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「さて、改めてまたよろしく」


「「エディス様、よろしくお願いします」」


「えぇ、よろしくお願いします」


 俺が受付に戻り、改めてエディスさんをギルドからの迷宮調査官として迎えた。


「ヤナ迷宮探索調査隊発足を、ここに宣言する!」


「「「おー」」」


 何故だかノリが悪い隊員達だが、少しだけ気になったことを聞いてみた。


「気のせいか? なんだか俺を見るセラの目が、若干残念な子を見るような目をしているんだが」


「あぁ、ヤナ君がいない時にセラちゃんが、冒険者になってからのヤナ君の様子を聞いてきたから……話してあげたのよ、ふふふ、『漆黒の騎士(ジェットブラック)』さん?」


「……ヤナ様……子供じゃないんですから、『漆黒の騎士(ジェットブラック)』は、ちょっと……ないかなと」


「やめてぇええええええ!」


 盛大に、現在進行形の黒歴史を抉られた。


 エディスさんから、目を離してはイケナイ。




「今日はこれから調査の準備をしてから、明日の朝一で探索に向かおうと思うが、それでいいか?」


「今から向かっても、丁度着くのが夜になるでしょうからね」


 エディスさんと明日の朝にギルドに迎えにくる約束をしてから、俺たちはギルドを出ていつも鍛錬をしている荒野へ向かった。


「でだ、明日から迷宮探索調査をするわけだが、セラ(・・)の実力を俺は知らない」


「えぇ、そうですね」


 俺はお姫様としての、セアラしか知らない。その為に、俺についてくるセラ(・・)としての強さを把握しておかないと、一緒に旅が出来ない。


「なら、確認するだけだな」


「えぇ、そうですね」


 俺はおもむろに二刀の大太刀『烈風』『涼風』を抜いた。それを見て、セアラはメイド服のスカートの中に手を入れた。


「は?」


 そして、そこから鬼の金棒としか表現出来ない武器を取り出した。


「……まず聞きたいのは、何故スカートの中から?」


「スカートの内側に、武器を収納しているマジックバックが縫い付けてあります」


「いや、そういう事を聞いているんじゃ……いや……もう、いいや……それより、その鬼の金棒みたいな武器は?」


「これは、あの本とセットで保管してあったので、使ってみたら丁度手に馴染みましたので、フフフ」


 その鬼の金棒を手にしてから、セアラの雰囲気が変わる。


「フフフ……早くヤナ様を殴りたい」


「絶対呪われてるだろ!?」


 俺の叫びを合図に、セアラが動く。


「『貴方の為に(身体強化)強くなる(増幅増強)』『四方を囲む壁(貴方を逃さない)』!」


 俺を囲むように壁が出現する。背中がゾクっとして、死神の(危険/気配)慟哭(自動感知)が危険を知らせる。


「『疾風迅雷(早く速く疾く)』!」


 壁に囲まれる前に、疾風迅雷(早く速く疾く)でギリギリ脱出した。


「チッ」


「性格変わりすぎだろ……なるほど、結界魔法で閉じ込めて捕獲するのか」


 そう俺が呟くとセラ(・・)は、不敵に嗤う。


「いえ? 捕獲だけで終わりません。本当ならこうなるはずだったんです。『圧縮(コンプレス)』!」


 セアラが『圧縮(コンプレス)』と唱えると、四方の壁が一気に狭まり、中の空間が圧縮されていく。


「えげつないな……ちなみに、アメノかエイダに、これ試したのか?」


「えぇ、アメノには仮想ヤナ様になって貰いましたので、閉じ込めた後に武器が折れるか、結界が破られるかするまで閉じ込めました。最初はアメノの斬撃に結界が破壊されていたのですが、ヤナ様を想う気持ちをより強く(・・)、想えば想うほどに強固な結界になりました。最終的にアメノをここに閉じ込めた場合は、『本気中の本気』でも破壊できず、逆に刀を破壊出来ました」


