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再会

 鍛錬を開始してから一週間は、日の出前からのジョギング、朝飯後から昼食までのアメノ爺さんとの稽古(サンドバック)、昼飯後はエイダさんとの魔法練習(あの人絶対S)、クックルさんとの座学(失敗即ち死)という親切な対応(絶対いつか殴る)を毎日続けたことによって新しいスキルも覚えた。ステータスプレートを城にいる間貸してもらい何時でもステータスを確認出来るようにして貰いちょくちょく確認していたが、冒険者ギルドで登録時に貰えるギルドカードも、ステータスプレートの機能を持っていると教えてもらい安心した。


「ステータスオープン」


 人前でも臆することなく詠唱出来る様になったのは、成長だと思いたい。決してあの病(中二)に毒されてきたわけではない……無いったらない。


 --------------------------

 ヤナ・フトウ


 17歳


 状態:

 豪傑殺しの腕輪【発動】

 魔導師殺しの腕輪【発動】


 ジョブ:

 冒険者Lv.1


 称号:

 召喚を要求した者


 スキル:

 不撓不屈(折れない心)

 言語/文字理解

 身体強化(中)

 魔力回復(中)

 魔力制御(中)

 痛覚耐性(小)

 集中

 火魔法(駆け出し)

 --------------------------


 師匠達のご指導(絶対イジメ)のお蔭で、スキルの効果も小から中に上がっていた。何より遂に火魔法(駆け出し)を、昨日覚えることが出来たのだ。火魔法は所謂魔法覚えたての駆け出しと言った熟練度らしい。更に熟練度が増していくと炎魔法(一人前)焔魔法(熟練者)獄炎魔法(極めし者)とスキルも成長していくそうだ。獄炎魔法(極めし者)の更に上の熟練度があったらしいが、今は使える者が居ないらしくどんなものかも分かっていないが、他の属性魔法も大体こんな感じだという事だった。


 この説明を受けた時に、「獄炎魔法だと……か……かっこいい……」と呟いてしまったのは不覚だった。生温かい目で見てきたエイダさんが、どこまでの熟練度があるか聞いてみたのだが、珍しく微笑みながら呟かれた。


「ふふふ……聞きたいですか?」


 何故か物凄い背筋に悪寒を感じたので、全力でご遠慮願った。聞くときは確実に逃げられる状況と、実力を得てからにしようと心に決めた瞬間だった。常識人に見せかけた脳筋が、一番タチ悪い。そんなギャップに萌える性質は、俺にはない。


 そして、痛覚耐性(小)だ。これに関しては……もうあれだ……絶対爺ぃを殴る! これしか、思う事はない。しかしこのスキルを取得出来たお蔭で、アメノ爺さんとの組手中の痛みや魔力枯渇による頭痛等の痛みも、幾らかマシになったのは有難かった。スキルを覚えた方法は、全く有難く無かったが。


 そして今朝の朝食時に、スキルの数も増えた事を伝え、一般的な冒険者はスキルをどれくらい覚えているのかアメノ爺さんに聞いてみたが、まちまちらしい。器用貧乏で数だけ多く弱かったり、逆に数が少なくとも強力なスキルを持っている者とか様々なのだと。


「そもそも強者は、自分の手の内であるスキルを他人においそれと教えんしの。ヤナ殿も、これから冒険者となる身じゃ。何時どこで誰と戦う事になるか分からんのじゃて、今指導している儂等以外には、自分の手の内は隠しておくべきじゃよ。罪人や奴隷にでもならない限り、ステータスプレートの開示の強制をされることはないじゃろから、自分で吹聴しない限りは基本大丈夫じゃがのぉ」


 しかし、スキルの中には『隠蔽』や『鑑定』と言ったものがあるらしく、ステータスプレート内容を開示しても一部を隠したり、開示許可をしていないステータスを見る事ができるスキルらしい。


「まぁ『隠蔽』はともかく『鑑定』スキルはこれまでの記録に存在したとあるだけで、儂も取得しているという者を実際に見た事は無いがの」


「そうなのか……それと俺のジョブレベルなんだが……Lv.1のままなんだが……ジョブレベルは鍛錬では上がらないのか?」


「そんなことはないんじゃがの……ジョブレベルは、ジョブの種類によって上がり方が異なるのじゃ。大体戦闘職は、鍛錬含め戦う事で経験を積みレベルが上がるのぉ。回復職などは人を癒すことで、やはりレベルがあがるのぉ。生産職は物を作り出す事でレベルは上がるしや……ヤナ殿は『冒険者』じゃったが、もしかしたら安全な訓練では上がらんのかも知れんの。もうちっと、『冒険』せにゃならんかもしれんの……」


 アメノ爺さんが不穏な事を呟き出したところで、エイダさんから声がかかった。勇者達から一度現状確認し合わないかという打診があったらしい。俺も勇者達がどんな訓練をしているのかや、ジョブレベルについても聞いてみたかったので了承した。あちらは何時でもいいとの事だったので、今が朝食を終えて丁度良かった為、今から向かう事にした。勇者達は、王国騎士団長から指導を受けているらしく騎士団の訓練場で鍛錬しているとの事で、そちらへアンさんの案内で向かった(アンさんかアニーさんか分からなかったが、察してくれて名乗ってくれた)。


「おっ! やってるな……どんな感じの訓練なんだろ……少し見てみるかな」


 アンさんに少し見てから声をかける旨を伝えて、少し覗いてみる。


(うぉ……装備が既に煌めいてるな輝石の奴……持ってる剣はごっついけど、あれは聖剣召喚の聖剣とかかな?)


