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「また乱入者か。また、貴様の知り合いか?」


「あんな四角い塊の知り合いなんぞ、おらんわ。それに、胸くそ悪い瘴気纏いと魔族なんざ、尚更だ」


 俺とナルシーは水を差された状態となり、叫び声が聞こえた方を見ながら話をしていた。


「あなた!」

「主様!」

「ヤナ様」


 三人が駆け寄ってきて、霊峰の方から村へと向かってくる巨大なゴーレムを一緒に見た。


「あなた……魔族もいるわね」


「そうみたいだな。ったく、毎度毎度と邪魔ばっかりしやがって、鬱陶しい」


 俺は、タイミングの悪い空気の読めない乱入をしてきた魔族とゴーレムに、イラついていた。


「主様、あれはやっぱり瘴気纏でしょうか? あのような大きさゴーレムは、見たことないですが」


「俺もゴーレム自体、実物は見たことは初めてなんだがな。大きさは別としておいても、あの形状はゴーレムだろうな」


 俺は、ゴーレムを書物の上では知っていたが、実物としては見るのは初めてだった。


「ヤナ様。確かゴーレムは、主に鉱物に性質も含めて擬態するのでしたね。あれは、どんな鉱物を擬態しているのでしょうか?」


「分からんが、あのゴーレムの肩に乗っている魔族が、自信満々の顔をしてこっちに向かってきているから、相当自信があるんだろうさ。擬態の元となった素材にな」


 ゆっくりと堂々と村へと向かっている瘴気纏いゴーレムを眺めながら、そう答えた。


 すると、勇者一行とディアナ、カヤミも此方に集まってきた。


「お前らもまた、魔族に好かれているみたいだな」


「ほんとだよ、僕は好かれたくないんだけどね」


 コウヤが苦笑しながら、呟く。


 ルイとアリスも、同意する様に頷いていた。


 ただ、シラユキだけはじっと瘴気纏いゴーレムを黙って見つめていた。


「どうした? シラユキ」


「え? 何でもないわ。それより、これからどうするの?」


「まぁ、折角ここには、伯爵様もいるんだし、現場指揮官は伯爵様だろ? なぁ、ディアナ」


 俺は、ディアナにその辺のことを尋ねた。


「形の上ではな。実際にはロイド伯爵様達は、この場より私の父が率いる護衛の騎士達が護衛し避難して頂く。そして私が、ロイド伯爵様より命を受け、村民の避難及び村の防衛を行うことになった」


 ディアナが、現場指揮を取るらしい。


「幸い敵は見たところ、魔族一体と瘴気纏いゴーレムの一体だけだ。まだ距離もあるし、十分村民の避難は間に合うだろう」


 確かにゆっくり此方へ向かってきている為、今の所、焦らずとも村民の避難は間に合うだろう。実際、既にディアナが村長らしき人物に避難指示を出しており、着々と避難は進んでいたのだ。


「何故、あんなに勿体ぶって、ゆっくり来てるのかしらね?」


「まるでこちらが、迎え討つための準備の時間を待っているかのようだな」


 カヤミとタケミ爺さんも、その点について疑問に思っている様子だった。


 すると、不自然に大きな声が聞こえてきた。


「ゲハハハハ! ゆっくりそっちに行ってやるから、精々迎え撃つ準備をするんだな! そして、その準備をぜぇええんぶ壊して、突き進んでやる! この瘴気を纏わせた『アダマンタイトゴーレム』がな!」


 おそらく拡張器系の魔法で、村全体に響く声を出しているのだろう。毎回、魔族と言う奴は、大体言うことがワンパターンで飽き飽きしてくる。


 しかし、そんな魔族の声を聞いて、ナルシーが驚愕していた。


「アダマンタイトだと! もしあの魔族言う事が本当ならば、かなり不味いぞ。もっとも堅いと言われる物質『アダマンタイト』……その性質を元にしたゴーレムというのであれば、討伐が極めて難しくなる」


 その言葉を聞いて、エディスに尋ねた。


「エディスの『威力貫通』なら、硬さは関係ないんじゃないのか?」


「残念ながら、関係あるわ。アレがどこまでアダマンタイトの性質を模倣出来ているか分からないけど、アダマンタイトは『威力貫通』が効かない物質なの。それと、例え効いたとしても、あの瘴気纏いキングキラーケンに匹敵する大きさだと、効き目が薄いでしょうね。ヤナの黒鉄の大巨人(アトラス)はどうなの?」


