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どっちでも一緒じゃない?

「……もう一度、言ってもらえる?」


「コウヤ君は、身体は男、心は女。そして、ヤナ君が好きなんだよ!」

「ボクは、身体は女で、心は男。そして、ヤナが好きなんだ!」


「同時に言うと、ちゃんと聞こえないってのよ! はぁ……あんた、身体も心も男じゃなかったの?」


 アリスは同時に喋るルイとコウヤにイラつきながらも、コウヤに対して問いかけた。それもなるべくあたかもコウヤの相談に乗るように、優しさを含んだ口調だった。


「うん。ボクは、身体は女で、心は男なんだよ」


「それでいて、ヤナ()が好きと……だってルイ。ん? なに金魚みたいに、口をパクパクさせてんのよ……」


 アリスは、隣で驚愕の表情をしながら、口をパクパクしているルイに呆れていた。しかしルイは、そんなアリスに対しても驚いていた。


「アリスちゃん!? 何というリアクションの少なさ!? 結構なカミングアウトだよ!? 私とか結構自信満々に当てに行って外したから、割とビックリ度合いが高いよ!?」


「そんな事言ったって、それが拗れた原因だとして、特に問題ないじゃない。それに、何であんたはコウヤの事を、そんなふうに思ってたのよ。私とか、全然わかんなかったけど?」


「アリスちゃんは、無自覚ツンデレ系だから恋敵に気付きにくいんだよ! 恋する乙女のアンテナは、いつでも感度良好なんだよ!」


 ずいっと胸を張り上げるルイは、目をキラキラさせながら声を張り上げた。三人の空気は、ガールズトークの様な雰囲気になりそうであるが、上空では古代竜同士、すぐ脇ではヤナビが勇者の盾の包囲網を抜けようとしている。さらには宙に浮くエイダは、明らかに燃えている。


「誰が無自覚ツンデレ系よ! それに何いきなりコウヤを私の……恋敵宣言してるのよ! それじゃまるで……って、え? 何、その目は?」


 何故か、コウヤとルイが自分に向かって目を見開いている事に、思わずアリスは後ずさりをしてしまっていた。


「嘘でしょ、アリスちゃん」

「アリス、本気で言ってるの?」


「コウヤまで何なのよ! あんた闇落ちしてる癖に、私に向かって憐れみの目線を投げかけるんじゃないわよ!」


「流石に、バレてないとアリスが本気で思っていると思わなかったから。アリス、ヤナの事が好きだよね?」


 今度は、アリスがコウヤの言葉に驚愕の表情をしながら、口をパクパクしていた。


「……はぁ!? は……はぁ!? なななな何言ってちゃってんの!?」


「アリスちゃん……魔王城に来るまでの間、宇宙戦艦ヤナトの中でヤナ君に対してツンデレってたのに、周りが気づかないとか……ないよ?」


「……そんな事は、どぉおおでも良いのよ! 今は、コウヤが拗れたのを何とかするのが、私達の役割だったでしょ! コウヤ! あんたがサッサとスッキリしないから、私に流れ弾が飛んできたじゃない!」


 アリスは顔を真っ赤にしながら、コウヤに明らさまな八つ当たりをしていた。しかしコウヤは、アリスに怒鳴られたにも関わらず、変わらず目は死んだ様な深い闇しか写っていなかった。そして、コウヤは感情を表に出す事なく話を始めた。