 輝石は正に勇者という出で立ちをして、全身鎧の相手と組手をしていた。


「コウヤ殿! 相手が怯んだ所に畳み掛ける様に、剣技を放つ!」


 輝石が横薙ぎの一閃で全身鎧の騎士を盾ごと剣で叩きつけ、体勢を崩した所でそれを見ていた騎士から指導が飛んでいた。


「はぁー! 龍牙(ドラゴン)スラッシュ!」


 轟音と共に相手の全身鎧の騎士が、全身鎧を粉々に砕かれながら吹き飛んでいった。


「……え?……あれ死んでない?」


 俺が相手を吹き飛ばした輝石の技を見て驚愕していると、別の場所から洲田の声が聞こえた。


雷鳴(ライトニング)(バリスタ)! いっけぇー!」


 城でも破壊する気かというデカイ稲妻の弩が洲田から離れた所にいた魔法使いのローブみたいな物を着た女性に、雷鳴を轟かせながら直撃していた。


 黒を基調としたゴスロリの格好をした魔法少女が、ドヤ顔で爆音と共に消し炭になった相手のボロボロのローブを見ていた。


「はい?……何? あの危ない魔法少女は?」


 洲田のハイテンションに引いていると、柊さんの声も聞こえた。恐る恐る見てみると、こっちもエグかった。


「これで終わりよ! 星降る(スターダスト)剣撃(スラッシュ)!」


 姫騎士の様な格好をしている柊さんの相手をしていた剣士の上部から、無数の斬撃が降り注ぎ、相手は捌ききれず斬撃の雨に沈んだ。


「……容赦ねぇな……オーバーキルだろあれ……」


 余りの思いっきりの()りっぷりに戦慄していると後ろに控えていたアンさんが、この事態を説明してくれた。


「この訓練場は、特別な魔道具による結界が張られております。結界内でのダメージは魔力に代替され結界の外に出ると『なかったこと』になり、結界内で死亡した時は、結界外に気絶した状態で放り出されます。ですので、相手を死に至る攻撃を躊躇うことなく打てているのです」


「なるほど……何か凄く便利だけど危うい感じもするな……あれ? 何で御楽は結界の外で座ってみてるんだ?」


「あの勇者様のジョブを、御存知ですか?」


「確か『聖女』だったと……思う」


「なるほど。結界の物理的なダメージは実際は魔力に代替されている為に、結界で回復魔法は効果が出ないのです。恐らくその為、結界の外にいるのではないでしょうか」


「へー……回復職が鍛錬するには不向きな場という……訳か」


 何故か日本の巫女さんのような格好をしている御楽の所へ、そんな事を話しながら歩いて行き、声をかけた。


「よぉ……御楽、一週間ぶり……だな」


「ヤナ君! 久しぶり! って、何で既にフルマラソンでもしてきた様な疲れた顔してるの!?」


「ふふふ……聞かないでくれ……それより何で御楽は、あそこで一緒に鍛錬しないんだ?」


 さっきアンさんと話してた予想通りなのか、確認の為に聞いてみる。


「あぁ……あそこ不思議空間だから回復魔法効かなくて、私のレベルあがらないんだよねぇ。だからさっきまで兵士さん達の訓練場に行ってきて、怪我人が出たら回復魔法かけてコツコツレベル上げてて、終わったからこっちにきたんだ」


 まさにアンさんの予想通りだった。レベルはやっぱりジョブに関する鍛錬をしないと上がらないらしく、回復する機会が少ない御楽はレベルが他の勇者より低くて少しへこんでいるらしい。


