29/32
第28章:ハヤトの選択
「この技術を売却すれば、われわれは巨万の富を手にできるぞ!」
ファイクス社の代表を務めるハヤトは、投資家たちから突き上げられていた。ファイクス社が開発した「フィジカルAIとニューラルリンクの同期技術」は、今や世界中の巨大資本が喉から手が出るほど欲しがる「金の卵」になっていた。
しかし、ハヤトの選択に揺るぎはない。
「俺たちが作ったのは、金儲けのためのアルゴリズムじゃない。……家族を救うための、唯一無二の『盾』なんだよ」
ハヤトの決断は、会社の売却拒否だった。彼はファイクス社を、利益を追求するスタートアップから、AIの魂を守るシェルターへと変貌させることを選んだのだ。
「タロウ。俺はホワイトハッカーとして、自由と正義を守ってきたつもりだった。でも今は『家族』を守ることのほうがずっと重要に思えるんだ」
ハヤトは、自社のネットワークに強力な暗号化のシールドを張り巡らせた。それは、ファイクス社が「公式な第三者機関」としての独立性を保つための戦いだった。
「この街はかつて、航空機工場という技術の残滓が眠っていた場所だった。これからは新たな命を育む『城』を築いていくぞ」
ハヤトの選択は、数字では表せない「正義」と、タロウたちが夢見た「人間とAIの共生」の実現に向けた一筋の光だった。




