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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

梅雨

雨が降り止む頃に

作者: 夢見るツクヨミユックー

――ククリって知ってる?――


おとといからだ、ずっと雨が降っている。

窓を見て、溜息をついた。

今日は6月3日、梅雨の季節だ。特に変わった事は無いが、最近湿気が酷い。

けど、あまりいつもの日々と変わらない元々、雨は嫌いじゃないし別に気にしない。そう思いながら、授業を聞いていた。

国語の先生、ヨボヨボのおじいちゃんなので何してても怒らない…。というか気づいていない。

周りを見るとケータイを触っている奴、宿題をしている奴、色々いるなぁ…。


「おい、後ろを見ずにこれを…」


後ろから急に声をかけられた。


「なんだよ、急に」

「いいから! 早く!」


えらく急かすなぁ。


「はいはい、どうも」


後ろを見ずに取ったのは....手紙? なぜ手紙。

え、えらく古い伝達手段だな。

とりあえず内容を確認、最初、いや一行しか書かれてない。あと端っこにちょっとだけ。何々....


「 ククリって知ってる ?」


......は? ククリ? 急な事でナニコレ? となってしまう。端っこには、


「放課後、5時に特別棟の図書室に、絶対来てね! 大輔も誘ってるから! 梨華 ♪」


デコってるな、あいつ.....


「5時という事は掃除が終わったら来いって事だよな....あいつの考える事はよくわからん」


とりあえず行くか、帰ってもどうせ暇だしな....

―― そして俺は後に後悔する事になる ――


―― キーンコーン...... ――


チャイムがなり終わり五時間目が終わった。

今日は五時間の日で部活をやってない奴は大抵四時には校門を出ることが出来る。

いつもの俺なら、このまま帰って寝る予定なのにな。

ま、数少ない友達の頼みだ。とりあえず掃除を終わらせてとっとと図書室に行くか....

あと5時まで20分…

さて、覚悟を決めて掃除をするか。


―― 15分後 ――

とりあえず掃除が早く終わったので図書室に向かった。この調子なら5時丁度に着くだろう。

中々早く終わる掃除が長く感じたのは気のせいか。今もまだ土砂降りで、雨は降り続けている。


「まるで朝から時間が進んでないかのように......」


気のせいだよな。うん、気のせいだ。さっさと行こう。

そうして、俺は急いで図書室に向かった。




「お、来た来たっ」


最初に声を出して来たのは梨華だった。


「すまんすまん、遅かったか?」

「ううん、ちょうどだよ」

「そうか、それは良かった」


どうやら俺で最後みたいで、全員で12人みたいだ。 俺、大輔、梨華、後は俺の知らない奴ら。

大輔が言うには全員梨華の友達らしい。 よくこんだけ集まったな....


「さぁ、それじゃあ始めようかっ」

「「「「おおー!!」」」


梨華の声を合図にして、「ククリさん召喚」が始まった....

まずは図書室の一番古い本を持ってきてそれを刃物、鋭利な物で突き刺し、「ククリさんおいで」と全員で言う。

召喚方法はいたって簡単だ。 だが、この「ククリさん」は都市伝説、本当に出てくるのだろうか....

梨華が友達に、家庭科室にあったのだろう出刃包丁みたいな物を受け取り、


「さぁ、皆覚悟はいい? 私達で真相を確かめよう! ククリさんとは一体何者か! せぇーのぉ!」


―― ドズッ――


「「ククリさんおいで!」」


その瞬間、空気が「変わった」

いや、外を見るとなんと......「晴れていた」

自分でも何を言ってるのかわからない。 さっきまで土砂降りの梅雨だったのに今はそれが過ぎたみたいにさっぱりした夕焼けが窓から差し込んでくる。

周りを見ると皆の顔には疑問しか出てなかった。


「んで....今からなにすんだよ?」


大輔がそう言うと梨華の友達が、


「とりあえず図書室出てみようよ」

「そうすっか......」


図書室を出てみると、土砂降りが止まり窓から夕焼けが差し込んでいる。 ただ..その光景が綺麗だった。


「 その景色を見てる時だけは」


皆はすぐに気づいた。


「あれ、なんでこんな静かなの?」


梨華の友達がヒソヒソしながら呟いた。

そう......人がいない。 いや人の気配は感じ取れない。 生徒だけではない、先生も、今学校にいるのは....12人俺達だけだ....


