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仮面と鏡と王冠と  作者: 帝王星
世界の敵VS世界の敵
4/8

第3話

残酷な表現ありです。人死にます。

耐性ない人はUターン!by帝王星

 現世に到着した。相変わらず空気は淀んでいる。


 現世…別名人間界は人間の技術の発達により、飛躍的に暮らしやすくなった。

 機械の小型化、高性能化、今では手で操作しないなど当たり前。


 …だが、俺はこの世界には住みたくない。



「妖刀屋ねぇ…最近じゃ職人の数も減ってきてるみたいだし、探すのに手間がかかりそう」

「変だよな、妖は忌み嫌われ、妖刀は受け入れられてるって」


 元を辿れば同じ存在だと思うのだが。やはり人間はわからない。


「人族は力を持たないから、自分たちに戦う力を与えてくれる妖刀の方が受け入れられやすいのは当たり前じゃないかな」

「…まぁ、人間はお前よりも殺し好きかもしれないからな」


 自分で言っておいて不吉な言葉だ。この殺人嗜好性より強烈なのがいるのかと思うと、世も末である。


「…妖刀屋の情報をスキャンしてみるから、ちょっと待ってて」


 瑠禍は眼鏡型の小型パソコンを取り出し、起動する。

 しばらくして、瑠禍はある一点を見据える。


「ここから南南東32km地点付近に妖刀屋を発見」

「ちと遠いな」


 ここからその地点に向かうには、山脈を迂回する必要がある。少し、いやかなり、いやすごく、気乗りしない。


 迂回=遠回り=長い距離を歩く=人間に見つかる可能性が高い、である。


 そんな俺の考えを知ってか知らずか、瑠禍は意気揚々とした様子だった。


「ねぇ、途中で会った人間って…殺していいかな?」

「…今の俺のセリフを聞いて、次に口にするセリフがそれかよ」


 ため息が漏れる。…だがこいつの殺人嗜好性は俺も重々承知だ。


「…俺たちの正体に気づき、殺そうとしてくる者だけならいい」

「えぇー…それだけ?」


 瑠禍はあからさまに落胆した様子だ。


 俺は無視して用意してきた地図を広げる。俺たちがいるのは、東西に延びる山脈の北側。そして目的地は、現在地から山脈を隔ててほぼ反対側に位置していた。


「俺はお前のような誰かを殺したくてたまらない異常者じゃないんだ」

「そうかい…残念」


 瑠禍は俺を、残念なものを見る眼で見下す。まるで神の崇高な言葉が理解できない使徒を見るような目だった。


「なんで俺、こんなのと組んでるんだ?」

「それは僕のセリフだよ」


 お互いに相手に不満を持っているのに組んでいる不思議。


「腐れ吸血鬼」

「ヘタレ妖精」


 はい、同点。


「死になよ」

「お前がな」


 俺たちは互いに武器を構える。そして背後を振り返り、武器を振るう。


「ぐぅっ…!」


 くぐもった声とともに、武器には肉を断つ感触。草むらの中に隠れていたのだろうか、一人の男が倒れた。

「ゲートのところからずっとついてきてたでしょ?残念だけどお見通しだから」


 男の身なりを見るところ、山賊だろうか。

 近くにも複数の気配がする。12、13、14…いや、20はいる。


「これだからやなんだよ、奴らの中にはゲートのそばで待ち伏せする奴もいるし…」

「黙れ!穢れた血め!」


 初めに俺たちが斬りつけた男が喚く。…山賊よ、俺ならまだしも瑠禍にそれは禁句だぞ。


「あ…?お前誰に口聞いてんの?下賤な人間サマ」


 俺知ーらないっ☆


「貴様ら人外の者共は穢れている!さっさとこの世界から出て行け!」


 そうだそうだ、と周囲から声がする。瑠禍の表情が完全な無になった。


「尽、こいつは生け捕りにするから、死なない程度に傷を治しておいて。残りは僕が殺る」

「人使いが荒いな、ったく」


 瑠禍は初めの男を手刀で気絶させ、紫苑を抜刀。


「来れば?僕たちを狙ってきたんでしょ」


 現世では人外の者共――妖や魔族などの四大種族をはじめとした、人間でない知的生命体――を狩り、役所に持っていけば報奨金が支払われる。


 それ以前に、人間の大部分は人外の者共を忌み嫌っており、自分たちの住む現世から駆逐しようとしている。


「や、やれっ!」


 どこからともなくそんな声が聞こえる。それを合図に山賊たちは俺たちに殺到した。あっという間に瑠禍は囲まれる。


「臭い、風呂くらい毎日入りなよ」


 瑠禍は顔を顰める。激昂した山賊たちは持っていたナイフを突き出す。

 絶叫。山賊のナイフに蜂の巣にされたのは瑠禍ではなかった。


「うわ、下賤な人間サマが醜い同種殺しですか?」


 瑠禍は素早く横にいた山賊の手を掴み、流れるように立ち位置を交換しただけだ。


「クソッ!エリックがやられた!」


 いや殺したの貴方たちですけども。


 男たちは怒りに任せ、瑠禍に斬りかかる。瑠禍は避けつつ、殺害を敢行していた。喉を裂き、頭を潰し、目を潰し、首を刎ね、中には吸血鬼特有の『催眠』にかかり自害したり、味方を襲ったやつもいた。