「まぁ、試してみても良いんだが、形状変化(デフォルマシオン)で創った武器は、一般的な武器を再現したものだからな。まぁ、今は明鏡止水(精神統一)を覚えているから、もっと再現できる武器の精度は上がっているだろうが……ただ、今回はそうだとしても黒鉄の大巨人(アトラス)は使わない」


「えぇ! 私も隊員になりたかったのに……」


 ルイが、心底ガッカリした声を出したので、また今度なと約束して我慢してもらった。子供か……


「なら、どうするつもりなの? 戦闘機でも創って、爆撃でもする気?」


 アリスが、大変魅力的な案を出してくれたが、今回はその案は保留だ。


「いや、次回にそれは回そう。今回はもっと単純(シンプル)だ」


 俺は、標的を見ながら不敵に嗤う。


「全力で斬る。ただそれだけだ。まだ、こいつらを全力で使っていないからな。最も堅い物質というくらいだ。試し斬りには、丁度良いとは思わないか?」


 するとナルシーが、笑い出した。


「ハッハッハ! 中々、大層な事を言うではないか! ならば、丁度良い! あの瘴気纏いアダマンタイトゴーレムを斬れるかどうかを、『契約』を賭けた勝負としようではないか!」


「だそうだが、シラユキどうする?」


 俺は、『契約』相手となるシラユキを見た。


「……ヤナ君、斬れる?」


「聞きたいか?」


「ううん、いいよ。その勝負の方法で」


 シラユキは真っ直ぐに、俺を見ながらしっかりと答えた。


「それじゃ、いっちょ勝負と行きますか」


「望むところだ」


 俺達は、向かってくる魔族と瘴気纏いアダマンタイトゴーレムに向かって、歩き出した。




「おやおや、せっかちな方達ですね? もう少しで村を踏み潰しに行くというのに」


 魔族が、せせら笑いながら、俺たちを見下ろしながら話しかけてくる。


「あまりにも遅くて暇だったからな。因みにお前は名持ち(ネームド)か?」


「えぇ、勿論ですよ。私の名はカタインス伯爵です。そう言えばこの村に、人間の伯爵も来ているそうですね。同じ伯爵同士、楽しく話しをしたいものです、ゲハハハハ!」


「お前のような魔族と、ロイド伯爵様が話をするはずがないだろう!」


 ディアナが、カタインスに向かって怒りに満ちた言葉を返した。


「別に生きていなくても、こちらは構いませんよ? アンデッドにしてから仲良くお話をするだけです、ゲハハハハ!」


 ディアナが、早速斬りかかろうとしたので、止めた。


「落ち着けディアナ、取り敢えず先ず俺とナルシーが、こいつらのに用があるからな」


「おや? ヤナ君ではないですか? 悪神様の所には、行けそうですか? 何なら送っていきましょうか?」


「アンデッドにしてからってか?」


「いえいえ、それも面倒なので首だけ頂いて行くだけですよ? ゲハハハハ!」


 俺はカタインスを無視して、その先に話しかける。


「よう、今日はお前(悪神)を斬る刀の試し斬りをするんだ。よぉく見ておけよ?」


「私を通して悪神様と会話しようなどと、思わないことです。悪神様は、お前など気にも止めておりませんよ」


「別に、構わんよ。気に留めていても留めていなくても、結果は変わらん」


 俺は、それだけ言うと、ナルシーに勝負の先手を譲った。


「ほほう、先手を譲るとは、私を参考にしようとしたところで、意味はないぞ? 私がお前の番になど、回さんからな!」


 ナルシーが自分の剣を抜いて構えをとった。


「おやおや、私の傑作に挑むのですね? さぁ、いつでも斬りつけると良いですよ? 斬りつけられるものならばですがね、ゲハハハハ!」


「黙れ魔族! さぁ、私がそんなアダマンタイトモドキなど、斬り捨ててくれるわ! 『我は強く逞しく(身体強化増幅増加)』『天より堕ちる一撃』!」


 ナルシーは自らに身体強化系スキルをかけて、飛び上がり最上段から大剣を振り下ろした。


「……バカな……」


 ナルシーの一撃は見事に、瘴気纏いアダマンタイトゴーレムに直撃したが、斬り傷はついたものの、瘴気纏いアダマンタイトゴーレムはその歩みを止めることはなかった。


「おやおや、傷をつけるとは中々やるじゃありませんか。自慢してもいいですよ? 全力の一撃で、瘴気纏いアダマンタイトゴーレムに"擦り傷"をつける事ができたってね? ゲハハハハ!」


