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召喚されし勇者

 俺のプレートに表示された文字の中には『勇者』の文字は無く、代わりにステータスプレートには『称号:召喚を要求した者』と表示されていた。


「………」



『何かわからんが……連れて行くなら……俺も連れて行け!』



(……あぁ……うん、思いっきり心当たりがあるな)


 そこへ『勇者』達の声が聞こえてきた。


「うわ! 本当に『召喚されし勇者』ってあるよ。しかもジョブも『勇者Lv.1』だ。これ、レベル制なんだ……」


(輝石は『召喚されし勇者』か、ジョブも『勇者』ってどんだけ勇者してんだよ……)


 他の御楽、洲田、柊さんも『召喚されし勇者』だった。


 ステータスプレートを他者にも見れるようにしてもらい、ジョブやスキルも確認した。


(ジョブは輝石『勇者』、御楽『聖女』、洲田『大魔導士』、柊さん『剣聖』か…スキルも聖剣召喚やら詠唱破棄、限界突破、縮地やらと皆さんチートの塊みたいになってるな)


 俺以外のステータスプレートをセアラ王女の周囲にいた人達がみて一様に驚いて喜んでいた。

 ふと疑問に思ったため、無表情に立ってその様子を黙って見ていたセアラ王女に話しかけた。


「セアラ王女……様? 何であんなに驚いて喜んでるんだ、あの人達。これまでの勇者も、あんな感じじゃないの?」


「勇者召喚で召喚された勇者様方は女神様の使徒様ですので、セアラとお呼びくださって結構です。そして今のご質問ですが、それはこれまでの勇者様でも『刀工』や『錬金術師』といった生産職としては強力なのですが、決して戦闘向きとは言えないジョブの方もいらっしゃいました。その際の魔王討伐は、必ずしも順調に行かなかった事が多かったそうです。今回の勇者様方のジョブは明らかに戦闘向きであり、特に『勇者』のジョブを得ることは『勇者の中の勇者』と言われております。その為ではないでしょうか?」


「なるほどね。あと俺は勇者じゃないぞ。ジョブが勇者じゃないって意味では無く、『召喚されし勇者』じゃないって意味ね。ほら」


 俺のプレートプレートを見れる状態にしてセアラ王女に見せた。すると僅かに目を見開き、俺を見て固まった。


「富東のステータスは、どうだった?」


 輝石達4人に俺のステータスプレートを見せると、同じく固まった。


「召喚を要求した者ってなんなの、富東?」

「ジョブの『冒険者』ってどんなの?」

「スキルが二つだけ……?」

「名前がヤナ・フトウって……カタカナ表記で外国人みたいだね……」


 若干一名驚く所が違ってる奴がいるが……


「御楽……自分のステータスプレートの名前もそうなってるだろうが……まぁあれだ、俺は柊さんが召喚されてる時に、確かに『俺も連れてけ』って言った記憶あるしな、そのせいじゃないかな多分。『冒険者』ってジョブについて俺に聞くな、分からん。スキルが言語/文字理解|(発動)ってのは全員が持ってるし、発動って表示されてるから、きっとこのスキルのお蔭で今も世界の言葉が理解出来てるんだろうけど……不撓不屈(折れない心)は何だろうな? それに俺以外の皆は、スキルが既に六つも有って俺が二つしかないのは……聞かないでくれ、哀しくなる……」


 俺が話してる時も御楽の「ほんとだ!? 私、帰化しちゃったの!?」とか聞こえてきたが、全員スルーだ。すると柊さんが、顔を真っ青にしながら俺を見ていた。


「富東君……ごめんなさい……私の所為で巻き込んで……」


「それは違う。俺は自分で勝手に柊さんに付いてきたんだ」


「だって……最後の方はあんまり覚えてないけど……最後まで私を助けようとしてくれてた……よね?」


  (ん? 柊さん覚えてないのか……それなら……)


「まぁ確かに最初は助けようとしたけど、結局全く助けられなかったしな。諦めて(・・・)様子を眺めてたら、もしかして最近ネット小説で読んだ世界召喚か! って思って試しに「俺も連れてけ!」って叫んだらほんとに来れた感じだな。ほら、ここにその証拠があるぞ。『召喚を要求した者』って」


 俺は笑いながらそれを見せた。


「……そっか……やっぱあれは、夢だったんだ……」


 柊さんは何か呟いていたが、特に反論もなかったので一応は信じたんだろう。召喚を要求したのは、あんな目をした柊さんを、どうしても見捨てられ無くて意地になった結果……なんてこと言ったら、また気に病みそうだしな。


「ということなんだけど、俺はどうしたらいいの?」


 再びセアラ王女の方に顔を向けた所で、いつの間にかすぐそばまで来ていた目つきの鋭い白髪の壮年の男が、俺を睨みつけていた。


「おい貴様! 話を聞いておれば勇者様ではなく勇者様に勝手について来ただけと言うではないか! 勇者様でもないのに、我が国の第一王女であらせられるセアラ様に無礼であるぞ! しかもジョブが『冒険者』だと! 冒険者なんぞギルドに登録すれば誰でも冒険者になれるわ! ましてやギルドに登録する冒険者でも戦士職や魔法職、回復職、斥候職などのジョブを持っておる! ジョブが『冒険者』など聞いた事ないわ!」