 …俺?俺は人助けなう。あんな殺し好きとは何の関係もない、善良な妖です。



 すぐに断末魔は止み、辺りには肉片が散らばっていた。


「そっちも終わったみたいだな」


 一応声をかける。瑠禍は相変わらずの血化粧姿である。


「あんなのでよく僕たちみたいなのを狩ろうと思えたね、って弱さだったよ」


 瑠禍は俺が治療を施した男を掴み上げ、顔面に往復ビンタを喰らわせる。手加減していない吸血鬼の怪力なら、初めの一撃で男の頭は柘榴の実と化していただろう。


「うぐっ…」


 男が痛みに呻きながらも、目を開ける。


「今から拷問と処刑をするから。拒否権はないよ。高貴なる血族である吸血鬼を愚弄したからね」


 おまけにこいつは吸血鬼の王族である。プライドは馬鹿高い。


 男はゆっくりと辺りを見渡す。仲間の惨たらしい死体が転がっているのを目にした男は、恐怖で青ざめ暴れだす。


「じゃ、拷問その一」


 瑠禍は近くの木を切り倒し、その上に男をうつ伏せに寝かせて縛り付ける。

 そして近くで見つけてきた山羊を連れてくる。


「は?」

「尽、塩ない?」

「あるけど…」


 わけがわからない。山羊と塩を使って拷問?俺には料理を振る舞う以外の行動が思いつかない。

 俺の渡した塩を受け取ると、瑠禍はそれをたっぷりと男の踵にすり込む。


「あとは放置」


 山羊は愛くるしい瞳で俺たちを見る。思わず撫でると、手を舐めてきた。ザラザラして気持ちいい。


「尽、山羊をそっちの男の方にやって」

「山羊で何するんだよ」

「…見てれば分かるさ」


 仕方なく山羊を男の方へ連れて行く。男もわけが分からないといった顔だ。

 山羊は塩が塗られた男の足の臭いを嗅ぐと、その足を舐め始めた。

 男はくすぐったいのか、笑い出す。


「…何?こちょこちょしたかっただけ?」


 それなら鳥の羽根でいいじゃないか、と思う。


「いいから、木の上で見物してようよ」

「はぁ…」


 俺は瑠禍に続き、木の上に飛び乗って山羊と男を観察することにした。



 数時間後。


「やめてくれぇぇえっ!」


 男は絶叫をあげていた。

 足元は血にまみれ、足首から先は骨がむき出しになっている。無残な姿を晒す足を、山羊はまだ舐め続けている。


「昔はよく使われていた拷問方法さ」

「…よくそんなの知ってるな…」


 呆れるしかない。俺だったら絶対やらない。まぁ、こいつがやってるのを止めるのは後が面倒なのでやらないが。


「…うーん、そろそろ飽きてきたね」


 瑠禍はそう言うと木から飛び降り、男の両膝から下を切断する。

 絶叫。


 山羊はその身を血で赤く染め、俺たちをあの愛くるしい瞳で見つめる。先ほどは可愛く思えたが、今はそんなものは微塵も感じない。


「満足した?」


 瑠禍が微笑むと、山羊は嬉しそう(?)にメェーと鳴いた。

 そして赤斑点をその身に残したまま、大自然へと帰って行った。


 男の足や仲間たちの死体にはすでにハエや蛆がたかり、ネズミが寄ってきていた。


「じゃ、拷問その二」

「まだやるの?」


 瑠禍は男を仰向けにし、シャツをめくって腹を出させる。足先に痛覚を消す薬を塗布し、再び往復ビンタで意識を覚醒させる。


「ぅっ…」


 男は何とか意識を取り戻す。


「尽、そこにいるネズミを10匹くらい集めて、君の結界の中に入れて」

「生きたままか?」

「当たり前だよ、じゃなきゃ楽しめない」


 …あぁ、なんかもう先が読めた気がする。この可愛いネズミに何をさせようというのか。

 俺は渋々結界で作ったケースにネズミを12匹入れる。


「それをこの男のお腹に乗せて、お腹との接触部分だけ結界に穴を開けて」


 逆らうと矛先が自分に向きそうなので、渋々従う。

 腹の上をネズミが歩く感触に、またもや男は悶える。


「あとは簡単。結界の温度を上げて」


 言われた通り温度を上げていく。あ、これ原理わかったかも。

 ネズミは周囲が温まると穴を掘る性質がある。足元には土代わりの人間の腹。


 …予想通り、ネズミたちは小さな爪で男の腹を掘り始めた。



 数時間後。男の腹は見るも無残なことになっていた。

 腹の肉は綺麗に掘られ、内臓が陳列しているのが見える。


 男は失禁して、痛みと恐怖でショック死していた。


「あーあ、あともう一つ、面白い拷問方法試そうと思ったのに…」


 昔は俺も吐き気を覚え、処刑される者を哀れに思ったが…


「まだやる気だったのかよ…」


 今の俺は処刑される者への哀れみではなく、処刑する者への呆れの念しか抱かない。


 男が死んだあと、ネズミは解放した。

 つぶらな瞳で俺を見てきたが、その爪は血まみれである。


「でも気分いいね、誰かを殺すとスッキリする」


 瑠禍はご満悦の様子だ。

 戦闘力は互角だろうが、残虐さと躊躇のなさは奴の方が上だ。


「君の髪を見てると誰かを殺したくてたまらなくなるんだ」

「俺のせいかよ…」


 瑠禍は血のように赤い俺の髪を見ながら微笑む。


「邪魔な人間もいなくなったし、妖刀屋に行こう」


 瑠禍は血まみれの姿のまま歩き出す。


「顔とか洗って、服も着替えとけ…そんなんじゃどこの妖刀屋も仕事受けてくれないぞ」

「…それもそうだね」


 瑠禍は少し不満げに頷くと、近くを流れていた川の方へ向かって行った。


 山賊たちの死体は処理しておく。後々匂いを嗅ぎつけて面倒なのが出てきたら困るしな。


―4話に続く―

ヤギ舐め拷問は中世ヨーロッパのドイツで使用されていたそうです。

拷問てなんかやってみたかったんで(((ゲフンゲフン

すみません←by帝王星

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