「ボクは物心ついたときには、自分の事を『身も心』も"男"だと思い続けてきたんだ……この世界に、飛ばされるまでは」


「ん? 語りたいの? まぁ、聞くけど。この世界に、飛ばされるまで? それに『身も心』もって……そんな事、あり得る?」


「私も、コウヤ君が水泳とかしてるの見てるよ?」


 突然語り出し始めたコウヤに対し、アリスもルイもあっさりと順応し話を聞き始めた。


「それは、ボクも分からない……でも確かなのは、この世界に来てある(・・)と思っていたものが無くなり、ない(・・)と思っていたものがあった」


「あ……うん。そうね……」

「それは、ビックリだね!」


「でも、そんな身体の変化は些細なことなんだ」


「些細な事じゃないわよ?」

「コウヤ君、案外適当なんだね」


 コウヤからポンコツ臭が醸し出されると、二人は若干テンションが下がった。


「ボクは……ボクは……男なんだ! でも……ヤナの事が好きになってしまったんだよ!」


「でも、身体が女だってこっちに来て分かったんでしょ? ならヤナ的にも問題ないでしょ」


「……え?」


 自らの魂の叫びに対してアリスの呆れ声を含む言葉に、コウヤは思わず固まった。


「だ……だって、ボクは心は男なんだよ!?」


「コウヤ君……君って奴はは……君って奴は……それが何だって言うんだよ! 此処は異世界で、コウヤ君は実は身体が女で、何より好きになった相手がヤナ君(変態の中の変態)だよ! それがどうしたって言うのさ!」


 ルイは、拳を握りしめながら、あらん限りの力を込めて叫んだ。


「既にヤナ君は、お姫様、獣人、エルフ、元魔族などなどから、このラスボスをクリアしたあとに、壮絶な攻略戦を仕掛けられると言うのに……コウヤ君なぞ、むしろ普通!」


「えぇ! ボクは普通なの!?」


「いや、結構特殊だと思うわよ? そもそも、元の世界で自分も周りも男の身体に見えるようにしてたって、まるで幻影魔法とか使われてるレベルだし、医者とかどうしたのとか、色々ツッコミ入れたいわよ?」


 そしてルイはビシッとコウヤに対して指をさすと、キメ顔で語りかけた。


「人を好きになるのに、性別や種族なんて、関係あるのかい?」


「!?」


「普通は、そこそこの壁になるわね」


 その時だった。ヤナビを取り囲んでいた勇者の盾が消えていき、コウヤの目には光が戻っていった。ヤナビは、自由の身になるとすぐに三人の元へと駆け寄ると、コウヤの目を覗き込むと、数秒後に安堵の息を吐き出した。


「どうやら、コウヤ様の闇は去っていった様ですね」


「ヤナビ先生、コウヤだけど結局グダグダの感じで正気に戻った感じだけど、本当に大丈夫なの?」


 アリスはコウヤが、最後はあんなあっさりと証拠に戻った事に疑問と不安を感じていた。それはノリで叫んでいたルイも同じだった。


「まぁ……うん、大丈夫でしょう。結局、その辺はマスターに丸投げで構わないでしょう」


 ヤナビは、最終決戦に向けて仲間達と『接続』の必要性が出てくるだろうと、宇宙船艦ヤナトにいる間に、事前準備としてヤナビ単体で『接続』を行っていた。『接続』することで、相手の情報などが本来であればヤナビの主であるヤナに流れ込む筈だったが、ヤナの力が神に近づいていることもあり、ヤナビもまた『情報統制』の力が増しており、ヤナが知らなくても良い情報に関しては、流れこまないようにしていた。


 その中で、コウヤが元の世界における立場や現状についての情報もヤナビは得ており、悪神につけこまれた本来の闇というのは、出自からくるコウヤの生き様であり、本人さえ分からぬほどに隠蔽されていた性別などもこれにあたっていた。


 その心に抱える無自覚の闇と同じくらいコウヤを悩ませていたのは、ヤナへの恋心ということであった。その結果、本来の原因である元の世界の問題を、思春期の恋の悩みが凌駕してしまい、恋の悩み相談というもので解決に至ってしまったのである。


「まさか悪神も、こんな場所で恋の悩み相談をした挙句に、解決するだなんて思わなかったでしょうね……」


 酷く憐れむような表情をしながら、三人の様子を眺めていたヤナビだったが、突然の不死鳥の鳴き声で今も空中で燃えていたエイダへと視線を移したのだった。


 燃え盛る炎は、やがて大きな翼へと形を変え、まるで何かを包み込むようだった。そして、ゆっくりと翼が開くと、その中から一人の少女が現れた。呆然とした表情を三人向けていたが、あたりを見回しヤナを見つけると覚醒したかのように目を見開き声を上げた。


クケェエエエ(ダーリン)!」


「「「……えぇえええ!?」」」


 最終決戦を目前に控え、現場は未だカオスである。


↓大事なお知らせがあるよ∠(`・ω・´)

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