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召喚者と巫女達

 昼頃になりアシェリと合流する為に宿屋に向かった俺とセアラは、入り口に立っているアシェリを見つけた。


「早かったな。大分待ったか?」


「いえ、今さっき来たところです。討伐対象が比較的早く見つかったので、少し早く宿に戻って来ました。それで、その方が……セ」


 アシェリがセアラの名前を呼ぼうとしたので、慌てて言葉を遮る。


「そうだ、今日から一緒に行動するセラ(・・)だ。よろしくな」


「え? セラ様ですか? 確か主様が、セア…」


「セラだ」


 結局ゴリ押しで、行くことにした。言い張れば何とかなる!


「はぁ?……わかりました。それではセラ様、私は主様に身も心も全てを捧げている主様の奴隷(・・・・・)のアシェリです」


「おい、また誤解を招くような言い方を……」


 アシェリが、間違いなく誤解を周りに与えかねない自己紹介をするので、否定しようとすると、その前にセアラが負けじと言い放つ。


「そうですか……私は、ヤナ様の上から下まで全てを世話する(・・・・・・・)侍女のセラです。以後お見知り置きを」


「上から下までってなんだよ……」


 俺のセアラへの疑問は、二人に盛大にスルー(無視)された。


 二人の間にバチバチと火花を幻視したが、全く意味が分からずに俺が困った様子でいると、不意に二人は同時に俺を見た。


「「どちらがヤナ()様の(しもべ)なんですか!」」


「仲良いなお前ら……どちらも(しもべ)じゃねぇよ……」


 俺がそう言うと、二人は信じられないと言った驚愕の表情をするが、子供と少女にそんな顔をされた俺が、一番驚愕するわ、全く。


「ヤナ様がお決めにならないと言うことは、もうアレしかないですね」


「そうですね。アレしかありませんね」


「アレ?」


「「鍛錬で決着を!」」


「お前らに、俺を脳筋と呼ぶ資格はねぇよ!?」


「「いざ勝負!」」


 いきなり街中で、鍛錬(組手)をしようとしだすので、取り敢えず止めた。


「いい加減にしろ!」


「きゃん!」

「キャイン!」


 二人の頭にゲンコツを落として、両成敗とした。


「ったく、アシェリは子供のくせに身も心も捧げるとか言うもんじゃない。セラは、子供相手に何ムキになってるんだよ。二人とも、形だけの奴隷とメイドなんだからな」


「「……すみません……」」


 俺ら三人は、広場の屋台で昼飯を食べてから、ギルドへ向かった。


「流石にクックルさんに鍛えられただけあって、特盛もあっさり食べるな」


「勿論です。食べないと大きくなれませんから」


 セアラは自分のアレを見る。


「本当に、この子は……俺といる間に、教育し直そう……」


 そして、ギルドへと入っていくと、中は冒険者で賑わっていた。


「ここが、ギルドですか。アメノ達には荒くれ者の集まりのような所と、聞いていましたが……皆、何故ヤナ様を避けて行くのですか?」


「……さぁ、偶々だろ?」


「主様……」


 俺達は、今日も空いているエディスさんの列へと並び、すぐに順番が回ってきた。


「ヤナ君……」


「何も言うな……」


 エディスさんに、新たに増えたメイド姿のセアラを見られながら、呆れられた。ここで必死に弁解するのも余計に怪しく見られそうなので、ひとまず保留した。


「ヤナ君は、ガストフ支部長の所に行ってください。今ならちょうど倉庫にいるますよ。アシェリちゃんは、クエスト達成してるのなら、今から確認しますよ。それと、そっちの子は冒険者登録するんですか?」


 エディスさんは、セアラを見て俺に尋ねる。セアラは、エディスさんのアレに目が釘付けになっており、何故か悔しそうな顔をしているが、表情が豊かになった事は喜ばしい事だと、無理やり自分を納得させた。王女が人の胸を見て悔しがるって、どうなんだよ……


