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リベンジの結末

 制限時間はあと五分!

 エアレーの攻撃もますます激化してきた。


 ブレイクした時ほどじゃないけど、エアレーの怒号の確率も上がってきてる……!


 前衛が復活したので、私もサポートに戻る。

 数少ないタンクも復活したから、リズムを崩さないように注意して、タゲ取りをスイッチしてもらう。


 残り時間、あと三分。

 ゲージはまだ半分。

 削り切るには火力が足りない……!


「ナノちゃん! 私も攻撃に入るわ!」

「乙さん!」


 乙さんが声を張り上げる。

 それから結晶を一個取り出して。


「これが私の取っておき……! いらっしゃい、ブラックドラゴン!」


 わぁー!

 エアレーに匹敵する黒い竜が現れた。

 これ、もしかしてこれ!


「召喚士向けレイドクエの、MVP報酬の……!」

「そうよー!」


 旧サーバーでテイマーの人たちが復刻を待ち望んでいる、黒竜イベントのレイドボスモンスター!

 テイマー向けのイベントらしく、レイドでMVPとれた人にだけ黒竜の卵が報酬で貰えたのだとか。


 孵化して育てると強いって聞いたことあるけど、乙さんここまで育ててたんだ……!


「あともう一つ、とっておき! 召喚魔法、夢食いメリーゴーランド!」


 乙さんが杖で空中に魔法印を描く。杖のベルがシャンシャンシャンと鳴って、羊さんが一体だけいる小さな屋根付きメリーゴーランドが召喚された。


「行くわよ! 夢食いメリーゴーランド、どりーむらんど! ブラックドラゴン、カオスリュジスモン!」


 メリーゴーランドの羊さんがエアレーの頭に乗っかった。くるりくるりとメリーゴーランドが回ると、エアレーの攻撃が鈍くなる。どりーむらんどの効果、混乱かな? ブラックドラゴンのカオスリュウジスモンは、雷属性の高火力ブレス!


 また少し、目に見えてバーが減少!


 制限時間、あと二分!

 こうなったらもうね……!


「みんな、全力でアタックだ――!」


 私の掛け声に、みんながエアレーにスキルを放っていく。

 さすが前衛組、強い強い!

 後衛だって負けてらんない!


 私は天使の羽で飛ぶ。

 撫子さんが双剣に、スイさんも格闘家のスタイルに装備変更したのが見えた。

 二人とも、クラスチェンジしてもまだ元職のほうがスキル値高いもんね!


 しーも棍を構えて突撃しに行ってる。

 かっこいいところあるじゃん!


 乙さんだって、ブラックドラゴンに間髪いれずブレスを吐かせていて。


 私だって負けていられない!


 エアレーの頭上まで飛ぶ。

 同じように飛翔スキルを持ってる魔導士たちが、同じように、エアレーを上から攻撃しようとしていて。


 範囲系の破壊魔法が雨のようにエアレーに撃ち込まれていく。

 私も魔法印を描いた。


 狙うはエアレーの眉間。

 装備スキルで魔力消費量は1.5倍!

 だけど火力は2倍!


 さらにスキル効果でヘイトが高くなる変わりに火力も高くなる単発破壊魔法!