「あぁ……だからアメノ爺さん半泣きだったのか……それに俺への想いじゃなくて、それレベル上がっただけだろ……」


 俺が苦笑した瞬間、セラも一瞬気を抜いて自慢気に笑った。その瞬間に、強く踏み込み刀の峰でセラを胴切りして吹き飛ばした。


「鍛錬中に気を抜いたら、怪我するぞ?」


「主様……えげつない……」


「……カハッ……フフフ」


 地面に転がっているセラから、嗤い声が聞こえる。


「ヤナ様に……刀で殴られちゃった……頑張ったら、次は斬ってもらえるな……フフフ」


「ひぃ!? アシェリ、俺はどうしたら!」


 アシェリは尻尾を丸めて、遠くに遠ざかりブルブル震えている。


「主様……こっちに来ないでください……」


「薄情者ぉおおお!」




 俺の精神力がガリガリ削れていきながら、セラとの鍛錬を何とか終えて、アシェリに思い出した様に聞く。


「アシェリ、セラと勝負しなくていいのか?」


 セラが、アシェリに向かって若干血が付いている顔をニタァと向けた。


「……夢に出てきそうなので、遠慮しておきます……」


「そうか……うん……そうだな……」


「……はい……あっ! そういえば、今回クエストは迷宮の探索(・・)調査という事ですから、前にぼやいていたヤナ様の新しいスキルが、やっと役に立ちそうですね」


 魔族のラオラインを討伐した際に『冒険者Lv.30』になったのだが、その際に新しいジョブスキルを覚えていた。だが、全く使う機会がなかったのだ。思わずアシェリに愚痴をこぼしたのを、覚えていたらしい。


「そうだな。あのスキルを覚えてから、初めての迷宮探索だからな、楽しみだ」


 呪いの金棒をスカートの中にしまい、普通に戻ったセアラ(・・・)が尋ねてくる。


「『冒険者』の新しいジョブスキルですか?」


「あぁ、通信魔法(チャット)以来に久しぶりに覚えたんだが、使い所が今まで無くてな」


「どんなスキルかお聞きしても、よろしいのですか?」


「それはな……」


 この後、セアラに新しいジョブスキルを簡単に説明し、宿屋に戻った。




「「ヤナ様(主様)と同じ部屋で寝るのは(わたし)です!」」


「いやいや、お前ら二人で一部屋だからね?」


「「えぇえええ!?」」


「えぇって……子供じゃないんだから……って、アシェリは子供だったか」


 俺がそう呟くと、アシェリは目をキラキラさせながら俺を見て頷いているが、反対にセアラの目はどんどんセラ(・・)の目に…


「……うん、アシェリは、セラお姉さんと一緒に寝なさい」


 アシェリは、はっと気づいた様に後ろに立っていたセアラを見た。


「私がヤナ様と一緒じゃないのに、アシェリちゃんだけなんて……ないですからね? フフフ」


「……主様……」


「……仲良くしろよ?」


「ひぃいいいい!?」


 折角の仲間なのだから、アシェリとセアラが仲良くなってくれる事を願いながら、俺はは久しぶりの一人部屋になったのだった。




 ヤナは城を出て数日後にはアシェリを保護した為に、久しぶりの一人部屋だった。


「明日、怪しい迷宮に探索調査か……それにガストフ支部長の感じる『死の宣告(死亡予知)』……まぁ、この辺は火力でどうとでも出来るだろ」


 この呟きを誰かに聞かれたら間違いなく脳筋だと思われることを、ヤナは気付いていない。


「エディスさんは……いつも通りでいいか。何かあれば、そん時考えよ」


 ガストフ支部長に、エディスの何を『頼まれた』のか考えてもヤナは、答えが見つからなかった為に、未来の自分に丸投げした。


「アライさんが……縄張り主達を倒しちゃったんだよな……新しい主が……代替わりしてないかなぁ……ふぁあ……」


 結局、ヤナもアライの事を何も言えない戦闘バカな呟きをして、静か眠りについた。




 次の日の朝、いつも通りに俺は日の出前に二人を起こし、朝のランニングを行う。若干心配だった二人は寝るときに、乙女話で盛り上がり、すっかり打ち解けた様だった。10歳くらいの子供と乙女話で盛り上がる王女って……外に出てないから精神年齢が、案外低いのかもしれないなと思った事は、内緒だ。