「……私が、斬れないとなると、不味いぞ! このままでは村が!」


 ナルシーが、騒ぎ出し突然、シラユキに向かって声を上げた。


「そうだ! シラユキ様なら! その剣には、オリハルコンが使われている!」


 ナルシーに呼びかけられたシラユキは、静か言葉を返した。


「まだ、ヤナ君と『契約』を賭けて勝負の最中なのでは?」


「何を言っておるのですか! この者も多少はできる事は、先ほどの予選で知っておりますが、アレを斬れるとは思えません! さぁ、シラユキ様どうか!」


 俺を完全に無視して、ナルシーはシラユキに、瘴気纏いアダマンタイトゴーレムを斬れと言っていた。


「ねぇ、ヤナ君……負けないよね? この勝負」


「あぁ、負けるわけないだろ?」


 そして、俺は腕輪と指輪を外し、二振りの『神殺し』の刀を抜いた。


「それは……まさか……神鉄……なのか?」


 ナルシーが目を見開きながら、俺の刀を見つめていた。


「あぁ、そこにいる現『刀工』カヤミの作だ」


 カヤミは誇らしげに、俺を見ていた。


「おやおや、そんな見かけ倒しの武器で本当に私の最高傑作を斬れるとでも? ゲハハハハ! 気の済むまで、全力で斬りつけるといいでしょう! 全ての武器を破壊しながら、抵抗する気力を奪い去ってしまいしょう!」


「お言葉に甘えて、全力で斬らせてもらう……『明鏡止水(精神統一)』『神殺し(限界超越)』『三重(トリプル)』『天下(身体能力/魔力)無双(増幅増強)』」


 明鏡止水(精神統一)を使うことにより、スキルも三倍掛けを行えるようになったのだ。


 そして俺は、鞘に収まっている二振りの刀を握りしめた。


「さぁ、無駄な抵抗を続けてみなさい! ゲハハハハ!」


 俺は、静かに刀の名を告げた。


「『天』と『地』よ。これから、よろしくな……さぁ、初めての俺の全力だか、受け止めてくれるよな?」


 神殺しの刀に今、頭に思い浮かんだ『天』と『地』という名を付けた。


 そして、静かに息を吐き、集中した。




「『狂喜乱舞(ヤナ流二刀剣術)』『刻飛ばし』」




 そして俺は、剣技の名を静かに告げ、鞘に再び(・・)納めた。


「流石、『神殺し』の刀だな。俺の今の全力に、存分に答えてくれた。カヤミ、恩にきる。それと、シラユキ、約束は通りしっかり勝ったぞ」


「「はい?」」


 礼を言われたカヤミと、勝負に勝ったと伝えたシラユキが、同時に間の抜けた声を出した。


「何を言っているんだ? 貴様、私との勝負はまだついていないだろう?」


「え? だって、あんたが斬れなかった瘴気纏いアダマンタイトゴーレムを、俺が斬れば勝ちなんだろう?」


「だから、お前はまだ、試みてもいないではないか!」


「そっちこそ、何を言っているんだ? もう終わっているだろうが」


「何を言って……」


 ナルシーが、言葉を発しようとした時、魔族の叫び声がそれを遮った。


「バカな……そんなバカな!?……アダマンタイトと同質だぞ……バカなバカなバカなぁあああくぺきゃ!」


 魔族と瘴気纏いアダマンタイトゴーレムが十字に、突然ズレた。


「は?」


 ナルシーが、その様子をみて固まる。


「だから言っただろう?」




 俺は、十字にずれていく魔族と瘴気纏いアダマンタイトゴーレムを眺めながら、言い放つ。




「俺の勝ちだ」




 そして、轟音とともに瘴気纏いアダマンタイトゴーレムが崩れ落ち、勝負は決着した。


↓大事なお知らせがあるよ∠(`・ω・´)

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