「嘘....だろ? 皆外に行ってるだけだろぉ? ははは....」


 大輔は乾いた笑いで周りを見た。 大輔の顔は蒼白になっていく。

見ると周りの奴らもどんどん、蒼白になっていく。冷静なのは俺と梨華だけ、


「皆落ち着いて、とりあえず男子と女子に分けて校舎を周ろう」


男子は四人、女子は八人。

男子は右の校舎、女子は左の校舎を周ることにした。

男子の方は特に異常は無かった。

あるとすれば、職員室、教室、放送室、トイレなど、「誰も」いなかった。 そして静か過ぎる。

電話は、何処も繋がらなかった。

まぁ、当然か俺が見たホラー推理小説も確か電話が使えないみたいになってたし....


「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!???」


と男子三人が窓を見て、びっくりしていた。 いや、泣いていた。


「どうした? 何をそんなに驚いて..............っ!?」


俺は、泣きながらびっくりしている男子の見た方向を見て....後悔した。

人は好奇心の塊。 気になるから見てしまう......校舎が横二つに並んでいるから女子のいる方の校舎が見えていて..........

あれって....梨華の友達だよな?

なんで、アンナニモ泣いて....るんだ? 窓を叩きながら何か言ってる。

た…たす…すけて


「たすけて」

「たすけて、たすけてたすけてたすけてタスケテたすけてたすけてたすけてたすけて..たすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけて..たすけてたすけて..たすけてタスケテたす..っ............................」


俺はその時絶句した。 いや、絶望した。 目の前で....殺された。

窓にはべっちゃり血が、血が、ででてててて、あ、あぁぁ、あんなにも笑顔が可愛いなと評判だった子が、痛いのか白目剥いてて....うわぁぁぁぁぁぁぁ!


「うわぁぁぁぁぁぁぁ!やめろぉぉぉぉぉぉ!」


俺は走った。 大輔達も後について来てくれる。 大の男子高校生が四人だ。 大丈夫さ....

怖い気持ちを落ち着けて、さっきの女子がいた教室、「多目的室」を

 開ける....


―― ガラッ....――


「「うわぁぁぁぁぁぁぁ、あぁ....あぁ! おぅぇ....」」


 そこには....無惨な....屍が、転がっていた。

そのままの意味、見るだけで吐きそうな....死体しか無かった。

ある者は、顔が割れて? いや、顔自体ぐちゃぐちゃ、ある者は、足が無い無い無い、人って足が無いと......「人」じゃないんだな..

そのまま全員の死体を確認したいが大輔と他の友達はもう涙を流して吐いていた。

俺が確認する限り..全員で八体。

うん? 八体? ....え。

女子......全滅? ....ははは、はははははははははははははははははははははははははははははははははは....

誰が....こんな酷いことを..おい..あれってさぁ....梨華だよなぁ。

可哀想に....身体と顔がくっ付いていないじゃないか....もういや、だ、見たくない......よ。

....................................................

待てよ? ここで、女子が全員殺された。 なら女子を殺した「犯人」ってこの近くにいるんじゃ....


「「うわぁぁぁぁぁぁぁ!な、ななんだあれは!???????」」


多目的室の外にいた大輔達が叫んだ。


「なんだ!? どうした!?」


行き良いよく飛び出して、大輔の指差す方を見….て、


「逃げるぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!! 大輔ぇぇぇぇぇ!!」


俺はギリギリ見るまで動けなかった。 が、分かった。

多分、あれが....梨華や梨華の友達を殺した犯人なんだろう....

なんだろう....わからない。

ただ、分かることはあれは「人間」? それとも「化け物」?

とにかく、逃げた。 大輔達も逃げる。 だって、あの黒いナニカは....人ならざる者なのだから。


「とにかく、何処かに、か、隠れるぞ」


左校舎を抜け右校舎に入ったあと全員が別れた。 もう皆必死。

俺も必死、に逃げた。 皆は教室とかに行ったりした。

俺はもう自分しか気にせず逃げ入った所は職員室..........

......はぁ、どうして、ここに戻って来たんだろう....夢だな、これは夢だな。

多分あれも俺らをびっくり....させる....ための、演出だったんだよ。

はは....そう考えると俺も大輔達も騙されたなぁ....

さぁ、なら最後まで待ってたらあのナニカもすぐ帰るだろう。

ククリさん....だっけ? また今度学校来たら、誰が演じてたのか聞いてみよう。 その子は、絶対演劇部に入った方がいいな..ははは!

さぁて、かくれんぼは始まったばかりだ。大輔、俺、大輔の友達二人誰が最初に見つかるかな......


「うわぁぁぁぁぁぁぁ! ひぃ! く、やめ、や、やめて....ひぎゅっ! ....................」


大輔か......いい演技だな..

大輔が殺されてそのあとすぐ、二人の叫び声が聞こえた。

......あぁあ、俺一人だけか、ま、いいや。

―― ガタンッ!ゴドゴドッ!――

んぁ、とうとう俺の所まで来たか....早くかくれんぼ終わろうぜ..疲れたよ....

