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敢えて空気は読まない

「そろそろ、いいんじゃない? 治ったんでしょう?」


 シラユキがジト目で俺を見てくるが、抱きついているのはルイであって、俺ではないと声を大にして言いたい。


「ルイ? 治った……よな?」


「チッ……治ったよぉ」


 ルイの何だか暗黒面を一瞬見た気がしたが、俺は全力で見なかった事にした。


「ルゥゥイィイイ! よかったぁああ!」


「ごふ!……喜ぶのはいいけどな? 俺ごと抱きつくな……苦しいわ」


「ヤナもよかったぁああ! あんたもあんなになって、死ぬかと思ったじゃないぃい!」


「「げふ!」」


 俺とルイが、アリスに鯖折りをくらい悶絶していると、コウヤの叫びが聞こえた。


「こっちは、割と結構ピンチなんですけどぉおお!」


「「「忘れてた」」」


「酷い!?」


 実際、結構コウヤは苦戦していた。既に瘴気纏いの怪物になってしまっているAランク冒険者のエドリックは、明らかに盗賊頭よりも強かった。地力の実力が高かった為に、瘴気纏いになった際も強くなるのかもしれない。


 そして、その様子を見て俺もコウヤと共に、瘴気纏いエドリックを相手取った。


「くっ! 流石Aランク冒険者だなっと!」


「あぁ! 結構レベルも上げて強くなったと思ったんだけどっね! こいつは、一人じゃまだ無理!」


 俺は、コウヤにエドリックの事を、掻い摘んで話した。コウヤは顔を歪めて、明らかに魔族に対する怒りとエドリックに対する同情で、感情が揺れていた。


「ヤナ! 元に戻す方法は、あるのかい!」


「生きてるうちに元に戻ったのは、一度だけアシェリが成功させている。ああなる(化け物に成る)前に、瘴気の腕輪を斬り落とすことだっと!」


「っと! 腕輪は……さっき自分で外して、壊してたよ!」


「俺が殺った(・・・)瘴気纏いの怪物になっちまった盗賊頭と……同じだな! ぐっ!」


「殺ったって、人を…?」


 コウヤが一瞬固まって、俺を見る。


「あぁ……同じ様に瘴気の腕輪を装備して怪物になった盗賊の頭をな。斬ったあと、元の人間に戻ったよ」


「そうか……」


「死んだら戻るらしい」


 俺はネミアさんに頼まれていた事を、ずっと戦いながら考えていた。


どっち(・・・)にしろ救ってください』


 殺すにしろ、腕を斬り落とすにしろという事だろう。


 もう元に戻す手段は、息の根を止めるしか残ってない。


「死ぬしか元に戻す事が出来ないなら、やる事は一つだろう?」


 俺は、覚悟を決めた。


「ルイ! こいつは、死なないともう元に戻らない! 今からこいつの息の根を止める! 俺がアメノのクソジジイに、息の根を止められた時のこと覚えてるか!」


「え!? あっ、うん! 覚えてるよ!」


「「「は?」」」


「アメノ様……何してるんですか……」


 ルイ以外の勇者達は驚き、ミレアさんが呆れている。


「今から、こいつの心臓を止める! 死んだら、身体が戻る! だが、こいつが俺と同じなら、魔力が抜け切る前に回復が出来る筈だ!」


「ふふ!『普通』じゃないね!」


「あぁ!『普通』こんなことしねぇよ! ハッハッハ!」


「ねぇ?笑う内容?」

「いや…正直内容だけ聞くと、ドン引きだけど?」

「ルイまで、笑ってる…」


「ルイ様…もうこちらには戻って来れないのですね…」


 俺は心臓を一突きするべく、狙いを定めようとするが中々動きが速く、狙いが定まらない。


「ちょこまか動きやがって!」


 そんな時に、アシェリから呼出(コール)がかかってきた。


「『ヤナだ! どうした!』」


「『アシェリです! 浜辺にキングクラーケンと更に瘴気纏い個体も同時に現れて、防衛側が持ちこたえらそうにありません!』」


「『くそ! 次から次へと!』」


「『あと、人魚のネミアさんですが、彼女が何か『見つけた!』と叫びながら何処かへ駆け出して(・・・・・)行きました! エディスさんは、彼女を追いかけて行きました!』」


