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白魔導士の破壊魔法

 エアレーの怒号は魔法耐性の高い私には効かない。

 足踏みだって、私は攻略法を知っている。

 あとは私が角に対する恐怖心を捨てるだけ。


「ナノちゃんがタゲ取り!? そんなん無理だろ!」

「ナノにやらせるくらいなら、俺たちが前衛にいく」


 撫子さんやスイさんが案の定、抗議をしてきた。

 こちらが騒がしいのに気がついて、しーと乙さんも戻って来る。


「ど、どうしたの?」

「ちょっと、イベント中に喧嘩はやめなさい」


 前衛だったはずのしーは、体力がギリギリだけど死んではなかった。ちょっとほっとする。良かった、無事で。


「喧嘩じゃないです。私がタゲを取ります。私なら、エアレーに対してタゲを取れるはずですから」

「はぁ!? ナノちゃん、何考えてるの!?」

「エアレーを討伐することだけど?」


 しーが案の定、ひっくり返ったみたいな声を出す。

 私は至極当然のように言い返して。


「時間がないから後で説明します。私がタゲを取ったら、後衛組で攻撃を再開してください。ぶっちゃけMP管理がきついと思うから、しーは隅っこで魔力回復ポーション量産しておいて。素材集め付き合ったんだし、材料は持ってきてるでしょ?」

「う、うん」

「手持ちのポーションを使い切ったら、しーのとこに取りに行くから、撫子さんとスイさんはしーの護衛をお願いします」

「あ、あぁ……」

「了解した」

「乙さんは私のサポートを。回復やバフの余裕持っていられないと思うので、お願いします」

「分かったわ」


 パーティメンバーに指示を出す。

 さぁ行くぞ、というところで、私たちを遠巻きにしている人たちの中から、薔薇の剣世の人が歩み出てきた。


「お前たち、勝手な行動はやめろ! 皆の迷惑だろ!」

「迷惑にならないように立ち回ります。前衛がいない今、誰かがタゲ取りしないといけないでしょう? あなたがやりますか? 見たところ、装備もスキルも心もとなさそうですが」


 私に注意してきたのは、たぶん料理人かな。武器の装備が初期装備で、およそレイド戦に来るような格好じゃないし。


「うちのパーティで回すので。そちらはお好きにしてください。他の方も、タイミングを見て攻撃してくれると嬉しいです」


 私はそれだけ言うと、装備欄を開く。


 ――――――――――

 Name:ナノ

 HP4350:ST1400:MP4125

 アイテム重量0.969/1.400(kg)


 称号ランク

 白魔導師SS


 装備

 頭・蛍光の簪(神聖+3、恒常スキル:蛍の光:周囲3メートルを常に照らす)

 胴・皚皚のローブ(精神力+2、回復+8)

 腕・離郷の蔦花(召喚+13)

 腰・ラルムの腰布(回復+6)

 足・コネッサンスのレボットゥ(精神力+4、恒常スキル:叡知の足:移動中MP回復量×1.2倍)

 アクセサリ1・花嫁魔女のヴワル(破壊+9、暗黒+10、恒常スキル:花嫁魔女のはな唄:歌スキルによるデバフ耐性×1.2)

 アクセサリ2・プラティーヌの紋様(恒常スキル:プラティーヌの守護:物理被ダメージ×0.7倍)

 武器1・雪結晶のクレ(精神力+2、魔技+3、恒常スキル:魔力の蓄積:60秒間魔法を一つチャージできる)

 ――――――――――


 エアレー対策装備にチェンジ!


 ――――――――――

 Name:ナノ

 HP4350:ST1400:MP4740

 アイテム重量1.329/1.400(kg)


 称号ランク

 白魔導師SS


 装備

 頭・白鹿の百年角(精神力+3、恒常スキル:俊足:移動速度×1.3倍)

 胴・雪国の踊り子<上>(精神力+8)

 腕・離郷の蔦花(召喚+13)

 腰・天使の腰羽(神聖+2、スキル:天使の羽:60秒間飛翔状態を付与)

 足・コネッサンスのレボットゥ(精神力+4、恒常スキル:叡知の足:移動中MP回復量×1.2倍)

 アクセサリ1・禁書の断片(破壊+12、恒常スキル:禁書の囁き:消費MP×1.5倍で破壊魔法の威力×2.0倍)

 アクセサリ2・プラティーヌの紋様(恒常スキル:プラティーヌの守護:物理被ダメージ×0.7倍)

 武器1・雪結晶のクレ(精神力+2、魔技+3、恒常スキル:魔力の蓄積:60秒間魔法を一つチャージできる)

 ――――――――――


 頭、胴、腰とアクセ1を変更。

 ちょっと腰から下がセクシーな感じになっちゃったけど、戦いに恥は捨ててなんぼだよね。


「な、ナノちゃん、破廉恥……っ」

「キミさ、破廉恥って言うほうが破廉恥なんだよ」


 しーがなんか真っ赤になって目を一生懸命に反らしていた。男の子ってこういうところあるよね、ってさめた目で見ちゃうのも仕方ないよね。


「ナノちゃん、その装備は……」

「対エアレー装備です。念の為、持ってきてたんです」


 前衛さんたちが頑張ってくれたなら必要ないかもと思ってたんだけどね。

 備えあれば憂いなし!


 私はさぁてとエアレーに向いて。


「それじゃ、行ってきます!」


 地面を蹴った。






マナスパーリング(魔力消費減少)スピリートユニタトス(魔力回復量上昇)!」


 これは魔法職の必須だからね。

 この二つの魔法技術スキルが切れたら私の負けとも言える。魔法技術スキルで減ったスタミナは、乙さんが即座に回復してくれた。ありがとう、乙さん!