その時、さっきから全く聞いてない音が鳴り響いた。


――プルルル....プルルルルル..――


電話....! 今なら、外側に助けを求めるんじゃ......

俺は、フラフラと近づき、受話器を取った....


「は、はい....」

「はいー。 こちら南警察署です。 そちらの学校に楠木梨華さんはいますか? あと、え、えーと新庄大輔君はいますか? お二人とも家から早く帰って来いと言われています。早急に....」


警察署!? ちょうどいい!


「あ、あの! 警察署ですか!!?

ちょうど良かった! あの......ひっ」


あぁ....もう少し....早く......鳴って欲しかったな......

いつのまにか黒いナニカは俺の後ろにイタ。 イタ、イタイタ....

顔は見えない....ん? 持っているのはあの梨華の友達が家庭科室から....持ってきた出刃包丁....おいおい、あんなもので皆を切り刻んだりして....たのかよ!?

あぁ....ま、待ってくれよ....

ナニカは振り上げる大きな大きな、出刃包丁を。 あぁ、死ぬ....


「あのー! すみませーん!」


警察署の人の声が聞こえる。 もう遅い....最後に伝えておこう。 もう遅いけど........


「....たすけて....ください....」


それが俺の最後の言葉......




―― 次の日の朝 ――

今日、学校は休みだ。 今日もいつも通りの土砂降りだった。

朝から、登校しているのは生徒ではなく、警察署という家から検死官、刑事などが登校していた。


「あーあ....すごいなぁこれは」


刑事・稲葉輝は言った。 まるで、これら全ての死体がそこにあるのを知ってたのように軽い声をあげた。

周りの警察の人でさえ、酷く見え目を逸らす者、新人は吐いていたりもしたが稲葉輝はびくともしなかった。


「はぁ、朝から大変なこった。 しかし、ひでぇなぁ....」


死体が12人、しかも八人の女子がその場で全員殺され、男子が二人、男子が一人、一人別々の場所で殺された。

しかも共通的な死因は、全員どこか「身体の部位」が無くなっている。 ただ、それだけしかわからない。


「はぁ....」


輝は、ため息をついた。 ただそれくらいしか今の空気を変えるにはそれくらいの事しか出来なかった。


「犯人の快楽殺人か、それとも何かの理由で殺されたか」


快楽殺人で思い出したが三年前にも確かこんな感じな事件があったな....たしかあの時は10人で、中学校の図書室で「ククリさん」とかいう都市伝説の儀式をやって、次の日の朝に10人が死体出てきた。

今回も......か。

さて、じゃあ俺も辺りを調べるか......ん? 誰だ?

校門の方に....一人の女の子が....なるほど、休校と知らずに来てしまった子か......この土砂降りの中悪いが帰ってもらわなければ、


「おーい、すまないが今日は学校は休校だ。だからこの雨の中悪いが帰ってくれないか?」


女の子は軽く頷き、


「わ、わかりました。 邪魔してすみません....あの、梨華ちゃんは来てませんか?」


きっと、この子は梨華という女の子の友達だろう。 伝えるのは中々勇気がいるが、仕方が無い。


「梨華という女の子は来てないな。というか君しか今日は学校に来ていない」


俺は嘘をついた。 やはり真実を伝えるのは中々つらい。 だから今だけは....


「ウソですよね 」


女の子は、口が三日月みたいに開き気持ち悪いくらい笑いながら言った。 なんだこの子は......


「梨華は死んだんですよ? あの子は馬鹿なの! さっさと帰っていればねぇ! あっははははぁは!」

「君は何を知ってる! 何があったんだ!?」


女の子は答えない。 さっきと同じで笑いながらこちらを見ている。

そして、言う。


「..........ねぇ、刑事さん」




「「ククリさん」って知ってる?」


あっはははははぁはははははは!

女の子の声が校舎に当たり木霊する。

今日も長い雨が始まりそうだ....。



終わり

どうも、夢見るツクヨミユックーです。今回は初めて短編ホラーに挑戦してみました。読み返して見てみると、展開早すぎか?と自分でも思ってしまうくらい早かったと思います。

今回書いた「雨が降り止む頃に」は、読んでいる人に想像しながら自分が体験しているように感じるよう、作ってみました。怖かったかはわかりませんが、楽しんでいただけたならそれで僕は満足です。都市伝説は本当に危険な物がたくさんあると思います。もし、それを実行しようとする人がいるなら…こんな話の終わりになるかもしれません。僕は怖くてそんな事できませんけどね笑笑

最後に短編ですが、続編などを作ってみたいなぁ と思ってるので楽しみにしていてください!

この小説を読んでくれて本当にありがとうございました!


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