「この子の名前はセラだ。セラは冒険者登録はしない。俺のメイドとして、世話を見る事になってな。これから一緒に行動するから何かとよろしくな」


「セラです。ヤナ様の侍女として、ヤナ様にお仕えしております。以後よろしくお願い致します」


「これは丁寧にありがとうございます。私はエディスと言います。今は(・・)ヤナ君の担当ギルド職員ですよ。こちらこそ、よろしくお願いします」


 一通りお互いの挨拶も終わったところで、俺はガストフ支部長がいるというギルド倉庫に向かった。


「お、きたか! 東では、大分暴れたみたいだな。エドリックから連絡があったぞ。ガッハッハッハ!」


「まぁ、あれだけの大型の魔物は初めてだったからな。少し(・・)はしゃいじまったかもな」


「話を聞いた限りじゃ、少しって感じじゃなかったがな…まぁ、とにかく無事で何よりだ。それでキングクラーケンの討伐部位は持ってきたか?」


 俺は、瘴気纏い個体のキングクラーケンの半分を鞄から出した。


「……でかいな……話では聞いていたが、見ると圧巻だな」


「まぁな、半分はあっちのギルドに渡してきた。一つしかない部位なんかは、俺に譲ってくれたがな」


「瘴気纏いだが、しっかりとキングクラーケンだな。おめでとう! これでお前も、Bランクの冒険者だ! 異例の早さだぞ? ガッハッハッハ!」


 倉庫に響き渡りそうな声で、ガストフ支部長は笑った。


「それとな、知り合いから王都周りに出来た迷宮の話を聞いたんだが、そっちはどうなってる?」


 俺がその事を聞くと、ガストフ支部長はピタリと笑いをやめて、真剣な表情で俺を見た。


「どこで、それ(・・)を聞いたんだ?」


「Bランクともなると、色々(ツテ)もあるもんさ」


 俺はガストフ支部長の威圧を、さらりと流しながら飄々と答えた。


「ぬかせ、今Bランクなったところじゃねぇか……まぁ、いい。ここじゃ話せん。支部長室に行くぞ」


 俺とガストフ支部長は支部長室へと移動した。移動中に、瘴気纏いキングクラーケンの解体と査定を依頼した。


 部屋へと入ると、ガストフ支部長は発見された迷宮に付いて話し出した。


「お前

が、どこまで知っているかわからんが、どの道丁度指定クエストを出すところだったからな」


 アメノ爺さんから聞いていた通り、アライが東以外は発見していたが、昨日俺が帰ってくる間に東も発見したらしい。


「きれいに東西南北ってのが、キナ臭いな」


 俺がそう呟くと、ガストフ支部長も同意した。


「明らかにおかしい。まず迷宮はこれまで必ず人の集落の近くに発生していた。それが、今回は逆に一目を避けるような、凶悪な魔物の縄張り内に発生しているときたもんだ」


 ガストフ支部長は、これまでで一番顔を険しくして、次の言葉を吐き出す。


「更にだ……王都の人間に、濃い死の気配が見える」


「死の気配? 俺の危険察知系のスキルには反応ないんだが?」


「俺のスキルでな『死の宣告(死亡予知)』というものがある。これは、死の危険が迫っている人間が見えるんだ。一ヶ月程前からうっすら見え始めてな。今ではかなり濃く見える」


 戦った時に感じたあの前もって攻撃ヶ所が見えている様な感覚は、やはり予知系のスキルなのだろう。


「死の気配を感じ始めた時が、もし迷宮の発生だとして、一ヶ月そこら放置されているだけ(・・)で、魔物の大氾濫(スタンピード)は、起きるものなのか?」


「まず間違いなく起きないはずだ。普通ならな」


「……魔族が、絡んでいると思うか?」


「おそらくな。最近やけに各地で瘴気纏い個体が発見され、被害をもたらしている。一ヶ月程前に王都に近い村にあった初心者用の迷宮の、迷宮核(ダンジョンコア)が瘴気に汚染され、破壊されたと城からの情報があったしな。時期的にも、死の宣告(死亡予知)を感じる様になった頃と重なる。何か起きてるのは間違いないな」