「おし、いい汗かいたな。朝飯食べたら、エディスさんを迎えにいくぞ」


「「は……はい……うぷ」」


 しっかり、朝飯を食べた後にギルドにエディスさんを迎えに行くと、丁度準備を整えたエディスさんがギルドの扉から出てきたところだった。


「おはようエディスさん。丁度良かったな」


「ヤナ君、アシェリちゃん、セラちゃんおはようございます。えぇ、私も丁度準備出来た所でしたから」


 アシェリとセアラは、若干苦しそうな顔をしながらエディスさんに朝の挨拶をし、エディスさんに苦笑されていた。


 俺たちは北の門向かいながら、今日の事を話す。


「発見された迷宮の場所ってのは、今回エディスさんに聞けばいいんだよな?」


「えぇ、今回は私は試験の評価者ではなくギルドからの調査官ですからね。ギルドと共同クエストだと思ってくれて結構です。場所は私が把握していますから、大丈夫ですよ」


 そして、北の門を抜け、人目に付かない場所まで歩いて行き、そこで今回の移動手段の準備(・・)をする。


「今回も馬車ですか?」


 エディスさんに聞かれるが、今回は馬車で行くつもりはなかった。


「いや、ケシン渓谷で迷宮に行く途中に、魔物に遭遇してたら面倒だしな。渓谷の()から行くことにする」


「「「は?」」」


 三人ともきょとんとした顔をしているので、構わず俺は準備をする。腕輪と指輪を外して、必要な魔法を唱える。


「『十指(テンフィンガー)』『神火の(セイクリッド)大極柱(セントラルピラー)』『収束(コンバージェンス)』『形状変化(デフォルマシオン)』『神火の回転翼機ヘリコプター』!それと、『四指(フォーフィンガー)』『神火の(セイクリッド)断崖(クリフ)』『形状変化(デフォルマシオン)』『神火の落下傘(パラシュート)』っと。これで準備できたな」


「「「……」」」


 三人は目を見開き、口を開けっ放しにして『神火の回転翼機(ヘリコプター)』を見ているが、構わず『神火の落下傘(パラシュート)』の説明もする。


「全員の背中に鞄のような物がくっついたと思うが、これは『神火の落下傘(パラシュート)』と言って、後で使うことになるからな。使う時は、ここにある紐みたいなものを引っ張りぃいいいっでででで! 頭が! 首が! 肩が逆関節に! 死ぬ死ぬ死ぬ!」


 驚きから正気に戻ったのか、『神火の落下傘(パラシュート)』の説明をしている最中に、エディスさんに正面からアイアンクロー、セアラに首を後ろから絞められ、アシェリに腕を捻られた。


「はぁはぁ……お前ら……鬼か!?」


「「「五月蝿い!」」」


「泣きたい!?」


 取り敢えず、全員で『神火の回転翼機(ヘリコプター)』に乗り込んだ。勿論俺は操縦席だ。沢山の計器やスイッチが手元にあるが、勿論全部ただのイメージである。ちゃんと操縦出来る訳がない。自動操縦(オートパイロット)に丸投げして、プロペラが勢いよく回り出す。当然これも雰囲気だ。プロペラが回らなくても飛ぶ。気分が大事なのだ。


