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第三世界で終わる君へ  作者: 尾張 東水
First Of The Year
9/16

1 3-1 stamp on the ground lyrics


「俺が能力者?そんな訳ないだろ。」

ラルドはカレンフェルトを突き飛ばす。

「やはり自覚してないのか。君は能力者だ。それもかなり深刻なフェイズに到達している。」

彼女は強張った顔を紐解くように綻ばせ、肩をすくめる。

「その様子じゃあ、話も進まないな。まずは能力についてだ。」

カレンフェルトは語りだす。

「そもそも、能力自体はかなり昔から確認されていた。だが、その絶対数が余りにも少なすぎて、世間に出回ることのない代物だった。話は60年代にまで進み、量子論が確立されて、初めて能力が最小単位の量子と関係があることが分かった。」

「量子…。」

名前くらいしか聞いたことのないラルドにとって余りに突然だった。

「で、その量子を完全にコントロールできるなら、今までの超常現象も説明できる。話は変わって、人の脳についてだ。それは本来10%しか使われていないとか言われてる。まぁ、実際のところ30%だそうだけども、そこはどうでもいい。結果からして能力者はそこの所が少し秀でているだけなんだ。」

「それが、量子とどう関係があるんだ?」

「…すまないが、私も専門家じゃない。だが、ある学者によると、人の思考が現象に結びつくことは、PH理論において、決して不自然じゃない。実際、彼によって能力者が持つ脳の特殊性が、超常現象を引き起こしている事は、理論上証明されてしまったわけだ。」

「PH理論?」

「量子の二重性をPHっていう粒子軍で説明した理論だよ。まぁ、ごめん。私自身もこの分野は疎いんだ。」

「…つまり、能力者がいてもおかしくないと。」

「そうだ。君もそのうちの一人である。」

「…俺は何もできないぞ。」

「そりゃそうだ。君はまだ、そう成ってしまって、そう成り果ててまだ気づいていない。だから私がここにいる。」

「じゃあ、あの爆発もお前がやったことなのか?」

「馬鹿言うな。あれは彼自身が選んだ結末だ。君と同じように彼も自覚しなかった。君はどうする。」

「何が言いたい。」

「無知を知れ。君も他人事じゃないんだ。君は他人を巻き込んで死にたいのか。」

「…」

「君は遠くない未来必ず死ぬ。自身の能力の暴走で自滅する。その前に、誰も巻き込まず、今ここで死んでくれないか?」

「ふざけるな!!」

少年は叫ぶ。

「なんで、お前に殺されなくちゃいけないんだ。お前がそうする理由はなんだ。」

カレンフェルトは少年を憐れんだ。

「すべて私のせいだ。まずは私が何者なのかを教えないとな。私はこの第三世界の中心点。本当は能力者など作らせないために、全ての能力を保管しておく存在なんだがな。…200年前にこの役目を請け負った、いや無理やり奪ったというべきか。まるで底に穴の開いたカップを受け取った気分だったよ。もうこの役目自体が綻んでいた。不完全な私が世界中に不幸をまき散らした。私の責任だ。君みたいな人間が生まれてきてしまった。多くの命が奪われ、私はこうするしかなくなった。」

「…何が言いたい?」

「分からなくていい。これは私の懺悔だ。私はこれから殺す君へのせめてもの言い訳だ。私を恨め。」

カレンフェルトから鋭い殺気がラルドをかすめた。

「私は君を苦しませずに殺す事を約束しよう。」

カレンフェルトから中指ではじかれたコンクリート片はラルドの頬を切り裂いた。

着弾したアスファルトは砕かれ、抉れていた。

「もう俺は、生きることはできないのか…。」

少年は死への恐怖に支配されていた。

これだ。

初めて彼女と会った時に感じた感覚を理解した。

「…分かった。やり方を変えよう。」

カレンフェルトはコンクリート片を構えなおし、


ワゴン車を打ち抜いた。


爆発したワゴン車の陰に秋の姿を捉え直す。

「秋っ!」

ラルドは秋のもとへ駆け寄る。

爆風により飛ばされてた。頭からは血が流れていた。

少年が抱きかかえても、彼女の意識はなかった。

「次はない。その女の子ごと君を殺そう。」


少年は覚悟を決める。

ワゴン車から走り出した少年はカレンフェルトの前に対峙する。

「上等だ!俺はここだ!死ぬのは俺だ!」


カレンフェルトは涙を流す。

それは自責のものであろう。

「…ありがとう。大丈夫だ。決して痛みは伴わない。あの女の子も無事だ。殺すのは君だけだ。」

カレンフェルトは両腕で構える。槍のような金属が形成されていく。完成したそれは、青白く白光する。

「さよならだ。私を恨んで死んで逝け。」

カレンフェルトは槍を投擲する。

白光した槍の光線は少年の網膜を焼く。


「あああああああああ」

最後に、少年は右手で顔を覆った。

視界は白く塗り潰された。





「私はどうすればいいんだ…。」

カレンフェルトは立ち竦む。

彼女は全力で少年を殺した。

殺したはずだ。


だが、少年の体は存在していた。


決してありえないのだ。あの投擲は少年を細胞すら残さず焼き消したはずだった。

不発などではない。彼の勇姿に誠意を込めて撃ち放ったはずだ。

だが、彼はそこにいる。


これをどうとらえるか。

能力は獲得できるものではない。

後天的に発現することはありえない。

つまり、能力の暴走。


やはり、殺し切る責任を果たさなければいけないのだろうか…。


カレンフェルトはコンクリート片を構え、

心臓に打ち込む。


だが、少年に触れた途端、それは消えてしまった。


「そこまでだ。カレンフェルト。」

男の声が、彼女を静止させた。




更新周期は不定期です。

気が向いたら次回投稿という事で・・・。

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