 あの時はまだ魔族を見たことがなかった為、魔族の気配を感じることは出来なかった。もしかしたら、近くにいた可能性もあったかもしれない。


「で、俺に出す指定クエストの内容は?」


「北に発見された迷宮の調査だ。場所はケシン渓谷の奥だ。北街に抜ける道から逸れた渓谷の隙間の道を進むとあるらしい。普段はケシン渓谷の奥は、コカトリスなんかの巣になっていて、誰も進まないんだがな。アライ殿がお楽しみ(戦闘)の為に、寄り道したら見つけたんだと」


「脳筋っていうか、戦闘狂じゃねぇか…」


 俺が呆れた声を出すと、ガストフ支部長も苦笑していた。


「まぁ、そのお蔭で見つかったんだ。結果良ければだ」


「まぁ、そうだな。で、調査は俺だけいいのか?」


「あぁ、下手に中級ランク以下の冒険者に行かれて、死んでもらっても困るしな」


 新しく出来た迷宮を調査して、少しでも評価を上げたい中級ランク以下の冒険者が少なからずいるらしい。上級ランクの冒険者が先行して調査する為に、まだ迷宮発生の情報は一部の人間しか知らなかった為、俺が知っていて驚いたという事だ。


「そして、ギルドからは調査官としてエディスを付ける。頼んだぞ(・・・・)


「ん? あぁ、エディスさんなら俺に慣れてるし、問題ないだろ」


 やけに真剣な顔でガストフ支部長が言ってくるので、若干の違和感を感じたが特には気にしなかった。


 そして、俺は緊急連絡用にガストフ支部長に通信魔法(チャット)を教え、友達(個人)登録した。ひとしきり驚かれた後に、エディスさんと打ち合わせる為に、受付に向かった。


 部屋にはガストフ支部長のみが残っていた。


「ったく、あいつは本当に何者だ……?」


 ガストフ支部長の呟きに、返事をする者はいなかった。



 この日の朝、エディスはガストフ支部長の部屋を訪れていた。


「あぁ? ヤナの担当を外してほしいだと?」


「はい。お願いします」


「一応聞くが、何故だ」


 エディスはガストフ支部長を真っ直ぐ見ながら、しっかりとした口調で話す。


あたし(・・・)が、悪神の巫女だから」


「あの時の様になると、恐れているのか?」


 そうガストフ支部長が尋ねると、エディスは大粒の涙を流した。


「あたしは……『外』にでちゃダメなんだよ! また……あの時みたいに、大好きな人達が死んじゃうよ……」


「あれは、お前さんのせいじゃねぇ!……あれは少し運が悪くて、俺が油断したせいだ」


 ガストフ支部長の言葉を聞いても、エディスは変わらなかった。


「もしそうだとしても、原因はあたしの聖痕だよ。魔族と瘴気纏いを呼んだ事には、変わらない。今起きているこの迷宮の発生だって、王都にあたしがいるから……悪神の巫女がいるからに、決まってる!」


「そうかもしれんし、そうじゃないかもしれん。どちらにせよ、Bランクになるヤナには、発見された迷宮の調査を、指定クエストで依頼する。お前さんは、その調査に帯同しろ」


「な!?」


「ギルド職員で調査にいけそうなのは、お前さんだけだ。仕事だ、ちゃんとこなせよ」


 エディス表情は絶望を顔で表したようだった。


「わかったよ……なら、今回の調査が終わったらヤナ君の担当替えてね」


「考えておく。行くなら、ギルド職員のエディスなって(・・・)から行けよ」


「……わかりましたよ。それでは失礼します」


 エディスは支部長室から出た廊下で呟く。


「今回で最後よ……今回で……最後……」


 エディスは、瞳に溜まった涙を拭い、受付向かって歩き出した。


 そして、昼過ぎにやってきたヤナにガストフ支部長に会うように伝え、ガストフ支部長との話が終わったヤナが再び受付に戻ってきた。



「さぁ、またよろしくな、エディスさん」


「えぇ、またよろしくヤナ君」


 こうして、一人の異世界からの召喚者と三人の巫女が、一緒に迷宮調査へと向かうのであった。

↓大事なお知らせがあるよ∠(`・ω・´)

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