流れ星に願いを
刻は俺が商隊と別れ、一人召喚陣を破壊しに魔物の群れに突っ込んだ所まで遡る。
「おらぁあああ! 邪魔だぁあああ! 『十指』『極炎大円球』『収束』『形状変化』『巨人の投球』『自動操縦』! ストラァアアアアイクウウウ!」
極炎で創り出した巨大なボーリングの球を、俺の進行方向に自動で転がしながら進んだ。魔物を吹き飛ばし、轢き殺しながら進む。獄炎を形状変化で、硬く圧縮している様な状態にしているので、森は破壊しても燃やしていない。被害を最小限に抑えた自然に優しい設計である。
「「「ギャァアアアアアア!?」」」
魔物の断末魔を聞きながら進み、いよいよ魔物の勢いが増してきた中心に行き着いた。淡く光る魔法陣から続々と魔物が溢れ出ている。
「わらわら出てきやがって! 『巨人の黒炎投球』『形状変化』『巨人の黒炎槌』! 砕けろぉおおお!」
魔法陣から湧き出る魔物ごと、『巨人の黒炎槌』で叩き潰した。
「「「グギャアアアア!」」」
「……これは不可抗力だな……うん」
地面にでかい陥没を作ってしまったが、見て見ぬ振りをした。そして新しい魔物が出てこないことを確認して、もう一箇所の魔物の気配が湧き出している場所へと駆け出した。
同じ様に魔物を転がり潰しながら進み、先ほどと全く同じ様に見える魔法陣を発見した。
「こいつで終いだぁあ! 『巨人の黒炎槌』!」
轟音共に地面が割れ、魔法陣を地面ごと叩き割った。
「よし! これでもう、大丈夫だろうっ!? ぬあぁ!?」
急に『死神の慟哭』が警告が発せられ、突然発動した『生への渇望』により、首元へと迫る剣戟をギリギリ交わした。首筋には、若干血が流れていた。
「ほう、完全な死角からだったんだがな、避けるとは中々やるじゃないか」
さっき迄俺が立っていた所に、貴族の様な青年が立っていた。
「……貴族の様な格好をしているが、お前は魔族か」
「一目で俺を魔族とわかるか。人族の偉い奴の格好してきたんだがなぁ。似合うだろ?」
「そういうのをバッタモンて言うんだよ。本物の偉い奴は、そんな汚ねぇ瘴気なんぞ纏ってねぇよ」
「言うじゃないか。ガルガロイを殺して、調子に乗ってるのかなぁ? んぅ?」
目の前の魔族は、ニヤニヤと嗤いながら喋りだす。
「知っているぞ? ヤナと言ったな。お前の様なゴミに殺られるガルガロイは、とんだカスだな」
「あん? 彼奴は魔族四公爵とか言っていたが、まさか『奴は四公爵の中でも最弱!』とか言い出すのか?」
「なんだそりゃ! ギャハハ! 公爵だ何だのってのは、遊びだ遊び。名乗りたい奴が勝手に名乗ってるだけだ。因みに俺はラオライン男爵だぞ? ガルガロイ公爵殿は使えねぇ公爵殿だったが、俺は公爵より偉い男爵だぁ。強いのが偉いんだろ? ギャハハ!」
何だかうるさい奴だなと思っていると、ある事に思い至る。
「おい、お前はガルガロイより強いといったな」
「あぁ、あんなカスよりも数段強い……なんで貴様、笑っている」
俺は思わず嗤ってしまっていた。何故って?