「チャージ!」


 私は魔法印を描くと、杖にチャージ。

 それから地面を蹴って大きくジャンプして。


「スキル、天使の羽!」


 装備スキルで空を飛ぶ!

 ふふ、一人でこっそり練習してた甲斐があって、それなりに自由に飛べる。で、ここからが肝心。


 私はエアレーの頭の後ろを陣取った。

 ここは間違いなく死角でしょう……!


 最初のエアレークエストの教訓。

 足ばっかり攻撃していたからさ、クリティカルが入りにくかったんだよね。だって、手の届く高さだから。

 でもクリティカルって要するに、急所に当てられるから出るわけで。


「頭は、急所だもんね? 六柱の白雷(シクス・スパークリング)!」

「――■■■■■!!」


 やった、クリティカル!

 チャージしていたのは高火力の範囲攻撃技。自分の周囲に六個の雷を落とす魔法。普通ならモンスターに囲まれた時に大活躍な魔法だけど……私が立ってる場所はエアレーの背中だからね! 六個分の雷のダメージがエアレーに入った!


 クリティカルも入ったから、エアレーの体力バーが目に見えて減った。

 よし、行けそう……!


 私は乙さんに通信を飛ばす。

 乙さんは応答に即座に答えてくれた。


「後、三回、エアレーに破壊魔法をぶち込みます! そうしたらタゲを取れると思うので、後衛の攻撃を開始させてください!」

『ちょっと! そんなことしたらナノちゃんに当たるわよ!?』

「当たってもいいです! 回復してもらえれば! 信じてますよ、乙さん!」

『まったくもう、ナノちゃんったら……! いいわ、任されました!』


 パーティの指揮はリーダーにかかってる。

 このパーティのリーダーは私だから、ちゃんと見ておかないとね。


 私は範囲系の攻撃魔法を間髪入れずに撃ち込んでいく。背中にいる私をふるい落とそうと、エアレーが暴れ始めた瞬間、後衛からの一斉射撃!


 足の裏にもクリティカル判定が入るのか、エアレーが前足を上げた瞬間に悲鳴をあげた。


 四本目のバーがブレイク!

 エアレーの怒号が入るけど……私には効かない!

 後衛の最前列が少しやられたみたいだけど、ヒーラーが即座に麻痺解除をしてる。


 エアレーが暴れると、足踏みの振動でまともに立っていられなくなる。私はそれを装備スキルの天使の羽で飛んで回避。みんなが体勢を整えるまで、私は高火力範囲魔法を叩き込む。


 単発高火力魔法が通常火力の二倍なら、範囲系高火力魔法のトータルのダメージは通常火力の三倍くらいあるからね……! エアレーみたいな巨体に全弾もれなくうちこめることができれば、最強かもしれない。


 そのためにも、前衛並みの接近をしないといけないのが難点だけど……!


 五本目のバーがブレイクした。

 ようやく戦闘のリズムができたのか、ヒーラーたちが前衛を蘇生し始める。


 六本目のバーがブレイクした。

 前衛が復活! でも後衛一帯にまでエアレーの怒号で麻痺が行き渡る。魔法耐性が高い子は生き残ってるけど、ここでまた壊滅されたら困る……!


「エアレー、こっち! 混沌の火球(カオス・フレイム)!」


 天使の羽で飛んで、少し離れたところから単発高火力魔法を撃ち込む。追加効果で、通常攻撃よりもヘイトが高くなる代わりに、ダメージも大きくなる魔法。エアレーがこっちを見た!


 そのまま人が少ない柱までおびき寄せて、エアレーに頭突きさせる。

 さぁ、今のうちに殴って殴って!


 生き残っていたヒーラーが順に麻痺を解除していく。後衛が最初に復活し、前衛も復活していく。

 じわじわ削って、七本目のゲージがブレイク!


 やった、あと一本……!

 わぁっと歓声が上がる。


 でも。


 エアレーの本気はここからだった。


「――■■■■■!!」

「な、ぁ……!?」


 身体が一気に重くなる。

 ぴりぴりとしてうまく動かない。


 エアレーの怒号が、私に効いた……!?

 七本目のゲージのブレイクで放たれたエアレーの怒号。

 魔法耐性の高い私にも効くの……!?


 柱の影に落ちていた私を、エアレーが見つける。

 あ、やばい。

 回旋角が――!


「誘引の弦!」

「リーニュショット!」


 横から撫子さんとスイさんの声!

 タゲを一時的に引きつける撫子さんの弓技と、低火力の変わりに装填スピードが段違いに早いスイさんの銃技。


 そこに。


「ナノちゃん飲んで!」

「しー!」


 しーからアイテムが渡される。

 状態異常を回復するポーションと、MP回復のポーション!


「ナイス、アシストじゃん」

「僕だってやれる時はやるんだよ……!」


 しーが棍を構えた。

 ゲージはあと一本。


 ぐいっと私はポーションを飲む。

 麻痺が取れて、MPも回復。


 よぉし。


「最後の大暴れ、行きましょう!」


 応、と声を上げるのは、ギルド「ガーデンナイツ」のみんな。


 それだけじゃなくて。

 いつの間にかレイドチーム全員が、一丸となってエアレーに立ち向かっていた。


おまけ。

ナノのスキルステータス。


称号:白魔導士SS

生命力43.5

筋力14.0

精神力52.4(69.4)

治癒力26.0

破壊魔法83.4(95.4)

回復魔法92.2

召喚魔法40.8(53.8)

神聖魔法74.5(77.5)

暗黒魔0.0

魔法技術65.3(68.3)

戦闘技術25.9


称号は装備がない状態のスキル値が一番高いものによって自動設定されます。

なので装備変更したナノちゃんはごりごり破壊魔法が高いけど、素の状態だと回復魔法のほうが高いのでちゃんと白魔導士です。



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