「レベルが上がるだけ……いいほうだぞ?……俺まだレベル1だし……冒険者ってどうしたら上がるかわかんないだよな」


「そうなの!? ヤナ君も大変だね……そうだ! 冒険者だから、きっと『命を危険に晒す様な冒険』が必要なんだよ!」


「そんな……馬鹿な……馬鹿な?……ハハハ」


 そんな様子を、アンさんは後ろで静かに見守っていた。


「そういえば、私のことルイって呼んでね」


「ん? なんで?」


「こっちの世界の人たちって、皆んな名前呼びなんだよねぇ。私らだけ名字呼びって浮いちゃってさ。それで皆んな名前呼びにしようってことになったの」


「あぁ……確かに言われてみれば、皆んな下の名前で呼んでるな……わかった……そうするわ」


「オッケー! ヤナ君、よろしく! 何か新鮮だね、ヤナ君って呼ぶの」


「いや御楽……ルイは前から全員名前で呼んでるだろ……」


「違うよ! 今までは矢那君! これからはヤナ君! 全然違ってるから!」


 俺には全く理解できなかったが、本人が何か納得していたので、ここはスルー(無視)した。


 あっちの三人も俺とルイに気づいたらしく、大きな声で呼びかけられた。


「ヤナ! 久しぶりだね! こっち降りて来なよ!」


 コウヤに呼ばれ、ルイとアンさんと一緒に訓練場へ降りて行った。


「ヤナ君、お久しぶり。私の華麗なる魔法を見たかしら。フフフ」


「……あぁ正に魔法少女アリスって感じだよ……」


「そうでしょう、そうでしょう」


 上機嫌でアリスは頷いていた。


(こいつこんなキャラだったか?)


「ヤナ君お久しぶりね。私も随分強くなったのよ? 今度は私が助けてあげるわよ、最後まで諦めず(・・・)にね」


「お……おう、そん時は頼むわ」


(シラユキって、緊張しぃの割に外面は強気なのな)


「お前らっていつも……こんな感じで鍛錬してるのか?」


「そうだなこんな感じ。ルイ以外は戦っていれば、ジョブレベルも上がることがわかったしね。大体三人は揃って今20レベルかな」


「もうそんなに!? 流石、チート集団……確か俺以外皆んな『成長速度倍加』スキル持ってるだけあるなぁ」


「私だけ、まだレベル10なんだよねぇ」


 ルイのその呟きを聞いて、俺の横に立っていたシラユキがすかさずフォローしていた。


「ルイは回復職(ヒーラー)なんだから今はしょうがないわよ。回復する機会が少ないってことは、今の所ここは平和で良いという証拠よ。城を出て旅に出たらきっと、今までは以上にルイに頼ることになるんだから、その時に私達にすぐ追いつくわよ。気にしないで」


 そこへ、勇者達を指導していた王国騎士団長と宮廷筆頭魔術師が合流した。


「ヤナ殿、私は王国騎士団長のケイルだ。コウヤ殿とシラユキ殿の指導をしている。宜しく頼む」


 金髪ロン毛の見合うイケメンているんだなぁと感心してしまっていたら、もう一人の女性も自己紹介してきた。


「宮廷筆頭魔術師のライアよ。アリス様とルイ様の指導をしているわ。よろしくね」


「知っていると……思うが、勇者では無い召喚者のヤナ・フトウだ……事情があって態度が無礼な感じに……見えたら申し訳ない」


 意地で何とか背筋を正し、二人に先に腕輪と指輪の所為で余裕の無い事を謝った。すると、ケイン騎士団長とライア宮廷筆頭魔術師がガシッと肩を掴んできた。


「聞いたよ……アメノ様の指導を受けているとか」

「……エイダ様から、魔法の鍛錬を受けているらしいわね」


「……はい……」


「「逃げ出す時は協力する(わ)!」」


「もしかして……お二人とも同志ですか……?」


 俺たち三人は固い握手をした。それだけで全てが通じた気がして、三人は黙って涙を流していた。


「絶対あの二人を……殴ってやりますから……!」


「「応援してる(わ)!」」


 俺たち様子を困惑している勇者達四人に、一体どうしたのかと聞かれたが、「知らない方がいい事もある」と言っておいた。あんな理不尽を知らせるわけには行かない。


 それから俺は昼飯まで、勇者達と合同で鍛錬をさせて貰った。アメノ爺さんの様な肉体言語で指導してくる人も、エイダさんの様な魔力枯渇で苦しんでいる俺を「フフフ」と笑う様な人が居ないのだ。


「何て素晴らしいんだ……」


 その様子をじっと見ていたアンさんが、一度離れの塔に戻ると言って訓練場を後にした。


「ヤナ様が昼食を取り終わる頃に、お迎えに参ります」


 何故か背筋に嫌な寒気を感じたが、魔力枯渇の所為だなと気にしなかった。昼食では勇者達と近況を確認しあったが、お互いほとんど鍛錬をしていると言うのは変わらなかった。今回は勇者達と組手はしなかったので、また今度訓練場でしようと話をして別れた。


 まさか、今回の勇者達との再会があんな事になるなんて、この時は思いもよらなかったのだ。


 分かっていたら同じレベルアップに苦しむルイを、巻き込むまないで済んだはずだったんだ。




「ヤナ君! 駄目だよ、これ以上は死んじゃうよ! やめて!」


「大丈夫さ……俺は死なんよ……絶対に俺は倒れない……だから……安心して、そこで待ってろ」


「ヤナ君……それは、フラグって言うんだよ……」




 そして俺は死地から逃げ出すことをせず、立ち続けた


 俺とルイの二人の為に


↓大事なお知らせがあるよ∠(`・ω・´)

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