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プロローグ

 無法都市ナインテイル――――


 地下に眠るという九つの魔剣。そして、それらが織り成す複雑な迷宮群。

 しかし、未だ魔剣に到達した者はおらず、財宝を求めて今日も迷宮に挑む冒険者たち。

 いつしか、ここに迷宮探索のための都市ができる。

 しかし、その都市に国はなく法もない。

 あるのは九つの迷宮を取り仕切る、九つの組織。

 この街で生きるのは冒険者だけではなく娼婦、ヤク中、傭兵、殺し屋――そして、蛮族やその信仰すらも許容する混沌の吹き溜まりとなっていた。


 そんなナインテイルの中でも、危険な地区の一画。

 周辺の家屋はどこも薄汚れており、廃屋よりややマシ。雨風をなんとかしのげる程度でしかない。道にもゴミなどが雑然に落ちており、風が吹けば塵などと共に悪臭を運んでくる。


 夕暮れが過ぎても、娼婦や男娼が客引きをする大通りには灯りはある。しかし、ここはその大通りから少し外れたところにあり、日が暮れれば灯りはなく、人気(ひとけ)もほとんどなくなる。

 こんな所にいるのは、掃き溜めにお似合いな浮浪者が寝転がるだけであった。

 そして、この時間にこんな脇道を通るのは腕に自信があるか、馬鹿な奴しかいないというのがこの街での常識とされていた。

 


 


「んーーーーーっ」


 口を押さえられ、くぐもった悲鳴をあげる主はけっして豪華な身なりではない。

 だが、周りにいる薄汚れた浮浪者たちから比べると、普通の服でもまるで貴族のドレスのように見えてくるから不思議だ。


「へっへっへ、こんな所を一人出歩くだなんて馬鹿なお穣さんだぜ」

「んーっ、んーっ」

「金は……ちっ、大して持ってないか。でもまあ」


 取り押さえた少女の身体を浮浪者は舐めまわすように見ると、下卑た笑みを浮かべた。

 


 


 近道をしようとこの脇道に入ったメルトローズは、つい(・・)癖で耳をすまし、暗がりを見通してしまったがゆえに。

 一人の少女が襲われている光景を見てしまった――――

 


 


メルトローズ(以下、メルト) (肩をすくめて)……やーれやれ、随分とお盛んなことで(苦笑)。

GM/浮浪者三人 「(ニタニタと笑いながら)かなりの上玉だぜ。ちょいとガキくせえが」

  /少女 「(口を押さえられて)んーっ! んーっ!」

  /浮浪者三人 「……あ? 誰だ!?」と、少し離れた所にいるメルトを見る。

メルト (余裕そうに)おっと、ばれた。

GM/浮浪者三人 「チッ、なに見てんだよ!? こちとら、今忙しいんだよ!」「とっとと失せろ! アホ!」

メルト ……ま、こういうのもこの街じゃ日常茶飯事だからなぁ……。

GM そんなメルトに対して、少女は涙をためた目で助けを求めている。

 


 


 その少女は十代半ばで小柄――発育途中の細いがしなやかな肢体が、乱暴に引き裂かれそうになった服から見え隠れしていた。

 顔立ちはまだ美しさよりも愛らしさの方が目立っているが、後数年もすれば周りの男たちが放っておかないぐらい美人であった。

 そんな中でも目を引く少女の容姿は、透き通った空のような青い瞳である。

 穢れのないスカイブルーの瞳。メルトローズも一瞬、吸い込まれそうになるのを感じるほど、この街の人間には眩しく、そして羨ましいものであった。


 一方、メルトローズはメガネをかけた長身の男だ。ただ、ひょろっとした細い体つきのため屈強なイメージはない。

 顔立ちは美麗と言っていいほどに整っている。

 しかし、赤い瞳の奥にはどこか虚無めいた気だるさが宿っており、存在感というものを希薄にさせていた。

 少女とは違う、言わばこのナインテイルに相応しいもの(・・)が宿った目。それが、メルトローズにはあった。

 


 


GM/浮浪者三人 「それともなにか? オレたちの仲間になりてぇのか?」

メルト (少女の瞳に少し見入って)――――いや、気が変わった。

GM/浮浪者三人 「へ……?」

 


 


 一閃――――

 

 闇夜に煌めく光が見えたかと思うと、メルトローズの腰にあった刀が鞘から抜かれていた。

 そして、まばたきほどの間を空けて、三人の浮浪者たちの首の皮一枚が裂け、血が滴り落ちる。

 


 


メルト (冷酷な表情で)……次は、本当に薙ぐ。ここで死にたくなければ、お前たちの方が消えろ――――

GM/浮浪者三人 「ひ、ひぃ!」と情けない悲鳴をあげて三人が走り去る。

メルト (少女の方に向き直り)で、あんたは大丈夫か?

GM/少女 「……あ……は、はい。だ、だいじょう……ぐす(涙声)」

メルト (苦笑して)まあ、大丈夫でもないか。とりあえず、ゆっくりと落ち着ける所に行こうか?(と、少女に手を差し伸べる)

GM/少女 「は、い……」とコクリと頷いて、メルトの手を取って立ち上がる。

 その時に、暗がりに浮かぶような白い肌をなんとか隠そうとするが、一部が裂けてしまった服ではうまくいかない感じ。

メルト 「この先にある冒険者の宿“朝露(あさつゆ)薔薇(ばら)亭”なら、服ぐらい借りられるから大丈夫だよ」と優しく言いながら、ガン見する(笑)。

一同 えー!!?(爆笑)

GM かっこいいキャラが台無しだよ!?(笑) えー、そんなメルトのガン見に気づかない少女は自己紹介をする(笑)。

  /ユリフィーユ・サヴェイ(以下、ユリ) 「わたし……ユリフィーユ・サヴェイと言います。助けていただいて、本当にありがとうございました」

メルト (微笑んで)ふーん、ユリちゃんね。

 ……おっと、俺の自己紹介がまだだったな。俺はメルト……メルトでいい。

GM/ユリ 「(かみしめるように)メルト……さん」

 


 

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