プロローグ
これから始まる物語
お楽しみ頂ければ幸い
舞台の幕開けどうぞごゆるりとご覧あれ
「もういいよ……」
俺は必死に身体を起こそうとするが、身体は地面に縫い付けられたかの様に、どこも動かすことができない。
俺は倒れ地に伏し、もう戦うことは叶わない。
倒れる俺の横に少女は座り込んだ。
俺は体力も魔力も底をつき、両足は炭化しており、腕は片腕しか残っていない。そして俺の周りには、夥しい魔物の死骸が積み上がっていた。それでもまだ、俺を殺そうとする魔物の大群で大地は揺れ、空からは火龍が迫ってくる。
「ごめん……君を……救えなかった」
「ううん……わかっていたことだから」
そんな諦めた目をしてほしくなかった
君に未来を見せてあげたかった
この世界へ召喚され、魔王を倒して欲しいと頼まれた。魔王を倒す旅をして、力をつけてついに魔王を倒した。そして俺と一緒に召喚された他の勇者は送還魔法により元の世界へ帰った。
しかし俺は、元の世界に家族もいなかったし、この世界で生きることにしたのだ。そして今度は、まだ見ぬこの世界を冒険しようとおもった。そんな時にこの少女に出会った。
「悪神の巫女」と呼ばれていたこの少女と。
生きるだけで災厄をもたらす悪神の聖痕を、その魂に刻まれた少女
勇者達は魔王を倒し平和を勝ち取った。人の目には喜びと希望が溢れていた。しかし、この少女の目には、何も写っていなかった。
俺は浮かれていたのだろう
魔王を倒し、世界に平和をもたらした勇者
まさにゲームや物語の主人公の様に
「次は君を救ってみせる!」
何もこの世界のことを知らなかった。魔王を倒すことしか興味がなかった。ゲームのイベントをクリアするかの様に
だから、この少女との出会いもゲームクリア後の裏イベントぐらいのつもりだった。
悪神の巫女は災厄の忌子
生まれたらすぐ殺せ
魔物を呼ぶぞ
見つけたらすぐ殺せ
不幸を呼ぶぞ
魔物を引きつけ殺される
人から忌子として殺される
人からも魔物からも殺される
そのことがどれほどの絶望なのか、全く分かっていなかった。
「所詮勇者は……魔王を倒すだけなんだな……それだけだ……」
「貴方は、魔王を倒してこの時代の世界を救ったわ」
「……もし……もし次があるのであれば……今度は君たち巫女を救う為にここにまた来るよ。勇者に魔王は任せてさ」
もう薄れゆく意識の中で、笑顔でそう告げた。
「頑張ってね。期待はしてないけど」
少し……ほんの少しだけ微笑むような顔をして答えてくれた。
「はは……ひどいな。きっと今度の俺は、今度の君を救えるさ」
「なら……今度は絶対に倒れちゃ駄目よ」
「あぁ、絶対に倒れないよ……倒れてなんかやるものか………」
そして、二人は火竜のブレスに包まれた。
……くそぉ……悔しいなぁ……
そして時は流れ……魔王は瘴気から復活し、世界が再び瘴気に侵食され始める。
「ようこそおいで下さいました、勇者様。魔王を倒し、この世界をお救いください」
そして新たな物語の幕が上がる。
↓大事なお知らせがあるよ∠(`・ω・´)