所長からの電話
宮沢と連絡先を交換して帰宅してから、俺はいつ連絡がくるかとソワソワしながら片時もスマホを離さずにいた。食事中や寝る時はもちろん、トイレやお風呂もだ。
そんな俺を嘲笑うかのように連絡が無いまま2日、3日と過ぎていき、いつの間にか1週間が経っていた。
これだけ連絡が来ないということは、恐らくダメで宮沢がなんと言うべきか迷って連絡出来ないのではないか?
もやもやするので早くはっきりしてほしいと思うものの、現実を突きつけられるのが嫌で自分からは連絡出来ないでいる。
チキン野郎と言うな。長く報われない就活のせいで俺の心はトラウマを負っているんだ。
とりあえず来たる時に備えてお昼を食べながら求人のチラシを眺めていると、テーブルに置いたスマホが震え、画面に待ち望んでいた名前を表示した。
「もしもし、宮沢? 結果出たのか!?」
『……』
「? おーい、もしもーし?」
『……』
「聞こえてるか? 宮沢?」
震える手を抑えながら1コールで電話を取った俺は勢い込んで聞いたのだが、宮沢からの返事はない。
「あー、えーっと……やっぱムリだったのか? だったら気にせずひと思いに」
『ガション! ガタガタガタ……』
「!? お、おい、大丈夫か?」
『もしもし、君は神崎和泉くん、だよね?』
「は? あんた誰だ?」
何かが倒れるような音がした後、ようやく喋ったと思ったら幼馴染みの女と思っていた相手が知らない男だったんだから、剣呑な声が出てしまったのは仕方がないと思う。
『オレは三島藤……所長って言った方がわかりやすいかな?』
「所長……? ……所長!?!?」
思わず血の気が引いた。所長!?
「すいませんでした!! まさか所長様が直々に連絡をくれるなんて思いもしなかったんで、宮沢の番号だったし、無言だし、知らない男の声だし、もしかして宮沢に何かあったんじゃっていう有り得ない妄想が働いちゃったっていうか!!」
『! へぇ、君、イイ勘してるね』
「へえぃ!?」
俺の言い訳を聞いた所長の返事に思わず変な声を出してしまったが、1拍置いて内容を理解すると先ほどとは違う意味で鼓動が早まるのを感じた。
「あの、それってどういう意味ですか?」
『ちょっと電話じゃ話しにくいから会って話せるかな? 今からナガレボシに来れるかい?』
「わかりました。20分……や、10分くらい待ってもらえますか?」
『助かるよ。じゃあよろしくー』
俺は電話を切ると、スマホと鍵だけを掴んで上着も着ずにそのまま家を飛び出した。




