作戦会議
宏ちゃんの協力のおかげで違和感なく性別を反転させイケメンと化した宮沢は、現在彼女を自宅まで護衛中だ。
男の姿で現れた宮沢に安藤さんは最初警戒していたが、宮沢だと分かって目を丸くして驚いていた。
俺はと言えば宏ちゃんが持ってきてくれた私服だというひらひらふりふりの服の中から比較的大人しめなものを貸してもらい化粧をしたところ、「美人ではないがちょうどいい感じの完全な女の子に見える」と菜摘さんにお墨付きをもらった。全く嬉しくないし、褒められているのか落とされているのか微妙なところだ。
とりあえず宮沢(男)のストーカー女として、2人がナガレボシを出た後を追うように店を出たのだが。
(ちょっと堂々としすぎじゃない?)
2人の後ろに、あからさまに不審な男がいる。
宮沢を刺し殺しそうな勢いでギリギリと睨みながら後をつけるその姿は、安藤さんからは見えていないのだろうが周りから見れば怪しいことこの上ない。よく今まで捕まらなかったものだ。
呆れながら後ろを歩いていると、男が角を曲がろうとしたところでふとこちらを向いた。
一瞬目が合った気がしたが、男は特に反応を見せずすぐにまた2人の尾行に戻っていった。
(気にしないでいいか?)
俺は冷や汗を流しながらも、今は宮沢(男)のストーカーとして不自然じゃないように3人の後を追った。
「見た?」
「視線は感じたけど、姿は見えなかったわね」
翌日、安藤さんは今日は特に用事はないとのことだったので外出は控えてもらい、俺と宮沢は事務所で昨日の報告会をしている。
「当然あんたは犯人特定したんでしょうね?」
「いや、まあ姿は見たけどさ。めっちゃギリィって感じで宮沢のこと睨んでたし、アレは絶対放置したらヤバい」
「そんなことはわかってんのよ。その男、あんたから見て強そう?」
「いや、フツーのチャラいにーちゃん。絶対宮沢の方が強い」
「ふーん。まあ私に殴られ慣れてるあんたが言うんならそうなんでしょうね」
「言ってて俺に申し訳ないなって思わない? まあ強くはなさそうだけどああいうタイプはキレると何するかわかんねーから怖いよな」
「そうなのよねー……。で? どうするわけ?」
「え!? 宮沢が考えてくれるんじゃないの!?」
「だっから今回はあんたの仕事だって言ってんでしょーが! この耳は飾りか!?」
「痛い!」
怒鳴ると同時に思いっきり耳を引っ張られた。
堪らず悲痛な叫びを上げるとパッと手を離してくれたが、本当にちぎられるかと思った。
涙目で我が耳の無事を確かめながらこれ以上怒られないように今後の対応について思考を巡らせる。
「うーん……とりあえず犯人が宮沢を襲うように仕向けたいよな」
「そうね。それならそいつがストーカーだって確定出来るし、正当防衛ってことでボコボコに出来るわね」
「なぜだろう。宮沢が襲われる想定をしてるのに犯人超逃げてって思ってしまう」
「今度こそ引きちぎるわよ?」
「すいませんでした!」
あの目は本気だ。俺は反射的に謝りながらまだジンジンしている耳を両手で覆い隠した。
「まったく、あんたがふざけるから全然話が進まないじゃない」
「いや、俺だけのせいじゃありますよね! すいませんでした!」
「……何もしてないでしょ」
宮沢に睨まれたと感じた俺が条件反射的に言おうとしたことを翻して謝ると、宮沢は拗ねたようにそっぽを向いて口を尖らせた。
思わず可愛いなと思ってジっと見つめてしまったが、宮沢は頑なにこちらを見ようとはしない。ただ当然見られていることには気づいており、徐々に顔が赤くなっていく。
部屋に甘ったるい空気が流れたところで宮沢が先に耐えきれなくなって声をあげた。
「みっ! ん″ん! 3日後に次のデートの予定だから! 犯人を誘き寄せるデートプラン考えるわよ!!」
声を裏返しながらも必死で空気を変えようとする宮沢を可愛らしく思いながらも、これ以上引っ張って照れ隠しを炸裂させないためににやけそうになる顔をもにもにと整えて真面目な顔を作り俺たちは作戦会議を再開した。