 その様子に俺以外が驚き、窓から外の様子を見ている。その様子を微笑ましく見ながら、出発する。


「『離陸(テイクオフ)』!」


 プロペラが勢いよく回る音を聞きながら、機体は空へ垂直に上がっていく。


「地面が……」

「怖い……」

「ガタガタ……」


「まぁセラは、初めてだからしょうがないが、エディスさんとアシェリは空飛ぶの初めてじゃないだろ? 慣れたろ」


「「無理!」」


 二人揃って、そんな事を言うので、俺は少し考えて言葉を吐き出す。


「そんな時は、決まってるよな? 慣れる為には、な?」


「いや……」

「やめて……」

「ヤナ様……?」


「鍛錬が、全てを克服させるのだ!」


 俺はアクロバットに機体を動かした。当然、魔法で創ったヘリコプターである為、現実のヘリコプターで出来るかどうかなんて無視だ。


「いやぁあああああ!」

「降ろしてぇえええ!」

「いっそ殺してぇえ!」


 急旋回に、宙返り、錐揉み回転とジェットコースターをイメージしながら操作する。


「アッハッハッハッハ! 超たのしぃいい!」


「「「………」」」


 俺がハイになっていると、後ろの三人叫びが聞こえなくなった。どうやら気絶したようだが、勿論シートベルトを搭乗時にさせているので、安心だ。


 俺が遊びながら、取り敢えずケシン渓谷まで来たところで、三人を起こした。詳しい場所はエディスさんしかわからない為だ。


「「「……ここは……」」」


「ケシン渓谷の真上だな」


「……降りたら、潰すわよ皆んな……」

「当然です」

「当たり前です」


 三人の不穏な結束を、スルー(聞かなかった事に)してエディスさんの案内で、発見された迷宮場所へと進む。


 渓谷のメイン通りから脇に逸れた道を奥に進んだ場所に、迷宮の入り口らしきものがあった。


「なあ? 魔物も迷宮攻略に挑むのか?」


 俺の目の前には、迷宮の入り口へと魔物が次々と入っていっている様子が見えている。


「……いえ……これは……」


「取り敢えず、あまり良くなさそうな事は決定だろうな。どっちみち排除しないと降りられないしな。『双子(ツイン)』『十指(テンフィンガー)』『獄炎(ヘルフレイム)極球フルムーン』『形状変化(デフォルマシオン)』『黒炎の(ヘルフレイム)爆撃(ボンバー)』!」


 迷宮の入り口群がっていた魔物群れに、上空から獄炎の爆弾を投下した。


「「「ギャワァアアアア!」」」


「フハハハ! 消毒だぁ!」


「酷い……」

「エグい……」

「えげつない……」


 三人から褒められたので、気分良く次の行動へと移す。


「よし! 落下場所の掃除は終わったぞ! いくぞ!」


「落下? 降下じゃなくて?」

「まさか?」

「結構高いですよここ?」


「ちゃんと『神火の落下傘(パラシュート)』使うんぞ? それでは『神火の回転翼機(ヘリコプター)』『解除(リリース)』!」


 俺が『解除(リリース)』と叫んだ瞬間、全員の視界から機体が消えた。


「「「は?……いやぁあああああ!!」」」


 全員が自由落下し始め、俺は一人(・・)落ち着いて神火の落下傘(パラシュート)を広げた。


「おーい、神火の落下傘(パラシュート)使わないと地面に激突するぞー?」


「「「ふざけるなぁあああああ!」」」


 仕方がないので、俺が遠隔でパラシュートを開き、地面に三人を優しく着陸させた。


「ったく、しょうがないなぁ。ちゃんと人の話を聞かないと駄目じゃな……ひぃ!?」


 地面に這いつくばっている三人に寄って行くと、顔だけこちらをバッとあげた三人の瞳に光がなかった。


「絞める」

「折る」

「捻る」


「ぎゃぁああああああ!」


 ケシン渓谷に、その日何か(・・)の断末魔が響き渡った。


↓大事なお知らせがあるよ∠(`・ω・´)

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