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魔法使いの話 魔法の3つのタブーの話

だまされる気持ちは毛頭ない。こんなこと本気にするなんてありえない。

私もはっきり伝えたつもりだ。私の現実は変わらない。

貴重な脳の休息時間にこんなこと考えたくない。


「それなのにこんな風に俺のことを夢に見て。

やっぱり俺が恋しい??そりゃーそうだよなぁ。

俺は君のことをどんなふうになっても最後まで面倒見たるって。」


もう、本当にやめてくれ。私は夢の中で大声を出した。


丸坊主は構わず話を続けてくる。


「今日も基本の基本を話そうね。魔法使いがやってはいけないことの話。」


それはあんたのように、人の夢に出てきて思考をかき回すことだ。

もう本当にただなにも考えずに眠りたいのだ。


「そういうなって。結構これもおもろい話よ。

魔法使い、って何ができる人のことやと思う?

ゲームみたいに火とか水とかバシバシ出したりする人やと思う?

それとも病気とか光で治したりする人?どう思う?」


他人の眠りを邪魔しない人。私の現実に干渉しない人。

ファンタジーの世界にきちんと閉じこもって

私に迷惑をかけない様にできる常識的な人。


「冷たいなぁ。無視して話つづけさせてもらうからな。

魔法使いのやったらあかんこと。3つあります。テスト出しますよ。

ひとつは時間コントロール、ふたつは錬金術、3つは命を操る事」


本当に意味がわからない。

この丸坊主は今日もうるさく語って私を逃がしそうもない。

夢なのに自分の意思で終わらせられないのが、私自身の弱いところだ。

仕方がない。誘いに乗って一緒に考えてみることにした。


魔法使いの3つのタブー。時間コントロール、錬金術、命を操る。


でもこれがタブーだというのなら、魔法使いになるなんてやはりつまらないものだ。

この3つができないと意味がない、というかお話にならない気すらする。

人間がやりたいことはこの3つに集約されている気がしたからだ。


時間コントロールってのは時間を止めたり戻したり、何かしらするんだろう。

それがもしできるとしたら、片っぱしから恥ずかしい思い出を消して回る。


錬金術というのは、たぶんその名の通り、金目のものを練成することかもしれない。

もしもそうなら、すぐに家の近くの河原の石を

激レアメタルに変えて売りつけて今の生活から逃れたい。

南の地方都市の単身用マンションかどこかでぼんやり暮らしたい。


命を操るなんてことができたら、とりあえず若さをキープする。


やはり魔法なんて……。



「ろくなもんじゃない、何にもできないんやないの、って思った?」


丸坊主はにこりと笑って言った。


「でも考えてみ?今の3つのタブーに通じることってな、

魔法使いの力を使うまでもないことばっかりやんか。

魔法なんか使わなくても人間が皆必ず最低限のオプション装置として

持って出てきてるものばかりでしょう?」


それは屁理屈だ。そう言おうと思った私の口の前に、

丸坊主は人差し指を立てて私の発言を遮る。


「だってな、一日は24時間。生きてりゃ際限なくもらえるで。

錬金術だって、君の思うようになってないかもしれない。

しかし社会の中には錬金術という名前の創造性を駆使して、

金以上のものを作り出している人も多いやろ。

命だってあれやで?この世に生を受けたとき、

裸一貫で必ず持って出てくるやないか。まぁそれには……。」


丸坊主は少し言いよどんだ。


「それには著しく個体差はあるで?確かにある。でもな

みんなが必ず持って出てくるものちゃうんか。

みんな持ってるんだから、魔法っちゅー特別なチカラ、使う必要ない。」


それは違う。私は異議を唱えた。時間も錬金術も命の魔法だって。

個体差なくして楽をしたいからだ。あればあるだけ欲しい。


「ホンマにアホやな。いいか?時間も錬金も命すらも

みんな自前で持ってでているんやで。

最初っからもっているもんなんやから自分で気をつけてコツつかんだら、

別に不思議なことが起きなくたってどうにかなることなんやないのって話よ。

時間を戻したい、不老不死になりたい、レアメタル作りたい。くだらんわ。」


丸坊主は大笑いした。


「そんなこと人間が必死で創造力を育んで技術を磨いて、

昔から繰り返し実験して近付いていっているでしょう?

で、もしそうなったらどうなるだろう、ってのも、

あらゆる媒体で自由に表現されていて、

個人的なイメージもあるでしょ?魔法でもなんでもない。

魔法ってのは、もっと、不思議なものをいうねん。」


しかし、不思議なものって何のことをいうのだろう。



「そこよ。そこなのよ。その分野が魔法の領域。

人間がアタマで想像できることなんてタカが知れとるわ。

想像もつかないことをするのが魔法。

魔法ってのを勘違いしないように3つのタブーがあるんやないの。

キミが想像していること、願っていることは

今生でも叶う可能性があることばかりや。

魔法というのはそれ以上のものが起こることをいう。」


私は全く想像もつかずぽかんとしたままになっていた。

丸坊主は笑顔で私を見ていた。


「まぁ、そういうことだから。

その奇跡の領域ってやつをこれからどんどんみていけるようになるよ。

俺の弟子なんやから一生懸命勉強せな、な。

君はまだレベル最低だから、深入りせえへんけどね。」


その日はこれで終了だった。



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