「いっけぇ、クリティカル――! 混沌の火球(カオス・フレイム)!!」


 狙いを定めた魔法がエアレーの眉間で炸裂して。

 八本目のバーがブレイクしたのと、制限時間が終了したのは同時だった。


 ひらりと黄色の何かが視界の端に映り込む。

 地面に倒れ伏したエアレーに、まるで祝福するように黄色の花弁が舞った。


 全員の時が止まる。


「エアレーが、倒れた……? いや、倒した……?」


 誰かがぼやいたのが聞こえた。

 私の眼の前にウィンドウが開く。


 あ、これ、ドロップウィンドウだ。


 ドロップウィンドウが出たってことは……。


「エアレー、倒しちゃった……!」


 一拍置いて、部屋中に歓声が響き渡った。


「すごいすごい! ナノちゃんすごい!」

「うわっ、しー! ちょっ、ともう!」


 しーが抱きついてくる。わたわたしてたら、他のパーティの人たちにも囲まれちゃって。


「いやー、すごいなあんた!」

「かっこよかったよ〜!」

「ねぇねぇ、ステータス見せてくれない?」

「フレンドなりませんか!」


 しーと二人、もみくちゃにされていたら、上からずぼっと首根っこを掴まれて。


「後で頼む。達成報告までがクエストだ」

「そうそう。それにこの子はうちのパーティリーダーなんで」

「お近づきになりたい人は、ギルド『ガーデンナイツ』をよろしくね?」


 スイさんの腕に、しーと二人で抱っこされてしまった。撫子さんと乙さんが周囲に威嚇してる。ちょっと居心地悪いなぁ……。


「さぁさぁ、ドロップアイテム回収しないと。回収しわすれてソルティに報酬もらえないなんて目が当てられないからな!」


 撫子さんに言われて、慌ててドロップウィンドウを見る。


【獲得アイテム】

【夢の欠片×100】

【エアレーの角×1】

【キルクィトスコルヌの杖×】


 ん……?

 クエスト報酬と、討伐素材と、何これ杖?

 しかもキルクィトスコルヌって……。


 ステータス画面を見てみる。


 ――――――――――

「キルクィトスコルヌの杖」

 魔法技術+11

 スキル:回旋角(キルクィトスコルヌ):杖で刺された対象に120秒間の麻痺を付与。

 ◯エアレーの角より削り出された杖。

 レアリティ:SSS

 売買、トレード不可。

 ――――――――――


 わぁ……。


「ナノ? どうした?」

「疲れちゃった?」

「……スイさん、しー、これ見て」


 私はこっそりとスイさんとしーにもドロップウィンドウを共有する。キルクィトスコルヌの杖のステータス画面も一緒に。


「なにこれ……?」

「これは、エアレーの初討伐報酬だな」

「スイさん知ってるんですか?」

「ああ。エアレーが懐かしいな」


 スイさんが声をひそめて教えてくれるには。

 エアレーの初討伐をした人に贈られる討伐報酬だとか。旧サーバーではもうずいぶん昔のことで、上級クエストがクリアされるたびに話題に上がったらしいけど、今じゃもうエアレーも狩り尽くされていたからみんなの記憶の彼方へ。


 VRサーバーで一新されたから、VRサーバー上の初討伐報酬もリセットされていても全然おかしくないわけで。


「これ、強くないですか。麻痺120秒間とか、こんなの無双し放題……」

「前の時はそんなに話題にならなかったんだ。非売品トレード不可だったのに、確か剣士がもらって宝の持ち腐れになってた記憶がある」


 さすがレアリティSSS。

 でもこれ、魔導士の私からしたら垂涎ものだよ……!


 私はスイさんとしーと顔を見合わせて頷いた。

 こんなすごいもの持ってるのバレたらまたもみくちゃにされそうなので、ここはひとまず大人しく受け取っておきましょう。


 私は全部獲得してアイテムボックスに収納する。

 スイさんが腕から降ろしてくれたので、二本足で立つ。


 最終局面で死んじゃった人たちも蘇生がされて、レイドパーティが全員復活した。周囲をぐるりと見渡して。


「それじゃあ、帰りましょうか」


 ソルティのもとへ!






 ◇






 私は魔術師ソルティ。

 ここでこの石碑を守るもの。


 旅人よ、戻ってきたのか。

 洞窟の主を見事討伐したのだな。


 お前には頼もしい仲間がいるらしい。

 私の星読みも当てにはならないものだ。


 あぁ、そんなお前たちに祝われる魔女はきっとすばらしい者なのだろう。

 魔女が待っている。


 私はここで、花嫁となる魔女に幸あらんことを願っておこう。


【クエストを達成しました。】

【獲得報酬:ヴィラージュの花×1】



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