「だってな、鍛錬に丁度いいじゃないか。お前を今のままで斬ることって、結構な『冒険』なんじゃないかなと思ってな。レベル上げに丁度いい」
「貴様……俺を斬ってレベル上げだとぉお!」
「ガルガロイは斬って三つ上がったからな。お前は幾つ上がるかな? 逃げるなよ? 『狂喜乱舞』『青嵐』!」
「ぐぬおおお! 風魔法でもない癖に……ぐぅ!」
二刀による連続の鎌鼬を放ち、全方位からの斬撃の鎌鼬でその場に押しとどめる。
「『双子』『極炎の大円絶壁』『形状変化』『黒炎鳥籠金網デスマッチ』っと」
「何だこれは!?」
「何だ知らないのか? お前も漢なら……魔族に男も女もあるのか? まぁいいや、兎に角かかってこいやぁああああ!」
と言いつつ、俺からラオラインに斬りかかる。
「ぐぬ! 貴様! 自分の仲間がどうなっているか……知らないだろう? クックック、ぐあ! ギャアアアア!」
取り敢えず鍔迫り合いから、黒炎の金網に蹴り飛ばしてやった。
「笑うか悲鳴か、どっちかにしろ」
「お前は、鬼か……何故、本来の野営地が荒らされていたと思う? 何故、一方向だけ残して魔物の大群を襲わせたと思う? クックック、お前らは俺に狩られているんだよぉ!」
何となく嫌な予感がしていたのは、魔族の悪巧みらしい。
「獲物を追い込んだ先には、全方位の隔離結界の罠が張ってある。逃げられたと思った所で、ぜぇえええんめつっとぉ! ギャハハ!」
「あんな魔物程度なら、俺の仲間なら屁でもないぞ? 魔法陣も壊したしな」
「ばぁかめぇ! これなぁんだ?」
ラオラインは、見覚えのある瘴気が染み込んでいる腕輪を俺に見せつけてきた。
「お前……それをどうした」
「ハァアハッハッハ! 漸く嗤うのをやめたな? 想像してる通り、俺ら魔族が作ってばらまいてるんだよぉ! さて問題、獲物を追い込んだ先には逃げられない柵を用意しました。その可愛い獲物ちゃんに何が襲いかかるでしょう? ギャハハ!」
「なら、さっさとてめぇを斬って、俺がそいつらを斬るだけだ!」
俺は瘴気纏いになった人間が、商隊を待ち伏せしている事を確信した。その為、多少地形が変わっても仕方がないと諦め、腕輪と指輪を外そうとした瞬間だった。
足元に、新たな魔法陣が出現したのだ。
「なんだ!? 身体が浮いていく!?」
魔法陣から俺は浮び上らされ、四方を結界の様なものに囲まれた。
「俺は、人間共を狩る狩人だぞ? 罠も仕掛けず魔法陣だけ置いとく訳ねえだろうがぁ!」
俺は既に、森の上まで浮かび上がっていた。
「先ずお前は、仲間を見殺して城に戻ってな! 沢山仲間でも連れてこいよぉ? みんなで仲良く仲間の死骸を取りに来て、何でお前が城に居たのか説明するんだなぁ! 魔物に食い散らかされて、誰が誰だか分からん死骸を見ながら、言い訳でもするんだなぁ! ギャァハッハッハ!」
俺は上からラオラインを見下ろしながら、腕輪と指輪を外し全力の殺気と威圧を込めて、ラオラインに語りかける。
「お前が人間の狩人なら、俺はてめぇらクソ野郎を狩る狩人だよ。待っとけよ? 直ぐ戻るぞ」
「……捨て台詞はそれだけか? 自分が何も出来ずに、仲間が蹂躙される様を想像して絶望するんだな……『強制移動』発動!」
そして俺は物凄い速さで、城のある方向に飛ばされた。この強制移動中は俺の通信魔法も強制的に切れるみたいで、何度呼出しても駄目だった。
腕輪と指輪を外した状態の全力で結界を斬りつけたが、未だ今の俺の実力では斬れる類のものでは無いらしい。次は絶対斬ってやると心に誓いながら、心を落ち着かせ全身に『神火の鎧』を形状変化で纏い、二刀の大太刀『烈風』『涼風』に神火を付与させる。
「そろそろ城の真上だな……今は仲間のピンチだぞ……俺にとっての窮地だ……今が窮地だと言わずに、何が『起死回生』だぁああ!」
俺は無理矢理に『起死回生』を発動した。
「『神殺し』『天下無双』『疾風迅雷』!」
そして俺の周りから結界が消え、王都の上空に放り出された。
「『神火の断崖』『形状変化』『神火の発射台』!」
俺は空中に、浮かぶ発射台を形状変化で作り出した。
「『神火の鎧』『部分的』『形状変化』『神火の大翼』からのぉ!『神火の大翼』『形状変化』『神火俺込誘導弾』『対象:ラオライン』!俺発射ぁああああ!」
その日の王都では、突然爆音と神々しい光が夜の街を照らした。そして、一筋の神の炎が北に向かって線を引いている姿をみた人々は、流れ星に願いをかける様に、それに願いを掛けた。
「チンケな罠なぞ、全部吹き飛ばしてやるわぁああああ!」
そして夜空に、ヤナの叫びがこだました。
↓大事なお知らせがあるよ∠(`・ω・´)