 ネミアさんは何か(・・)を、『見つけた』らしい。彼女が短時間しか出来ない()を使ってまで、駆け出す何かとは何だ。


「『アシェリ! 今何処にいる!』」


「『ネミアさんに高い所はないかと聞かれて、浜辺の監視塔の一番上にいますが何か?』」


「『しまった! ここ(・・)か!』」


 ネミアさんは高台から、ここ(・・)の場所を見て探していたのだろう。


「ヤナ君!」


 その時、エディスさんの俺を呼ぶ大声がした。咄嗟にそちらを向くと、エディスさんの前をネミアさんがエドリックに向かって、走っていた。


「エド! もうやめてぇ!」


 俺はネミアさんからエドリックを挟む形で反対側にいた為に、間に合わなかった(・・・・・・・・)


 ネミアさんが近づいて来ていることに気付き、エドリックは後ろを振り向いた。


 そして、悲劇は起こった。


「グルアァアアア!」


「ごふっ……エド……もう……やめて……貴方は、あんな魔族になんかに……負けないで……」


 エドリックの腕が、ネミアさんの胸を貫いた。


 そして、ネミアさんの言葉をきき、エドリックは一瞬硬直した。そして、ネミアさんはその瞬間に、口から血を流しながらエドリックに口づけをした。


「……グ……グガァアアアア!」


 エドリックの目からは涙が流れ、誰が聞いても心が締め付けような慟哭が、その場に響き渡った。


 そして、みんながその悲劇の光景に心を痛めている中、そっと俺はエドリックに近づき背後から心臓を貫いた。(・・・)


「「「空気読め!?」」」


 勇者達の失礼な発言はスルー(無視)して、ルイを呼ぶ。


「ルイ急げ! ネミアさんを回復だ! まだ魔力が残ってる! まだ、完全に死んでないぞ!」


「わかったよ!」


 ルイが駆け寄ると同時に、エドリックの全身とネミアさんの貫かれた胸の傷を『神火の清め(アブルーション)』で、瘴気を浄化する。


 そして、心臓を貫いた瘴気纏いエドリックが徐々に元の身体に戻っていく。心臓を貫かれて、徐々に身体が死んでいく。




「……早く……早く……戻った! 今だ! ルイ! エドリックもだ!」


「任せてぇ! えぇえええいい!」


 ルイの回復魔法によって、一足先に回復したネミアさんが、倒れているエドリックに抱きつく。


「エド! 目を覚まして! お願い……また私に、貴方の笑顔を見せて……」


 ネミアさんが、エドリックに優しい口づけをした。


「……ん……ネ……ミア……? 何故ここに……」


「エド!」


 ネミアさんがエドリックに、泣きながら再び抱きついた。


「普通逆だよな? 口づけで起こすのは」


 俺は笑いながら、隣のルイに話しかける。


「まぁ、いいんじゃない? これも、ふふ」


 ルイもつられて笑っていた。


 すると、突然エドリックが大声で叫ぶ。


「そうだ! ゲッソは何処にいる!」


「ゲッソさんなら、瘴気纏いキングクラーケンの担当職員ですから、今は浜辺の前線で指揮をとっていると思いますよ?」


 エディスさんが、エドリックさんに当たり前(・・・・)のことを告げた。


「あ……あいつは……魔族だ! 俺達の船を、あいつが大渦で大破させたんだ!」


 全員が驚きと共に、浜辺の方向を見た時、ここからでも見える程の瘴気纏いキングクラーケンの巨大な身体が姿を現した。

↓大事なお知らせがあるよ∠(`・ω・´)

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