接触
(俺、何やってるんだろう……)
男装して女子大生とデートする幼なじみをストーカーする男を監視する女装する俺。
改めて字面にすると酷すぎる現状に、これも就職のためと思いつつもそう現実逃避せずにはいられなかった。
あの後宮沢と考えた結果、「細かいことはいいから最終的にホテル」ということに決定した。
まわりくどいことなんて俺には思いつかないし、万が一男が動かなかったとしても女の子2人でホテルに入るだけなので何の問題もない。
問題があるとすれば、今の俺の状況だ。
(どうしてこうなった!?)
現状:ストーカー男に壁ドンされてます。
いや何で??
「君さぁ、今日ずっと彼女のことつけてるよね? ってか3日前にも見た気がするんだけど。何? ストーカー?」
今日も何度か目が合った気がしたが、気のせいじゃなかったようだ。というか。
(ストーカーはお前だよ!! ずっとつけてるよねって、お前もずっとつけてたって自供してるようなもんだからな!? ってかこいつには俺が女に見えてないのか? 何で真っ先に疑うのが彼女のストーカーなんだよ!?)
心の中では思いっきり男を罵りつつも、表面上は怯えた女のフリをする。
今の俺の設定は、恭太郎くん(仮名)が気になるけど話しかける勇気がでなくて思わず後をつけちゃった☆な、ちょっとシャイで斜めな方向に行動力のある女の子だ。
「あのっ……ご、誤解です……」
「誤解? 何が? こっちは何度もあんたのこと見てるんだけど?」
「だから、あの……私が気になってるのは、彼女じゃなくて……」
そう言ってちらりと宮沢の方を見ると、ちゃんと俺の言いたいことは伝わったらしく男の態度ががらりと変わった。
「あぁ、あっちね! ごめんごめん! 実はあの子俺の彼女なんだけどさ。ちょっと喧嘩しちゃって、その当て付けにああやって他の男とデートしてるんだよね」
流れるように嘘をつく男に唖然として思わず固まっていると、男は更に予想外の提案をしてきた。
「君、名前は?」
「い、いず子です」
「いず子ちゃんね。あのさ、協力してあげよっか?」
「は、はい?」
「いず子ちゃん大人しそうだし、声かけられなくてこんなストーカーみたいに後つけてたんでしょ? 俺としても彼女が他の男と仲良くしてるの見るの気分悪いし」
「……協力って、何をしてくれるんですか?」
「それは……」
男が話の途中で宮沢たちの方を振り返って固まった。
俺も視線をやると、なるほど、作戦通り2人がホテルに向かって歩いていた。
「行くよ」
「へっ!?」
男はそれだけ言うと、俺の手首を掴んで2人の元へ駆け出した。