 人間いきなりキレられると反応できんもんだなぁと唖然としていると、セアラ王女がその男を窘めた。


「サーレイス、少しお黙りなさい。大臣である貴方が取り乱してどうするのです。ヤナ様も他の勇者様同様に理由はどうあれ、勇者召喚でこちらの世界に来られたのです。『勇者』の称号を持たずとも女神様の使徒様であることは変わらないでしょう。これまで、勇者召喚に巻き込まれた召喚者はいなかったのですから、ヤナ様が召喚陣を通れたということは、それだけで女神様の使徒様である証です」


「そうなのか?」


「また貴様! 馴れ馴れしく!」


「サーレイス……」


 セアラ王女が、じっとサーレイスを見ていた。黙れということらしい。


「これまで召喚された勇者様の記録には、召喚された時の勇者様の世界の状況を記した記述も有るのです。皆様も覚えている方もいらっしゃるでしょうが、召喚される際に足元から円形に模様が浮き出た筈です。それが召喚陣と呼ばれる魔法陣なのですが、召喚者以外がその召喚陣の中に居ても、こちらに召喚された方はお一人だったそうです。ですので、女神様から我が国にもたらされた勇者召喚によって招いた方は、すべからず女神様に選ばれた使徒様だと考えられているのです」


 そしてセアラ姫は、サーレイス大臣を一瞥してから再び俺たちに顔を向けた。


「我が国の大臣の非礼、誠に申し訳ございません。そもそもジョブについても、勇者様が得ているジョブはこの世界の者が自力で取得出来たという記録が無いため、基本的に召喚された勇者様しか自力で取得することのできない特別なジョブだと考えられています。その為、ジョブとしての『冒険者』が聞いたことなくても、何らおかしくないでしょうに……」


 セアラ王女の話を聞いているうちに冷静になったのか、サーレイス大臣が再び俺の顔見ながら声量を抑えて、感情を押し殺した様な声で話し出した。


「……確かに、セアラ様の仰る通りでした。取り乱し誠に申し訳ございません。ヤナ殿においても召喚陣を通って召喚されたという事は、女神様の使徒様であるというのに、無礼且つ不快な思いをさせてしまい誠に申し訳ございませんでした」


(明らかに納得してなさそうな顔してるが……どうなるもんかなぁ)


「……特に気にしてないので、大丈夫です。それよりこれからどうなるか教えて欲しいんだけど」


「今から魔力の保有量を計測してから、王との謁見となります」


 魔力は魔法やスキルを使う時にも使用する物らしい。ゲームでいうところのMPってやつだろうか?


 なんとなくオチが見えつつも、魔力量を計測出来る魔道具とやらで俺たちを計測した結果……


「おぉ! 流石勇者様方! 魔力量が計測可能値を振り切ってしまいましたな! ヤナ殿は……まぁこの世界の一般人と同じくらいですかな。凡人レベルと言えば、分かりやすいでしょうか?」


 ニヤニヤと此方を見ながら話してくるサーレイス大臣に流石にイラついていると、セイラ王女がこれまでで一番険しい顔をしていた。


「ヤナ様……もしかするとご自身の魔力だけでは、例え瘴気が晴れても送還術が発動しないかも知れません」


「……そうなのか?」


「送還術は召喚陣と表裏一体の術ですので、召喚陣が土地からの魔力を貯めている間は送還陣は魔力を貯めることが出来ません。その為、勇者様ご自身の膨大な魔力を代わりに使うことで発動させるのですが……これまで召喚された勇者様の魔力は、全て膨大な量でした。その為、送還術は必ず発動しましたが、ヤナ様の魔力量では……おそらく……」


 俺以外の四人が、俺を困惑した目で見ている。俺は、四人を見ながら笑いながら話す。


「まぁ、俺は『召喚を要求した者』だからな。皆んなと違って、自分で要求してこっちの世界に来た訳だし。それに、まさかの魔法もあるっぽいしな。こんな剣と魔法の世界なら、しばらく帰るつもりも無かったから調度良いってなもんだ」


 御楽以外は、それを聞いて呆れた様な顔をしていた。御楽は、何を考えているのか分からない顔をしていた……天然は読めない……


「さあ! それでは勇者様方はこれから王との謁見の為に、王がいる謁見の間に移動して頂きます。ヤナ殿は……客間にて、勇者様方が謁見から戻られるのをお待ちください」


「え!? 富東は王様とは会わないの?」


「王は勇者召喚を実施した国の主として『召還されし勇者』様に、『魔王の討伐』を御依頼する為に勇者様とお会いになるのです。女神様の使徒様であっても、勇者様ではないヤナ殿に魔王討伐のご依頼はありません」


 サーレイス大臣は、俺に見下した視線を向けながら言いきった。


「……まぁ、そうなるよな……なら、魔王をどうするかはお前らで勝手に決めてくれ。俺は勇者じゃないから魔王を倒さなくても良いみたいだし。そもそも俺は、別に帰れなくても構わないしな。ファンタジーな冒険が俺を待っている!」


 握り拳を掲げて、言い切ってやった。


「「「「………」」」」


 勇者達に、ジト目で見られていた気がするが気にしない。キニシナイ……そして勇者達は無言で、王との謁見の為に大臣達に連れられて歩いて行った。


 そして俺は召喚者としてのお約束(テンプレ)、王との謁見をする事はなかった。



↓大事なお知らせがあるよ∠(`・ω・´)

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