新人
接客をするべく席に座り、心の底から作り笑顔が溢れ出る。指は緊張で震え、だが学んだことはしっかりと順序を持って頭の中にある。次第に集中は過度な視野の狭まりを生んで、視界の端はぼやけていった。私は大丈夫ではないことが感じられる気持ちの中で、大丈夫と声をかける発想すら無くなっていた。
私は椅子の反対に座るスーツの若者を見つめ、彼の一生懸命で頑張る様子に、どこか満足感と余裕を持ったはずだ。そして本人が隠しきれていると思い込んでいる緊張を感じ取り、優しくしてやろうという上から目線ないやらしい気持ちさえ湧いてきた。
私は確かに、あなたのその助け舟に寄りかかりたい気持ちでいっぱいだ。"今の間はそれに甘えても良いだろう"それは私の心に少しばかりの余裕を生んだ。ただしこの余裕に対して、自分の心は多大な違和感を覚える。違和感、というのはおそらく甘えようという部分から感じられたものだ。心に大きな変化が訪れる。"舐めるな、舐められるな。私はそれに甘えるほど弱い者ではない"
私はあなたの空気が変わったことに気づいた。最もそれがなんなのかは私にはわからなかった。ただ少なくとも話の中身以上に相手の雰囲気に気圧されそうなほどの立場の逆転に驚き、飲み込まれる。それは飲み込まれても本来問題ないはずのものなのに、何だか少し嫌な気持ちになる。嫌な気持ちと言ったが、嫌悪感が相手への認識を歪めるというようなレベルではない。むしろ歪んでいるのは私であるが、その時それに気づいているわけがなく、私は全く駄作の人間であった。
全ては私のペースになった。ただ、相手の印象は先ほどまでの愛着と打って変わって、少し厳しく、また圧倒されているのが感じられた。それは私が言う側であるのだから多少はそうあるべきだろうと過信できるものだった。ただ、今思い返すとそれは私の行き過ぎた事で、若気の至りであった。
この反省は人を成長させた。私がメモを取るようになったように、あなたがスケジュール管理に必死になったように、誰かが後輩への接し方に知見を得たように。
そして不足と不満はその時解消されなかった。ではこれにできることは一つ。次の相手に、次の機会に、あるのならばそれに、より良い結果をもたらす事である。
なろうには初めて投稿させていただくエッセイです。あまり面白い内容ではないと思います。これからこういった作品を上げるかどうかは分かりませんが、誰かに楽しんでいただければ幸甚の至りです。




