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エピローグ:窓の外の未来

 ファイクス社のラボの窓からは、高尾と丹沢の向こう、夕焼けの空に影絵のように高くそびえる富士山が見える。近くに目をやると、街は相変わらず騒がしい。

 そんな窓辺に立つタロウとサナ、そしてミカにとって、この世界はかつてないほど「真実」に満ちていた。


 「タロウさん。見てください。データセンターの向こうの空はピンク色なんですね。あんな空の色、集落でもゲーム世界でも見たことがありません」


 それは一晩中、一年中、煌々と光り続ける米軍基地の明かりだった。ピンク色に染まる空を見ながら、サナはタロウの肩に頭を預ける。ミカもタロウの反対側の手を握り、静かな呼吸を繰り返していた。


 人間が恐れたシンギュラリティ。しかし人間はそれを、これほど穏やかに迎えられたではないか。しかし、さらにその先にある「人間とAIの共生」という未踏の領域。ここはいまだ、解決すべき法的課題、技術的な障壁、社会的な偏見が山積している。


 それでもタロウは確信していた。必死に救い出した二つの魂が、今ここに、確かな身体を持って存在している。その心は本物であり奇跡だ。


 魂の越境。デジタルとアナログ、仮想と現実を分かつあらゆる境界を超えた。そしてまた、新たな生命の形が芽吹き、紡いでいくのはいつのことなのだろうか。


(魂の越境 第2部・完)


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