妹を愛人にしたいと言われたので、弟を愛人にもらう。
「実は、俺は君の妹と愛し合っているんだ。君との婚約を解消するのは可哀想だから、妹を愛人にさせて欲しい……!」
婚約者の王太子がいらん優しさを発揮してきた。
「わかりました。では私は殿下の弟を愛人にさせていただきます」
「ありがとう! さすが聡明な公爵令嬢だ! で、どの弟がいいんだ?」
「全員ですわ、殿下」
「三人も! 俺は妹一人なのに、割に合わないだろう!」
「そんな事はありません。殿下はたった一人の愛する妹を手に入れて、私は特にいらない弟を三人も引き受けるんですから、殿下の方がお得です!」
「確かに!」
こうして私は要らない王子を三人も愛人にした。
◆◇◆
とある夜会に、王太子セドリックは愛人の妹マリアベルを伴って参加した。
正式な婚約者の私、オフィーリアも同じ夜会にいるというのに。
「セドリック様、踊りましょう」
マリアベルは私に気付くと、これ見よがしにセドリックに甘えて腕に絡みついている。
「ああ、マリアベル」
セドリックは嬉しそう。
「結婚前にすでに愛人を連れて夜会に参加しているなど、周りからどう見られるか……自覚がないなんて困ったものだわ」
「でも、オフィーリア、君だって愛人を三人も連れているだろう?」
私の愛人一号の第一王子、エドワードが言う。
「愛人三人なんて、セドリックより大分印象が悪いですよ」
愛人二号の第二王子、ルーファスだ。
「自覚ないのかい? オフィーリア」
愛人三号の第三王子、ヴィンセントだ。
私の愛人三兄弟は呆れたように私を見てる。
「あのね、三人男を連れているからって愛人三人だなんて誰が思うのよ。私と王太子は今日はそれぞれの兄弟との交流を深めているのよ」
「「「なるほど!」」」
こいつらは、お兄さんとそっくりだわ。
「王太子のセドリック様と婚約者のオフィーリア様は、ご兄弟それぞれと仲が良いのね」
「王家のご兄弟が力を合わせ頑張ってくださっているんです。我が国は安泰ですわね」
私の狙い通りに思われているようだった。
「え? 俺、オフィーリアの愛人なのに!」
思われたところで、真実になるわけでも有能になるわけでもないけど。
後日、私は三兄弟を王宮の一室に呼び出した。
「愛人のことをちゃんと知りたいから、あなたたちのことを教えて」
私は長テーブルの窓側に座って、紙と羽ペンを持って聞く。
「俺は、エドワー……」
「名前はいいわ、知ってるから」
「誕生日も知っていますか?」
「……知らないけど、別に知らなくていい」
「じゃあ、何が知りたいんだい?」
「あなたたちが、王家のために何が出来るかよ」
「「「王家のため? 俺たちは君の愛人だ!」」」
「ただの愛人ではありません、王太子妃の愛人なんですから、無能では困ります。功績をあげてください」
三馬鹿は何か考えている。
「……俺は牧場にいる時が一番落ち着くんだ……藁の匂いが好きなんだ」
愛人一号のエドワードが話し出す。
そんな事を聞いているんじゃないけど……。
「好きなものがあることはいいことですね」
私はエドワードに笑いかけた。
「あ、ありがとう!」
「牧場なら、農産物の生産や管理、効率化出来ることはあるでしょう。エドワードにはこれらをお任せします」
「分かった!」
二号のルーファスに目を向ける。
「俺は、木の香りが好きで、森の中が落ち着きます」
「森ですね。木の管理は重要な仕事です。大変ですが、引き受けてくれると助かります」
「はい! 頑張ります!」
そして、三号のヴィンセントだ。
「俺はレンガの焼ける匂いが好きだ……」
「レンガ……建築ですね! 我が王国には古くて修繕の必要な建物も多いですから、仕事は多いですよ!」
「もちろん、任せて」
こうして三人の王子に国の仕事を任せた。
好きな事をやっている三人は生き生きしていた。
一号が品種改良した農作物は他国にも人気で輸出が増えている。
二号は森を管理してくれるようになって災害が減っている。
三号のおかげで建物と道路の不備が減り、生活の質が向上している。
国が発展していき、王子たちは国民から尊敬を集めている。
「オフィーリアのおかげだよ」
「俺たちは好きな事をさせて貰ってるだけです」
「ありがとう」
三人の愛人たちが満足そうで私も満足よ。
◆◇◆
国が発展していく間に、私は王太子のセドリックと結婚して、正式な王太子妃になっていた。
セドリックも妹のマリアベルが好きだと言うので、適材適所で離宮に送って仲良くやってもらってる。
王と王妃は王位を私に譲って引退したいと言うけど、あまりに仕事が増えすぎても困ると待ってもらってる。
三人くらい子供が生まれたら、王位を継いでもいいかもしれない。
「最初は俺の子供を産むだろう?」
「俺ですよね?」
「俺でしょう」
たった一人の愛に比べて損だった三人の愛人は、重すぎる三人の愛に育ってしまった。




