい! すごいすごい!
「ナノちゃん、スイさん、並んでみて?」
「あ、はい!」
「こうか?」
「すっごくいいわ〜! スイさん、ナノちゃんをお姫様抱っこしてみて!」
「わぁっ」
「これでいいか?」
「やだもう眼福〜! お二人とも幸せに〜!」
乙さんがめちゃくちゃテンションあがっちゃってる……!
かくいう私も、ちょっとこれは照れちゃうな……!
スイさんにお姫様だっこしてもらえるなんて!
「な、ナノちゃん〜!」
「しーさん、どんまい」
しーを撫子さんが慰めてるっぽい?
まぁ、そういうこともあるでしょう。
散々装備を楽しんだ私は、落ち着くともとの装備に戻してしまう。
「ナノちゃん、もとの装備に戻しちゃうの?」
「うん。イベント装備はイベント装備だしね。強いけど、私にはいらないスキルとかもあるし。新しい装備の構成がちゃんと決まるまでは今まで通りにするつもり」
そうそう、装備。
エアレーからでたキルクィトスコルヌの杖もあるからね。今の装備はヒーラー用だけど、戦闘用にキルクィトスコルヌの杖を主軸に置いた構成に作り直してみるのもありだと思ってる。
ふふ、やりたいこと、やってみたいこと、まだまだ沢山あるなぁ。
「ねぇねぇ、しー」
「なに、ナノちゃん?」
「花嫁魔女イベントが終わったら次は何が来ると思う?」
「え〜、新しいイベント? 早くない?」
しーがちょっと渋い顔になる。まぁ花嫁魔女のイベントはレイドを組む大型イベントだったからね。ちょっとめんどくさいな、と思っちゃったりしたよね。
でもさ、次はさ。
「新規マップが来るって! 楽しみだね!」
そうなんです、次は新規マップがくるのです!
ですが、その前に……
私はみんなを見渡す。
森の弓兵・†nadeshiko†
ハンター・sui
魔獣奏者・oto
宮中調合師・シー
そして私、白魔導師・ナノ!
ギルド『ガーデンナイツ』、パレヒスVRにて前衛職を募集します!
通常クエストも私が前衛は嫌だからね!
【パレスセレスト・ヒストリー 〜強くてニューゲームしたのに、ヒラ職の私がパーティー最大火力ってどういうことですか?〜 完】